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金峰山・千代の吹上第一岩稜・岩壁観光ルート開拓

千代の吹上第4岩稜を登った時に遠望した、第一岩稜を登ってきた。

この左スカイラインが第一岩稜。
易しそうに見える。もしかしたら歩きになるかな?
でも一番下部が切れ落ちているので、少しはクライミング要素もありそう。
難しすぎない岩遊びを目指している自分にとって、理想のお遊びフィールドに見えるぞ。

パートナーは斉藤真帆ちゃん。

自転車で中南米を旅した(縦断?)際に見た素敵な岩峰(クライミング対象としては世界最高クラスにやばいやつ)に登りたくなって、そのために今はアルパインクライミング修業中らしい。
故郷を離れ、山に囲まれた北杜市で稼ぎながら、ひとりでネパールヒマラヤの山を登って、北杜市に戻ってきたばかり。すぐにまた、パキスタンあたりに登山に行くらしい。

平日に休みが一致したので、日帰りでつきあってもらうことになった。

第4岩稜の時は大弛峠からアプローチしたが、早朝の集合には北杜市からのアクセスが長すぎる。今回は歩きは少し長いが北杜市からは近い瑞牆山荘スタートのアプローチ。

岩場に向けて歩く歩く。長い道のり約3時間半で金峰山山頂手前。
やっと第一岩稜が見えてきた。

第一岩稜の金峰山寄りのガレと草付きのルンゼを歩いておりる。

白ザレが出たところで、これぞ取付き!という岩稜の末端となる。

1P目。上に見えている急傾斜のフェースめがけてガレ交じりの岩を登る。難しくはないがルートファインディングは慎重に行く必要あり。

1P目終了点

2P目から岩登りらしくなってくる。
とりあえず真上の垂直部分を目指すが、真正面は取付くしまなし。
右側、ハングとスラブの出会う凹角あたりを登る。

見た目はぐずぐずの草付き壁だが、意外にちゃんとした岩登り。
ムーブ的にも5級程度のポイントがいくつか出てきて、フェースのマントリング、内面登攀技術なども使いながらの、岩登りが楽しめるピッチだった。

2P目終了点

さてここで下部フェースの垂直部分は若干巻いた感じ。
この辺で稜線上に戻ろう。

そういうわけで、3P目は稜線に向かって側壁にあたるフェースを直上。
固めの花崗岩のフェースでカムも決まるし、技術的にもここが核心。
小さなスタンスに足をこすりつけてのトラバースあり、フィンガークラックありで、かなり楽しめた。

3P目終了点付近を岩稜に抜けてくる真帆ちゃんの図

3P目で岩稜上に出ると眼前に第一岩稜。その左に広がる第一フェースには古いルートがあるらしい。さらに奥には第2岩稜から第4岩稜まで、千代の吹上の全景が広がる。

左下に見える緩やかなスラブ状の岩稜がこの間登った第4岩稜のようだ。

真ん中の顕著なリッジが第2岩稜。今度はこれかな?このリッジラインは登られているらしい。

4P目は歩き以上、クライミング未満なリッジ。でもところどころロープの欲しくなるようなフェースが出てくるので、ロープを結んだまま進む。
大きく広がる岩壁群を眺めながらの楽しい岩稜クライミング。

5P目。第一フェースの右側ラインをそのまま登っていく。

5P目終了点から見下ろす。

まもなく5P目終了。

金峰山の稜線上の第一岩稜終了点はもう目と鼻の先。ここでちょっともぐもぐタイム。いやなんか腹減ってるの忘れて登ってたわ。

さあこれが最終ピッチになるか。真帆ちゃんがリード。

「ロープが足りたらトップアウトしてしまっていいからね~」と見守る赤沼。

というわけで感動のトップアウト。

赤沼も到着。

全6ピッチ、200メートル弱?のクライミングで、登攀時間は約2時間。
下部はルートファインディングをしながら、見た目よりはかなりクライミングらしいクライミングができる。
上部は千代の吹上の全景に圧倒されながらの、高度感もあって気持ちのよい、そして難しくない岩稜クライミング。
かなりよいルートです。ぜひ登ってみてほしいルートとなった。

さて第一岩稜だが、登山大系には第一岩稜をおりて第一フェースに取付いたという記載はあるが、実際現地を見ると少し左のルンゼ寄りを下りたほうがはるかに合理的。たぶん第一岩稜自体はおりてないんじゃないだろうか。(おりるなら一部は懸垂になる。だったら手っ取り早く草付きルンゼおりるよね~)
そして下部はまず登られてないでしょう。
そういうわけで、少なくとも下部は初トレース。おそらく上部も。
なので一応ルート名なんかもつけちゃおう~。
命名は真帆ちゃんにまかせた。

