アルパインクライミング・沢登り・フリークライミング・地域研究などジャンルを問わず活動する山岳会

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【雑談】五郎山合宿だ!

もともとは関西系クライミング女子アンジーと3日間どこか行こうという話。
それがいろいろとこんがらがって・・・
1日目はアンジーとかる~く楽しいクライミングをしたけど、2日目はなんと登山界の大御所ガメラ氏が合流することに。
若いころに何度か顔はあわせて、挨拶くらいはしたことがあるものの、登りや飲みをご一緒するチャンスもないままに、約40年ぶり?の再会。この山巡ブログを見て「こういうクライミングを一緒にしたい」と言ってくれていたのでお誘いしていた次第。
そしてガメラ氏の友人、中尾さんも参加。会ったとたん、ほとんど通学しないままなぜか卒業した大学名を言われ、「え?なんで知ってるの?」。私がたまに顔を出していた山岳部の先輩とヒマラヤに同行したとのことで、「後輩にやばいやつがいるんだよ」と聞いていたらしい。やばいか自分?
中尾さんもヒマラヤでの初登攀やら、瑞牆あたりでの開拓だの相当なクライマーですな。
そしてガメラ氏にもだいぶお世話になっているらしい、弟分の礼くん。
さらに赤沼の別荘のある北杜市に、クライミング移住してきたエリサさんも参加。

2日目はこの大所帯、6名でどこか登って、北杜市のわが家で宴会しようということになった。
先日エリサさんと開拓に行って、あまりの疲労とシャリバテで(たぶん)、登攀中記憶喪失に陥ってしまって敗退した天狗山のフェースを、強い人達に登ってもらおうか?というアイデアもあったんだけど・・・
6人でがやがややるなら、今まで7本ほどのルートを作った五郎山岩峰のお披露目でもさせてもらおうと思いなおした。

五郎山についてはこちらをご参照ください。

五郎山の岩場までは2時間弱の急登。
五郎山の岩場登場

さてパーティー分けの方法は赤沼が提案。

ガメラ氏と中尾氏がじゃんけん。
五郎山経験者の赤沼と礼くんがじゃんけん。
つよつよ女子クライマー二人がじゃんけん。
勝ったチームと負けたチーム。3人x2パーティーで登ろうということで。

結果、
ガメラ氏、アンジー、赤沼のカメさんチーム
中尾さん、エリサさん、礼くんのウサギさんチーム
に分かれることになった。

カメさんチームはマキヨセP2ルート。
ウサギさんチームはどまんなかルート。

この二つのルートはお互い向かいあった壁なので、お互いの写真が撮りあえるのだ。

カメさんチームはマキヨセP2ルート。3ピッチのルート。
ガメラさんのリードでスタート。いや、ここが一番難度の高いピッチなので、さりげなく押し付けた。

2P目、3P目は素敵なフェース登り。アンジーのリード。

対岸のどまんなかルートを登るウサギさんチーム。
あれ?どまんなかルートはスカイラインのリッジを登ったんだけど、少し下の岩の多いラインを登ってるな。派生ルートできちゃった。

どまんなかルート派生パートを登る中尾さん。

登り終わったカメさんチーム
どまんなかルートを登り終わって、五郎山山頂のウサギさんチーム
ウサギさんチームは登り足りなかったのか、さらにカメさんチームの登ったP2マキヨセルートの2P目以降を登りに行った。写真は2P目をリード中のエリサさん。
カメさんチームは五郎山山頂まで登山道を歩き、この写真を撮影。P2マキヨセの終了点ピークに立つエリサさん。

マキヨセP2終了点のウサギさんチーム

早めに終わって下山。これから宴会だ~
宴会開始。左3人が60台前半グループ。右3人がまだまだ若者?グループ。

同時代を生きたクライマー同士の話は何十年前に遡り、亡くなった友人たち、まだ生きてる友人たち、谷川岳通いの話、今の瑞牆山の話・・・・盛りだくさんの話題が飛び交いましたね。さすがに。

