懸案の第三岩稜B峰に一本のラインを引いてきた。

D峰を登った際にD峰の頭から撮影したB峰。
全3ピッチとなったが、1ピッチ目は写っていない。

第三岩稜についてはほとんど情報がなく、2024年9月に登ったときに概ね4つの岩峰からなることがわかり、上からA, B, C, D峰と仮称した。


2024年9月には一番下のD峰を登っただけで時間切れ。
同年10月にA峰を登った。

A峰(B峰の頭から撮影)は、この特徴的なチムニーを登って頭に出たかったが、向かって右側のルンゼからアプローチした際は下部フェースにルートを見出せず、右側から巻き込むようにしてこの上に立った。

その際残置ボルト一本を確認している。過去に似たようなラインで登った記録があるようだが、われわれが登った際は、残置ボルトのあるルートはとらなかった。一部かぶっているような気もするがはっきりしない。

さてA峰は不本意なラインではあったが、登ってその頭に立った。
D峰も登った。C峰は登攀価値はあまりないと判断。
今回の狙いは最後に残されたB峰。なかなかの大物に見える。

パートナーは中尾政樹さん。
シブリン南壁の初登攀、サトパント北稜の登攀などの実績を持つほか、黒部や瑞牆山などを中心に高難度ルートを多数開拓してきた心強いパートナーだ。赤沼より少しだけ年上のパイセン。
千代の吹上には前から関心を持っていたとのことで、お誘いするとすぐに食いついてきたものの、「アプローチが遠いな~」とか言うし。
なので瑞牆山荘登山口から入山し2時間ほどで到着する大日小屋をベースとして、翌早朝出発するというプランを提案。心の中で、「じいじたちの、のんびりクライミングプラン」と勝手に名付けた。

大日小屋から金峰山方面に2時間弱で砂払の頭。
ここから第三岩稜、第四岩稜の間のルンゼをおりてアプローチする。

第四岩稜のスラブ帯が右に見るあたりから、左手には先日登ったD峰の頭が見えてくる。D峰とC峰のコルに上がろうと思っていたが、露岩が多くて難しそう。
少し上に戻って樹林の斜面をあがっていくとちょうどC峰とB峰のコルに出た。

B峰とC峰の間を懸垂でおりながら、B峰のルートを探る。

歩いても下りられそうなところだが、B峰に見惚れて歩いていて怪我なんぞしてもつまらないので・・・・

中央がD峰の頭。右手前がC峰。D峰を登った際、頭から懸垂下降でC峰側に下りたが、その際の残置支点が途中からよく見えた。
1P目をリード中の赤沼。最後のクラック部分が1P目の核心。
ゼーハー言いながら1P目終了。30mくらい。
1P目フォロー中の中尾さん。
2P目は次のテラスまで。中尾さんリード中。20mくらい。
2P目フォロー中の赤沼。後ろ左がD峰。右がC峰。
2P目ビレイ中の中尾さん。後ろのクラックが3P目。
お天気最高。眺めも最高。
2P目終了点の小ピークからいったんクライムダウンして取付き。

3P目をリード中の赤沼。クラックをひろいながら高度を稼ぐ。
ピーク手前のクラックが難しそうなので、ブッシュ帯に入ったらピッチを切って、一番難しそうな核心部分を頼れる兄貴、中尾さんにまかせる作戦。

ビレー中の中尾さんを振り返る。D峰がだいぶ下方になってきた。

ところがブッシュ内は足場がなく、しょうがないのでそのまま核心のクラックに突っ込む。ロープはすでに30m以上出ていて重いのだが・・・
ブッシュから真上(右)のクラックを登るのが順当と思われたが、中に浮石がたくさんあって、これを落とすとビレーヤー直撃の可能性もあるので、左のクラックへ。
このクラックに移るところがかぶり気味。
フリークライミングにこだわりのない赤沼は即あぶみを取り出してカムエイド2ポイントでクラック内へ。そこから高度感のある気持ちよいクラック登り。このピッチでNo.6も含めて2セットのカムをほぼ使い切り。
でもあまりのロープの重さに終了点についてしばらくは横になってゼーハーゼーハー。
最難関の核心部で50mほどのロープピッチになってしまった。
中尾さんはここもフリーでフォロー。
「カムの回収がうまくいかなくて、1テンションやっちゃった。」とか言ってたけど、ロープが重すぎてビレーしてた赤沼は気が付かず。言わなきゃわかんないのにね。

3P目フォロー中の中尾さん。
3P目終了点。すぐ横がB峰の頭。

B峰の頭からA峰を望む。A峰につなげて、あのバルタン星人のはさみのようなチムニーを登りたかったが、ここで体力も時間もいっぱいいっぱい。
やぶのリッジを歩いて、A峰手前からルンゼ方向に行くと、下降点だった砂払いの頭に戻ることができた。
「この次はA峰を下のフェースから登って、最後のチムニーからA峰の頭に飛び出よう」と話ながら帰途についた。

B峰1ピッチ目終了点で撮影した、周辺の説明動画。