真剣に考え中。
結果、ルート名「千代の吹上第一岩稜、岩壁観光ルート」
となりました。

メモ:

登攀日:2023年7月20日
使用ギア:50mダブルロープ1本、カム1.5セット。ハーケン、ボルトは使用せず。
1P目:3級35m
2P目:5級30m
3P目:6級30m
4P目: 3級30m
5P目:3級45m
6P目:4級35m
瑞牆山荘6:08am – 第一岩稜終了点となるピーク付近9:10am – 第一岩稜取付き10:00am – 第一岩稜終了点12:10pm – 瑞牆山荘15:00pm

金峰山・千代の吹上第四岩稜~白い尖峰

垂直の木登りで岩稜上のコルに這いあがると、目の前に真っ白な花崗岩の垂直のピナクルが立ちはだかった。
ピナクルに向かって灌木交じりのフェースを越えると、ロープを引くリードの長友さんはピナクルを左に回り込んで視界から消えた。
ロープの動きが止まる。やがて間欠的に聞こえる咆哮のたびに、じりじりとロープが伸びて行く。
いったいどんなやばいピッチなんだ?

そこは、花崗岩スラブのトラバースポイントだった。

傾斜はそれほどでもないのだが、表面が風化してザラザラとなっており、手がかり足がかりともに掘り出して探すような感じ。当然あまりまともなプロテクションはとれない。

ここでアドレナリンの出まくった長友さんは、帰りの車中に及ぶまで「ぼくすごかったよね」アピールを続けることになるのだが・・・・まあ実際やばかったし、かなり気合の入ったクライミングだったし、こういう気分になれる時ってクライミング人生における貴重な時間だったりしますね。

稜線の登山道から見下ろす千代の吹上の一部

千代の吹上というのは、金峰山の山頂すぐ近くの稜線から150m-200m規模で切れ落ちる金峰山最大の岩場。
1980年前後にその一部がRCC神奈川等のクライマーたちによって開拓されたが、その内容は日本登山大系で概要がわかるにとどまる。ネットで検索をしてみても登った記録はほぼなく、これまた「行って、見て、登る」クライミングと言える。この岩場について日本登山大系で執筆したRCC神奈川のクライマーたちとは当時おつきあいがあったという縁もあり、いつかは登ってみたい岩場の一つとしてリストアップしていた。今回ようやく足跡を残すことができたのだ。

早朝4時半に大弛峠の駐車場を出発し、金峰山を越え、岩場を偵察しながらうろちょろして、登攀を開始したのがもう9時前。このアプローチの長さも岩場がほとんど手つかずになった理由の一つだろう。
ちなみに千代の吹上は第一~第四の4つの岩稜とその間のフェースからなる岩場と紹介されているが、実際に行ってみるといくつものリッジやフェースが複雑に交錯していて、それぞれの岩稜を特定することが非常に難しかった。第二岩稜と第三岩稜の間のルンゼを歩いて下り、未踏の第三岩稜に取付いたつもりで登っていたのだが、あとでどうやら第四岩稜を登ったらしいとわかった次第。

金峰山への登山道で稜線に至ると広大な山並みと雲海が広がる。遠くに浅間山の噴煙がくっきりと見える。
実際に岩場に沿って下ってみると思った以上のスケールがあることがわかる。

さて長友さんが咆哮して登った2ピッチ目を終えると、目の前には典型的な花崗岩のスラブが広がった。

3P目のスラブ壁

今度は赤沼がリード。ここも風化が激しく、どこもがザラザラしていて手がかり足がかりはすぐにぐずぐずと崩れる状態。でもやっぱ登るなら真ん中だよね~と取付いてみる。見た目よりかなり難しくしかも上部に向かって傾斜が増してくる。
ノープロテクションで一気に超えるつもりだったが、リスク高すぎと判断してボルトを埋めることにする。穿孔作業に入るがなんとものの1分ほどで十分な大きさの穴があいてしまった・・・・こ、これはやばいかも。
とりあえずRCCボルトを埋め込むが、なぜかボルトがくるくるまわるのよね~。ボルトのエクスパンション機能は十分に働いたらしく、くさびが根本まで刺さった状態のボルトが手で抜けてきたよ???
つまり岩がボロすぎて穿孔作業の間にまわりを崩して、規定サイズ以上の穴があいてしまったらしい。
もう一本ボルトを打ってみたがまったく同じ状態。
あはは。これはやばいね~さすがに想定外だよ。
そんなわけでぐるぐるまわるボルトを梃子としてそーっと荷重をかけながらクライムダウン。もう落ちても大丈夫だろうというあたりで、近くに見える大きめのスタンス(足がかり)に飛びついてみた。案の定ぐずぐずに崩れて落ちた。ついでにボルトもきれいに抜けた。そのまま両足制動で停止。
それを間近に見ていた長友さんは相当にどきどきしていたらしいよ。