ところでちょっと怖いというか、ショッキングな話。

記憶が相当やばい。
思い出せない、忘れてるのは日常茶飯事なんだけど。
記憶が間違ってる?
最近というか、ここ数年多いんだけど。

たとえば、
「あの有名クライマー夫婦、いつも噂ばっかりで一度お会いしてみたいな~」
「なに言ってるの?若いころ一緒に登ったし、何度も飲んだじゃない。」

たとえば、
「あの人と登ったのはさすがによく覚えてるよ。あれは19xx年だった。いいクライミングだったわ~」
「は?その人その1年ほど前に亡くなったよね?」

たとえば、
「まあ自分のクライミンググレードは5.11が限界でしょう。それ以上登ったことないし。」
「5.12のルート、初見リードで開拓したの知ってるけど?」

こんな調子。

これって還暦すぎたら普通?

今回みたいに昔話するとそういうのを切に感じるわけ。
記憶が混濁してる。
で、いろいろと記憶を反芻したりしていたら、大きな事故やら高度障害やらで、記憶喪失になった経験があったわ。いや、そのこと自体を忘れてて、この間エリサさんと登攀中に記憶が飛んだとき、「こういうの初めてなんだよね」とか言ってるし。

老いとともに、いかに自分の能力を客観評価して、山登り自体をグレードダウンして、クライミング人生を全うするか。これが最近ずっとテーマなんだけど、自分の(クライミング)能力ってなに?

体力・・・今のところゆっくり登ればまだ大丈夫っぽい。
技術・・・クライミングはもはや大してうまくはならないけど、そうそう下手にもならないらしい。ゆっくり、無理せず登れば大丈夫かなぁ・・・
判断力・・・経験値はどんどん大きくなっていくわけで、判断力もそれにともなってよい方向に・・・・というところで、ちょっと待てよ!となった。
経験値って、今まで記憶してきたことの集積から導き出されるものでないの?
だとしたら記憶がやばいと、経験値も飛ぶ?
記憶がとんだら、判断できない?

ここまで考えてきて、登攀中に記憶をとばした私がパートナーのエリサさんに言った言葉を思い出した。

「今、岩場にいてクライミングしてることはわかる。やり方もわかる。でも今どうしたらいいか判断できない。このまま登ればいいのか・・・・」

これでエリサさん、びびって「早く下りなさい!」と言ってくれて、事なきをえたんだけどね。

つまり、記憶混濁⇀経験値混濁⇀判断できない・・・ってことじゃん。

これ山では一番まずいかも。

老害としか言いようのないような遭難もよく起きてるみたいですが、案外こんなあたりから判断ミスって起きてたりするのかなぁ。

経験値を失った、老いぼれ登山家はただの老害。

とりあえずそう自省しておこう。

天狗山南面岩壁の偵察報告

天狗山南面はいくつものスラブ壁、リッジなどが交錯して複雑な地形を形成している。この中でクライミングガイドが開拓、整備した「天狗山ダイレクト」のみが頻繁に登られている。それ以外はネット情報を検索した限りでは情報が皆無なので、クライミング可能性を求めて偵察行をおこなった。

岩場構成について

天狗山南面を構成する岩壁群は複雑に入り組んでおり、それぞれの境界も明確ではないが、おおむね以下の岩壁群となる。(岩壁名は便宜上の仮称)

