寒波襲来で新雪のプチバリエーションを一人、こそこそと登ってきました。
「寒くてつらい冬壁なんぞもういかなくてもいいか・・・」
なんて思い出してからもう10年以上になるかな。
でもがりがり登ることを諦めてみたら、老化(体力の低下)を客観的に見定めつつ、「ルート発掘」ともいうべき無理のないスタイルに、自然と移行してきたようだ。
さてそんななかで今年の最大テーマは、前穂高岳東南面の情報のまったくないリッジのクライミング。
ウォルター・ウエストンやら旧制松本高校山岳部やらの、足跡を辿るクライミング旅をしているうちに見つけたところ。
ここは経験的に素敵なクライミングになるだろうと期待値が高まるところ。
昨年もここを狙っていたんだけど、天気がどうとか、熊がなんだとか・・・結局のところ、体力的な自信のなさがネックとなって言い訳つづけて登れず。
でも全装担いでとはいえ、1泊2日の無雪期登攀。
登り込んで調整のできた身体なら、この年齢でもまだまだ登れるはずだぞ。
というわけで、この何年か妻を相手にやってきたステップアップ登山を自分に課してみることにした。
つまり簡単なところから徐々にグレードアップしていって、目的達成しようというプラン。まあ普通のことなんですけど。
登山はほとんど未経験の妻とは、そのやり方で穂高岳に登頂し、雪山も登り、そしてテント泊登山や沢登りもやってきた。
今度は初心者を導く上から目線の登山ではなく、体力、気力を見定めながらの自分自身のステップアップなのだ~!・・・って挫折を防ぐためにちょっとほら吹いてみましたよ。
初回はどこがいいかな~。
ルートの楽しさよりも長く歩くことが主眼だね。
南相木サーキット(南相木村の村界尾根をすべて歩いて村を一周するプランで、南半分は終了している)でも完成させるか。
そのつもりで北杜市の別荘まで出かけたんだけど、朝起きてみたら一面の銀世界。そういえば寒波来てたっけか。
新雪に覆われた藪尾根は歩きにくいし、楽しくない。
どうせ銀世界ならもっと冬山らしい瑞牆でも行くか!
瑞牆山の東に延びる尾根には岩マークがたくさんついていて、地図には登山道もない。調べてみたら、瑞牆のバリエーションルートとして訪れる人もちょこちょこいるらしい。よし、そこへ行ってみよう。

破線が登山道のない東尾根

瑞牆山荘から入山。
豪雪地帯ではないけど、登山道をはずれるので念のために輪かんを持参。
岩場も出てきそうだし、ストックのほかに一応ピッケルも持ってみた。まあいつもの、持ち歩くだけの過剰装備で終わるんじゃないかと想像していたわけです。この時点では。

昨夜未明から降った雪で登山道は覆われている。
しかしまあ、そこは元のトレースがしっかりとついた百名山。
とくにラッセルということもなく、登山靴で快適に歩く。

樹林越しに東尾根あたりも見えて来た。(ピントがあわず見づらいね)

このあたりから登山道をはずれて、樹林の尾根に入るはず。
トレースをはずれて踏み込んでみたら腰まで潜った。こりゃ登山靴のみではきつい。

何年振りに輪かん装着。つけ方を思い出すのに時間がかかった。

ところどころ赤布がある。無雪期ならトレースもありそうだ。

尾根はいったん下り、コルから登り返すと岩場が増えてくる。
こんな岩峰がいくつかあるが、赤布のルートは右に迂回して大きく巻いている。無雪期に岩峰沿いを登ったら面白いかも。

尾根上にはこんな露岩がでてき始める。輪かんのまま越えて行くには結構デリケートなクライミングが求められる。

この辺が核心のようだ。
藪から巻くルートも見つからず。
右端のスラブ壁にお助け固定ロープがあるものの強度的にも、張り方も信頼が置けない。
落ちたら谷底だな。
面倒くさいけど輪かんをはずしてアイゼン装着。
ところどころに生えてるシャクナゲの根っこにピッケルのピックを叩き込みつつ、雪の中のスタンスをアイゼンの爪で探りながらじわじわと進む。
ついにピッケルまで登場してしまった。なんならもう一本アックスがあれば安定して登れたな~。

核心部を越えた。ここから先はまたラッセル&木登りになりそうだ。

上部の岩峰は赤布に従って右側を大きく巻いて行く。
疲れ果てたころ瑞牆山への一般登山道に合流。左に10分もかからず山頂。

顔が疲れ果ててます

山頂はやや曇り気味。
寒波襲来とあって、朝は地吹雪、突然晴れ、そしてまた雪てな天候。
全体的には赤布を追って歩いて行けばそんなにきつい山登りではなかった。でも寒さとこの変わりやすい天候で冬期登攀気分にもひたることができた。
行動時間約7時間半。
これでへばるのは調整の初期段階としては想定内。
一般道を走り下りて、あっというまに登山口におりてきました。
道をはずれてみて、はじめて道のありがたさがわかるな~。