心を入れ替えて、右の節理のある方のラインからこのピッチはクリア。
登りながら右手に見えるこの岩稜が第三岩稜の下部あたりかな。かなり難しそう。これで風化してたら手が出ないかも。
4P目はさらに続くスラブ壁。

幸い3P目よりは傾斜が弱いし、風化も少なそうに見える。この先に見えてる顕著な岩塔のほうに向かって岩稜は伸びているようだ。

長友さんリードの順番。実際岩も少し硬くなり、長友さんの大好きなすたこらスラブに近い。これぞわれわれの求めていた難しすぎない快適な岩稜って~ピッチでした。いやあ楽しい楽しい。

4P目終了点でビレイする長友さん。先に見えるのが終了点あたりの岩塔。

ここからはいったん樹林の岩稜となり、ロープをつけたまま4Pほど行くと、先のほうに見えていた岩塔の取付き。

正確には岩稜がいったん藪に消え、このガレ場をはさんで岩塔が立っている。
この岩塔だけでも2~3Pは出るかというサイズ(写真は先端部分のみ)。ほぼ垂直で、クラックをつなげれば登れるかな~・・・・という気持ちにならん。だって過去最悪に近い脆さを更新したばっかりだし。

でもこの先端には立ちたいな~というわけで、一番隅っこの短かそうなラインを選んでチャレンジ。

それにしてもちょっと面白いラインで、チムニーに巨大なチョックストーンが縦に2つ引っかかってる、その間を登っていくことになる。
上のチョックストーンに乗ったところ。
この辺が核心。テクニカルでなかなか楽しいクライミングだ。

このピッチにはなんと残置ハーケンを一本発見。

岩塔の上に立つ。ちなみに手前の岩はぐらんぐらんと動くのだ。押せば落ちるなこりゃ。


岩塔のすみっこにクライムダウンできる場所を発見し、第四岩稜に戻る。

あとはハイマツとしゃくなげに覆われた岩稜を歩いて登山道へ。体力的にはここが一番つらかった。長いんだもん。

第二岩稜、第三岩稜方面を見下ろす。
動物のねぐららしき洞穴。かなり快適そうね。
登山道に戻ってきた。でもここから稜線登山道を通って駐車場までまだ3時間の歩き。
千代の吹上はガスの中。
長い歩きは淡々、粛々と。

さてと。
ヘルメットもクライミングギアも全部ザックにしまって、われわれどう見ても二人連れハイカーのおっさん達なんですが・・・・

(行き帰りに2回登った長友さん。この写真は行きのやつ。)


よせばいいのに、「五丈岩の上に立ってみたかったんです♪」と長友さん。
運動靴でひょひょいのひょいと登って、ひょいひょいと下りてきた。
それを見ていたハイカーのカップル。男子のほうがその気になって登りだしちゃったよ。ほら言わんこっちゃない。
長友さんは責任をとって、いざというときのために見守り、赤沼はさっさと下山。
結局登りだした彼、だいぶ行きつ戻りつしたあげく、下りてきてくれたそうで、長友さんも追いついてきた。

あとで日本登山大系を読み込んだり、トラックログを見たりして、登ったのは第四岩稜であり、最後にてっぺんに立った岩塔は「白い尖峰」と言われているものだろうとなった。
グレードについては脆さやプロテクションの難しさなどを加味するわけにもいかないし、つけても無駄だろうという結論。あえて言えば岩場部分は3~6級の間ってところ。最初の木登りであぶみも使ったのでA1もついちゃうのかな?

なかで歩いた4Pを入れて全9P。やぶこぎも入れれば200-300mはあろうかという大登攀でした。

トラックログ。稜線から右側ラインがアプローチ。左のラインが第四岩稜~白い尖塔~稜線

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