  • 天狗山ダイレクト
    天狗山山頂下の「上部岩壁群」から東南方向に伸びる岩尾根。人気ルート天狗山ダイレクトはこの尾根に沿って登り、途中いくつかのフェースを越える。
  • 天狗山ダイレクト側壁
    天狗山ダイレクトの南面の側壁群。地形が複雑でどこまでが側壁で、どこからが上部岩壁とは分類しにくい。いくつか支尾根状のリッジもあるようだ。登れそうなラインはいくつかあるが、下から見た限りではルートの状態予測が難しい。おそらく1ピッチ程度で天狗山ダイレクトに出るルートが多くなるように思われる。
  • 右壁
    天狗山ダイレクトの上部から右側に展開する岩壁群が、天狗山から東に延びる稜線(登山道)に沿って展開。急峻だが規模が小さい。
  • 上部岩壁
    山頂直下に展開する急峻なスラブ壁。天狗山ダイレクトの最終ピッチあたりでこの壁の右端あたりを登る。天狗山ダイレクトを開拓したクライミングガイドの佐藤勇介氏によると、上部岩壁にはひなばすビューという5ピッチ110mのルートがあるらしい。(天狗山ダイレクトの途中に木の札に書かれた情報があるとのことだが、誰が登ったかなどの詳細は不明とのこと)。垂直のスラブ壁左よりあたりを登っているように見える。
    上部岩壁の左端はリッジとなっており、比較的容易に登れそうに見える。
    下図は佐藤氏からいただいたひなばすビューの案内。天狗山ダイレクトを登っていくと、上部岩壁の部分を登る手前あたりにかかっている様子。
  • 下部岩壁
    上部岩壁の左稜取付きの下方に展開するスラブ壁で、左右の岩稜にはさまれた岩壁。左稜のさらに左にもスラブ壁があり、そのまま左壁とつながっている。左右の岩稜が比較的容易に登れそうに見える。その間のスラブ壁も弱点を選べばフリーで登れるかもしれない。
  • 左壁
    下部岩壁の左方に展開する岩壁で、2~3本の岩稜と急傾斜なスラブ壁からなる。案外と規模が大きく、登攀対象としても面白そうに見える。右方はそのまま下部岩壁へと連なる。終了点は天狗山から男山に向かう稜線の登山道のすぐ下あたりとなる。
  • 村境尾根側壁
    天狗山から左壁の終了点あたりを越え、男山に向かう稜線登山道の南側側壁にあたる岩壁が横に長く展開する。急峻だが高度差は大きくない。

各岩場の写真

偵察時のトラックレコード。

たった一回の偵察で岩場概念もよくわからない状態でやみくもに撮影してきたもの。GPSのトラックレコードの時間と、写真の時間情報を照合しながらどの岩場かを推定しているので、間違いもあるかと思う。雰囲気が伝わればよしということで。

馬越峠から天狗山への稜線を歩き、天狗山ダイレクト取付きへの下降路付近から見た天狗山ダイレクトの尾根。まずはここから天狗山ダイレクト取付きを目指す。正規の踏み跡より右寄りに岩壁を眺めながらのアプローチ。ちゃんと見ていないがクライミング対象となりそうな岩場は見られなかった。
天狗山ダイレクトの取付き。ここを左にまわりこんで偵察行は進む。この1ピッチ目は左にまわりこんで巻かれる場合もあるそう。
天狗山ダイレクトをまわりこむとすぐに側壁が眼前に。
ダイレクト側壁に沿って少しあがったあたりから撮影。左方に見えるリッジを撮ったもののようだ。下部岩壁のリッジ?
下部岩壁か?
天狗山ダイレクト側壁
天狗山ダイレクト側壁~上部岩壁の一部?
天狗山ダイレクト側壁したから上部岩壁方向を見上げる
天狗山ダイレクト側壁。この壁が上部岩壁につながるようにも見える。
沢のちょうど奥壁になるので、天狗山ダイレクト側壁か、上部岩壁の一部かいまいち判然としない。奥壁は青白いかぶり気味のフェースだが岩質は悪くない。
このあたりのフェースの弱点かと思い撮影。これを登ったら天狗山ダイレクトに出るのか、上部岩壁につながるのか・・・
上部岩壁の左稜
上部岩壁を見上げる
上部岩壁左稜?
下部岩壁終了点付近から左壁方向を見下ろす
上部岩壁左稜取付き付近
左壁上から男山方向
登山道(天狗山から男山に向かい、村境を越えるあたり)から見た、左壁のスカイライン(左稜?)
左壁のスカイライン。手前に村境尾根側壁が見える。
村境尾根側壁
村境尾根側壁
左壁左稜取付き付近
左壁左稜下部
左壁
左壁の全貌を撮影した動画(下部岩壁と言っているのはたぶん間違いで、左壁)
下部岩壁基部

各岩壁へのアプローチ

ピンクのラインは偵察で歩くことのできたところで、断続的に踏み跡がある。獣道も多いが、人跡も感じられる。おそらく何かの採取で入山した人のものではないか。

天狗山ダイレクト側壁~上部岩壁へのアクセスは、天狗山ダイレクト取付きを経由してあがっていくのが早い。

下部岩壁にアクセスするのは、天狗山の登山道を男山方面に進み、左壁上あたりから東南に入山(踏み跡が断続的にある)。上部岩壁取付きと下部岩壁終了点付近の斜面をまわりこんでいくとすぐに下部岩壁基部に到達できる。

左壁は村境尾根の岩場が終わったあたりから、側壁にそってやぶをこいでいけば早い。

最後にちょっとだけ吠えてみる

2020年の11月に、川上村の奥地にひっそりとたたずむ独立峰、五郎山の岩場に楽しい仲間と一本のルートを拓いてから、2年半ほどで派生ルートも含めると7本のラインが登られた。これで五郎山は一段落。
どれも「(自分にとって)難しすぎず、楽しく登れる」というコンセプトで登った。
未知のエリアでのルート開拓というと、どうしてもアルパインクライミング上級者の遊びと思われてしまうような節があるが、そうじゃなくて、それぞれのレベルに合わせて登れるクライミングのスタイルの一つに過ぎないのだと言いたい。

最低限、身を守る技術を身に着けたら、どこでも行ってみればいいんだと思う。行って、見て、自分のレベルで登れそうなところを登ってみて、だめなら下りてくればいい。最近とみに進化したGPS機器やアプリを持参すれば、自由度、安全度はかなりあがる。だめで敗退するときのためのボルトキットやハーケンだけは常に携帯。そうすれば自由で大らかで、うまくすれば静かで最高のクライミングができるかもしれないのだ。

こんな楽しみ方は、上級クライマーよりも筆者(山岳巡礼倶楽部、赤沼です)のような還暦すぎた元クライマーが、仲間と宴会やるための楽しい口実として登るようなスタイルにこそふさわしいようにも思う。

さて。
なんか楽しくなってきちゃったな~
五郎山の次はどこで遊ばせてもらおうか・・・・となったとき、すぐ思い浮かんだのが天狗山。
五郎山のアプローチでも毎度よく見えている大きな岩場の広がり。
でもなぜか天狗山ダイレクトしかみんな行かないみたいなんだよなぁ。
それで様子を眺めに行ってみた。
登ったら楽しそうなところあるよ、あるよ!
左壁なんてフリーの楽しいルートが何本か引けそうだし、下部岩壁から上部岩壁につなげたらマルチの登山っぽいクライミングもできそうだよ。
すげ~フリーのうまい人だったら上部岩壁とか天狗山ダイレクトの側壁なんかもおすすめ。岩は案外と固いし。

岩場へのアプローチも馬越峠から1時間もあればだいたいOK。

かなり楽しいお遊びフィールドだと思った。

自分だって天狗山ダイレクト以外はまだ登ってもいないのに、偵察結果をこうやって公開するのは同好の仲間がいたら嬉しいから。これ見て勝手に登ってもらっても構わないし、われわれもこれから登れるところは手をつけていくつもり。なんならご一緒もしましょう。

それで登ったら、できれば教えてください。ここの情報も一回ぐるっとまわってみただけのものだから、間違いが多いと思われます。そういうのも教えていただけたら嬉しいです。

五郎山、2本の新ルート

五郎山に2本の新ルートを追加してきた。
2020年の11月に五郎山ダイレクトという、五郎山では最初のクライミングルートを作って以来、2年半ほどで派生ルートも含めると7本のラインができたことになる。
これで「難しすぎず楽しく登れそうなライン」はほぼ登り終え、われわれの五郎山通いもいったん卒業ということとなった。

パートナーは五郎山ダイレクトで初めてロープを結んだ長友さん。
仕事が忙しくお疲れモードで、土曜はお休み。日曜だけで2本を登った。

マキヨセ本峰リッジ

右側スカイラインがマキヨセ本峰リッジ

マキヨセ主峰の南面に落ち込む顕著なリッジで、この写真は登山道を西側から登ってマキヨセの稜線に出たあたりからのもの。登ったのはスカイラインの少し向こう側。

マキヨセに向かう登山道が、マキヨセの南面岩壁にあたったところから岩壁基部を右にトラバース。
100メートル程度(?)で顕著な本峰リッジの取付き。

マキヨセ南面の岩壁基部をトラバースすると、すぐにそれとわかるマキヨセ本峰リッジの下へ。上に見えるピラミッド状のピークが特徴。

リッジを少し回り込んだあたりを取付きとする。

渾身のじゃんけんに勝った赤沼リードで離陸。

正面は迫力ある岩壁だが、右から巻き込んでいくと若干組成の弱い感じはあるものの、3級程度の簡単なクライミングであっさりと特徴的なピラミッド状のピークに到達。それにしても素敵な景色、素敵なシチュエーション、快適で難しくないクライミングに幸せ気分が盛り上がる。癒し系クライミングの極みですな。

ピラミッド状ピークでビレイする赤沼

良いとこどりしてゴメンね。長友さん。

ここからは数メートルの簡単な岩稜で樹林に飛び込んで、すぐにマキヨセ主峰。思ったより簡単なクライミングでした。
1P目40m 3級 2P目20m 2級といったところ。

ルート取付き、5月21日9時15分、終了10時20分。約1時間の軽いクライミングでした。

五郎山南壁トラバース満喫ルート開拓

さて。西側からの見た目で結構大変なクライミングを想定していたものの、あっさり1時間のクライミングで終わってしまったマキヨセ本峰リッジ。もう1本登ってしまおう。
この地域(五郎山、マキヨセ一帯の岩場)で、「必然性があって難しすぎないライン」といえばあと一つ。
五郎山南壁のダイレクトどまんなかルートの間の大きなフェースだ。

五郎山ダイレクトと南壁どまんなかルートの間には、気持ちのよさげなフェースが展開しているが・・・・
下部が陰惨で急傾斜の垂壁帯。苔と水滴と闘いながらかぶり気味フェースでのクライミングをしたいか?

それはもう特殊な好みの人たちにまかせるとして、癒し系クライミング愛好家のわれわれのターゲットからは完全にはずれますな。

ちなみにどまんなかルートの右側にも素敵なフェースがあるように見えますが、上図のお絵描きが下手なのもありまして、このへんはあっさり1Pで登れそうなしょぼい系フェースなんです。まあこのあたりは将来暇なときに遊びにきてもいいんですが、当面のターゲットからは除外。

下部の垂壁帯を避けて、どまんなかルートの途中から左にトラバースして、上部だけを登ろうという作戦で、どまんなかルートからスタート。
長友さんリードで離陸。

どまんなかルート1P目終了点となるハング下テラスまでロープを伸ばす。

2P目は赤沼リードでいよいよ左のフェースに向かってトラバース。カンテの向こう側はどうなっていることやら。

カンテを廻り込んだ先はビレー点からは見えない。カンテを廻るあたりがホールドスタンスに乏しい、露出感のあるポイント。

カンテの先は上に見える終了点のテラスに向かってフェースを左上していく。

終了点となる広く気持ちのよいテラスに長友さんも到着。

ダイレクトルートの終了点でもある気持ちのよいテラスでしばしまったり。

さあこれで五郎山でのクライミングも一段落。山頂でも踏んでおりるか~というところだったが・・・・長友さん、今のピッチがお気に入りのようで、今度はリードで登りたいと。

てなわけで懸垂下降でおりて、また登って、今度は赤沼フォローで再度テラスに到着。

どまんなかルートの派生ながら、とても気持ちのよいトラバースを楽しむことのできるラインなので、トラバース満喫ルートと名付けた。

1P 20m4級(どまんなかルート) 2P 40m 5級(オリジナルのトラバース&テラスにあがるライン)

佐久・五郎山南壁「どまんなかルート」開拓

当時中学生だった石鍋礼くんと知り合ったのは30年以上も前の話。
私はほとんど忘れてしまっているが、礼くんの鮮明な記憶では、その中学生を越沢バットレスだの松木沢のアイスクライミングだの、やばいところばかり連れまわしていたらしい。覚えているのは礼くんの実家の天ぷら屋さんで「息子が世話になってます。」とご馳走になったおいしい天ぷらのことだけ・・・できた親ですな。
礼くんはその後フリークライミング修業をして、海外で高難度フリールートを落とすまでになったが、仕事やら家庭やらでしばらくのブランク。そして3年ほどまえに一念発起?して1年間のオフ(キャリアブレイクというらしい)をとってクライミングしまくり、ついにはヨセミテの大岩壁El Capitanまで登ってきてしまったんだと。やるね。

さて私にとって残された課題の一つ、上高地帝国ホテルの裏手に見えている霞沢岳八右衛門沢上流の岩壁群を登ろうというお誘いに、礼くんは二つ返事でつきあってくれることとなった。礼くんはついこの間、穂高の滝谷でクライミングをしてきたばかりで、気持ちが穂高モードになっていたらしい。

準備万端、天気も比較的安定していることを見極めて出発。ところがバスに乗って上高地帝国ホテル前停留所をおりてすぐに、まさかの雨が降り出した。
携帯のレーダーアプリで確認するとどうやらピンポイントでここだけが雨の様子。
「降り出すならバス乗るまえにしてくれよ~」とか「なんでここだけ」とか、ぶつくさ言いながらも、スポット的に天気の悪いエリアに長居は無用と転進を決定。
山でのクライミング用の細いロープ(ダブルロープという)しか持っていないので、小川山などでのフリークライミングはしたくない。
そこで私にとっては7回目となる五郎山に新ルートを付け加えに行くこととなった。どれだけ五郎山好きなの?って声がどこからか聞こえてきそうなんだけど無視無視。

閑話休題。

朝9時台にはいつもの林道終点に駐車。
歩きなれた急登のアプローチを行き、11時には五郎山南壁の取付きへ。

五郎山南壁。左のスカイラインあたりが初登攀ルートの「五郎山ダイレクト」。赤線が今回登った「どまんなかルート」

マキヨセ岩峰と五郎山の鞍部(以下、五郎山コル)から五郎山にむかって左におりて行くと、この壁にあっては長めのラインがとれる五郎山ダイレクトの取付き。五郎山コルからそこまでは下部がオーバーハングしたフェースとなっている。
五郎山コルの稜線と五郎山南壁が接するあたりが、五郎山南壁のほぼ中央部分となる。
つまり南壁の中央部分から左のスカイラインの間は、登れば傾斜の強いフェースから始まる難しいルートとなる。
より美しいラインで、適度に易しく登りたい私としては、南壁の左フェースは当面対象外。
五郎山コルと南壁の接点から右にあたる右フェースはスケールは小さめ。しかしどこもそれほど傾斜がきつくはなく、楽しく登れそうなラインがいくつかある。

どまんなかルートの取付き

マキヨセ、五郎山のコルと南壁の接点を2~3メートル右に行ったあたりの緩めのフェースを取付きとする。ホールド多めで快適なフェース。最低限の支点だけとりながら快適にロープを伸ばすと、上部をハングにふさがれたテラス。ここでピッチを切る。1ピッチで抜けられそうな壁だが、60メートルのダブルロープ1本を半分にして30メートルダブル状態にして登っているので、早めにピッチを切った。ここで約20メートル。

頭上のハング下テラスまでが第一ピッチ(20m)
2ピッチ目を登りだす礼くん

2ピッチ目はハング右側のラインを登る。薄被りながらホールドは比較的豊富。小ハングのちょっとした切れ目をついてここを越える。
そのままフェース直上で五郎山ダイレクトの終了点にもなった山頂左下(西)に広がる大きなテラスの右端に出た。

小ハングを越えていく。
3ピッチ目の登りだし。

このテラスからは樹林を山頂まで行けることはわかっているのだが、すぐ横のフェースが岩茸に覆われてはいるものの登れそう。
少しでも長いルートにするか、とここを登ると、山頂に向かって岩のリッジが伸びているので、そのままリッジ上を登る。
若干ブッシュがあったりして鬱陶しいものの、きれいなリッジで気持ちよく高度をあげると山頂の一角にいきなり飛び出した。

3ピッチ目のフェース上から山頂に向かうリッジに移る。
3ピッチ目はじめのフェースをフォローする礼くん。
山頂に伸びるリッジ。
うしろに見えているのがマキヨセP2ルート上部。


さて山頂到着が12時20分くらい。易しいルートとはいえ1時間半弱で終わってしまった。
踏みあとを五郎山コルまで戻ったがまだ時間もあるので、マキヨセピークへの急峻な踏みあとを歩くくらいなら、マキヨセP2ルートの最終ピッチでも登って眺めのよいマキヨセ岩稜(踏みあとは北側斜面にある)を辿って帰ろうということになった。
このマキヨセP2最終ピッチの取付きまでは五郎山コルから樹林を通って歩いて行かれるのだ。
初登ルートを登るつもりだったが、その左にもう少し長いラインのとれそうなフェースがあり、そちらにルート変更。

マキヨセP2最終ピッチの左ルート。

初登ルートに比べて少し傾斜の強めのフェースを直上するルートを礼くんが選択。

空に向かってぐいぐい登ると尖ったピークに至る気持ちのよいピッチ。
これでこの日のクライミングはおしまい。
何度来ても気持ちのよいピーク。

さて帰りの車中で、ルートに一応名前つけておかないとと二人で検討。
位置的には五郎山南壁中央フェースとでもなるんだが、面白みもないね。
初登ルートの五郎山ダイレクトより、さらに山頂にまっすぐ抜けるルートだから「五郎山もっとダイレクトルート」とか。
いろいろ話し合った結果、あまり悪ふざけもしすぎず、中央ルートとかいうかわりに「南壁どまんなかルート」で行きましょうとなったわけ。

まああの南壁の正面フェースにルートが一本はあっていいし、これで易しめルートの開拓もほぼ一段落かな~という次第。

登ったのは2021年9月11日


五郎山南壁どまんなかルート
1P目 五郎山コルと南壁接点あたりのフェースをハング手前の顕著なテラスまで20m 4級
2P目 ハング右のフェースを直上。山頂直下の大きなテラスの右端まで。20m 4級
3P目 テラス右端のさらに右の岩茸で真っ黒なフェースを登って、山頂に至るスカイラインリッジを山頂まで。3級(一部4級)
登攀時間1時間半程度

マキヨセP2ルート最終ピッチの左ルート
マキヨセP2の顕著な岩峰の先端のみを登る。
初登ルートはハング状の壁の右に切れる凹角だが、今回はハング左のフェースを直上。20m 4級

佐久・マキヨセP2ルート開拓

五郎山から見るマキヨセP2
この下に垂直の下部岩壁が続く。

2020年11月に佐久・川上村の五郎山の岩壁にルート(五郎山ダイレクト)を拓いた際、顕著に見えていた岩峰、マキヨセのP2(もっとも五郎山寄りの目立つ岩峰)を登ってきた。岩峰は上部の尖った岩壁、中央のフェースと傾斜の強い下部壁からなっている。この写真では上部と中央フェースのみが見えている。

パートナーは五郎山ダイレクトの開拓をご一緒した長友さん。40台前半の脂の乗り切ったクライマーであるのはもとより、美意識、信条のはっきりとした聡明な人柄で、クライミング行を楽しくさせてくれる人。

今回はメパンナことS川さん、ニコちゃんことN口さんも同行して開拓の応援と写真撮影をしてくれた。
メパンナはアイゼンとアックスを使ったスポートクライミング、ドライツーリング(略してドラツー)の日本でも有数のプレイヤーで、今や世界を転戦中らしい。一緒に歩きながらもドラツー向きの岩壁がないかとエロい視線をそこここの岩壁にそそいでいた。股関節故障中で、開拓は参加せず。
ニコちゃんは長年アルパインをやってきた頼もしいクライマー仲間だが、やはり肩の故障でクライミングはできず。今回は仲間内で名シェフとして名高い料理の腕前をふるってもらいいい宴会ができた。

二人とも4回目の五郎山。マキヨセP2基部でロープを結ぶ。

このラインは五郎山ダイレクトを登ったあと、長友さんが偵察に来て、トップロープで一部試登をしている。写真にも写っている上部岩壁と中央フェースは登れそうだが、下部岩壁が傾斜が強く、岩も脆そうで恐ろしいとのこと。
歩いて取付きに行くと、たしかに中央フェース真下の岩壁は一部ハングしており、登るのは苦労しそうだ。
岩壁左端の張り出しを巻いて数メートル左に移動すると、軽い凹角状のフェースとなっており、傾斜も若干緩いし、小さなクラックがいくつか走っているので、カムは使えなくても最悪ハーケンを打てばなんとかいけそうだ。垂壁の直上に未練がありそうな長友さんに「弱点ついていこうよ!」と、ここを登ることとする。「逃げの山巡」の伝統は守らねば。

1P目は長友さんのリードで離陸。

メパンナ撮影、動画その1「離陸シーン」

メパンナ撮影動画2「支点なしで離陸」


メパンナ撮影動画3 「命を守るハーケンを打つ!」

こんな感じでスタート!
数メートル、支点がとれないままに登っていき、少し不安になりはじめたあたりで長友さん、ハーケンの設置を決断。ハーケンをあまりにも叩き込みすぎて、結局回収不可能に。(もちろんこれで正解)
ちなみにこれ以降はすべてナチュラルプロテクションで登り、残置物はこれだけとなった。

1P目終了点から。赤沼フォロー中。

1Pを終了したところで中央フェース下のバンドに出た。
この上はまた傾斜が強そうなので、長友さんの想定していたフェース下までバンドをトラバース。

バンドをトラバース中。

このバンドは岩峰横の樹林帯から歩いてくることもできるため、ここまでニコちゃんが来て待っていた。
五郎山側からは顕著に広がる中央フェースは赤沼のリード。フェースいっぱいに岩茸が広がっていて滑るが、傾斜も緩めで節理もほどほどにあって快適に登れる。

2P目。中央フェース。黒いのはすべて岩茸。
2P目、中央フェース登攀中の赤沼。上にいるのがメパンナ。長友さんは下でビレー中。

中央フェースは五郎山側、登山道から張り出した岩壁の上からよく見えるため、ニコちゃんがそこから撮影してくれた。3人写っているのがわかりますかね?上にメパンナが写ってるが、やはり草付きのバンドを歩いて来ていたため。各ピッチごとに仲間が来ていて「まるで山登っていって山頂ついたら駐車場があったみたいな状態だね~」と笑いあいながらの登攀。

2P目、中央フェース登攀中。上の写真とほぼ同じ時刻に下から撮影。
2P目終了。メパンナ撮影。
2P目終了シーンを撮影するメパンナを、五郎山側からニコちゃん撮影。
2P目を長友さんも登ってくる。
長友さん到着。メパンナ撮影。
3P目。簡単な岩稜を上部ピークの基部まで。

ここから3P目はロープもいらない程度の岩稜を最終ピッチとなる上部岩壁の基部に移動。上の写真にも3人写っている。上がリードしている長友さん、下がビレーする赤沼。真ん中は遊び・・・もとい応援!に来ているメパンナ。

3P目終了点で撮影。フォロー中の赤沼。
4P目、上部岩壁。

最終ピッチは最後のとんがりを登りつめる嬉しいピッチ。長友さんのリードで。

最終ピッチをフォローする赤沼。
終了点で自撮り。本当のピークは真後ろの岩の上だが、怖いのでここで撮影。

マキヨセP2ルート、クライミング概要:
1P目
下部岩壁。左寄りのルンゼを直上(5級)25m
2P目
バンドを右にトラバースして中央フェースを直上(4級)25m
3P目
優しい岩稜を上部岩壁基部まで(2級)15m
4P目
上部岩壁(岩峰)を直上(4級)20m
登攀開始5月23日9時30分~終了11時30分)

使用ギアはハーケン1(残置)小~中サイズのカム約2セット
グレードはムーブだけを考えれば甘目かもしれない。
スポートルートではないので、危険度などの主観部分も加味。

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