アルパインクライミング・沢登り・フリークライミング・地域研究などジャンルを問わず活動する山岳会

月: 2022年6月

南相木グレートトラバース(エクステンディッド)

徒然に地図を眺めていて、何気に訪れてみた城山(海ノ口城址)。
そこから長野県のなぁ~~~んにもない村、南相木村での山歩きが始まった。
南相木村の村界はほとんどが登山道もないような山稜だ。
城山を歩いた後、長野県南牧村との村界尾根をすべて歩き、(酔狂で)南相木グレートトラバースと名付けた。鹿や狸の踏み跡をたどっての素敵な山歩きとなった。
今回はその起点となった馬越峠から反対側(東)に向かって、川上村との村界尾根を歩いてみた。グレートトラバースルートがアップグレード(Extended)されたわけで、城山からはじまって、南牧村との村界尾根にさらに川上村との村界尾根が加わったものを新しい南相木グレートトラバースとしてしまおう。
この先は北の村界尾根を踏破し、それらすべてを包含して「南相木村サーキット」ないしは「ラウンド南相木」とでも名付けてしまおうと思っている(笑)

さて今回も車2台で行って、1台は下山予定地にデポ、もう一台で登山口に向かう作戦。

相棒は長友さん。車も持っているし、山に関しても全幅の信頼がおけるパートナー。ただ彼は4月に右手を怪我してしまい、今はリハビリ中。右手でのクライミングは無理だし、転んで手をつくのもNG。
それでもプロテクターで手を固めての参戦。頼もしいというか無謀というか。

彼の状態を考慮して、馬越峠から登山道のある御陵(おみはか)山往復というぬるいプランを提案したのだが、逆にさんざん長駆登山をそそのかされ、南相木村/川上村の村界尾根全踏破をすることとなり、結局18キロ近くにおよぶ8時間半のロングランとなった。

下山予定地の南相木ダムの駐車場に車を1台デポ。
日本一標高の高いダムと言われるここを訪れるのはすでに4回目。
さて今日中にここに帰って来られるのか?

南相木村村界尾根の南側山稜(南相木グレートトラバース)を横切る唯一のまともな車道、小沢しなの入トンネルを越えて川上村側に抜ける。
登山口となる馬越峠は南相木村、川上村間の峠道で、当然南相木村側からもあがることができるのだが、当分の間は南相木側が工事中で通行止め。なので遠回りしてあがるのだ。

馬越峠から東に向かって歩き出す。

馬越峠から西へ登山道を辿れば先日も通った天狗山。反対側は擁壁となっているが、左の隅に踏み跡があり、登山道に入れる。御陵山までは比較的よく整備された道。

御陵山って、この山域に唯一残る伝説、悲運の皇子重仁親王の陵?とか思ってたけど、違うことが書いてありますな。まあ強引に結び付けて仮説をたててみたりするのも楽しいでしょうが、それはまた今度。

壊れかけた祠に手を合わせてさらに先へ。
振り返れば天狗山
登山道はなくなるが尾根は歩きやすい。踏み跡もそこここに残っている。

御陵山から東に1.5キロ程度縦走した先、1753m峰あたりが地形的には今回の核心部。何せ長友さんは、転んで手をつくことが絶対許されないのだ。

岩稜ぽくなってくる。慎重にルートファインディングしていく。
川上村側にまたまたソーラ出現。

そういえば馬越峠の手前も伐採中とあって、大量の樹林を切り倒していた。どうやら川上村は南斜面のすべてをソーラにするつもり?
薄っぺらい偽善と拝金の匂いがプンプンして不快感マックス。

しばらく岩稜がつづく

尾根がなだらかになってきたあたりで、川上村から南相木村に抜ける林道をまたぐ。

尾根は延々とつづく。少し飽きも入ってくる。

ところでほとんどの行程を長友さんに先導してもらった。
体力差を補うのにこれはかなり有効だった。
道を読んで、GPSで確認して、ペース配分して・・・という作業がかなり体力を使っているんだろうと思う。
ただひたすら長友さんの後ろ姿を追って歩くのが楽で、癖になりそうだ。
これも長友さんに全幅の信頼がおけるがゆえ。道もたまには間違うが、それは自分も同じだし。間違いも含めて信用してついていく。そんな気持ちになれるのがなぜか嬉しい。

今回は8時間半ほどの行程だったが、道中のかなりの部分を二人で喋り散らした。これも毎度のパターン。

長友さんによれば私の登山は「最高に享楽的」なんだそうな。
最大限の誉め言葉として受け取る。

クライミングばかりやってた10台最後から20台のころ。
仲間がばたばたと亡くなっていくのを見ていて、自分の寿命も長くて30くらいだろうと思っていた。だったら死ぬまでの残り少ないクライミング行を最大限に楽しいものにしないと・・・と思った。
無駄な山行をなるべくしないよう、少しでも多くの感情を味わい、多くのものを見て、怖い想いもして、多様な山の楽しみに、クライミングという最高にクリエイティブな表現行為を通して触れなければならないという強迫観念に突き動かされていたように思う。

30過ぎても、40過ぎても、50過ぎてもなぜかまだ生きていて。
だんだんそんな切羽詰まった気持ちも薄れてきて。
でも還暦過ぎて、人生の終わりまでの時間を数えはじめた今、なぜかあの頃に近い感覚が戻ってきているみたい。
死ぬまでにできるクライミングはもう限られている。
だから無駄な暇つぶしみたいな山はやりたくない。
すごい山とか難しい山をやりたいわけではなく、自分として納得のいく山との触れ合い方、素敵なパートナーたちとの関係性、岩や山肌の感触、まだまだあるだろう未知の感情・・・・そういう無数で多様なものをすべて自分のなかに封じ込めて死にたいな~
なんて話を道中ず~っと話していた。

もちろん長友さんの登山論、美意識などについても興味深く拝聴した。
今回は前のように高いところから低いところに縦走するという楽な道をとらず、登りの多い道中になったのも長友さんのそんな美意識によるものが多い。そのへんこだわらない私は従うのみ。

道半ばを過ぎた1907m峰あたりでお昼。今回は飢えないようにおにぎりいっぱい持ってきた。

私の持ってきたシャトレーゼのよもぎ饅頭、長友さんのカロリーたっぷりビスケット、ウィダーインゼリーなど、おにぎり以外の食の楽しみをとっておいて、「あのピークについたらこれを食べよう!」というのを大きな楽しみに道を進める。

今回の最高到達地点。高天原山。国土地理院の地図には山名記載がなかったが、Geographicaには出ていた。ここで南相木村/川上村の村界尾根はおしまい。

ここから北に、今度は群馬県上野村との村界尾根に入る。すでに南相木ダムの東側に回り込んでいるので、このままダムに下りれば今回は終了。

南相木村の山は、北斜面がなぜかみなシダに覆われている。尾根をたどってダムにおりようと思ったが、シダに覆われた足元が見えなくて、倒木や苔に覆われた岩が滑るので危険。

尾根をやめて沢下りにする。三川は南相木側、奥三川湖(南相木ダムのあるところ)の最上流だ。

南相木ダムの遊歩道から三川に伸びる林道に着く。
南相木ダムの遊歩道をぐるっと半周して、デポ車を停めた駐車場へ。
南相木ダムに到着

【記録】

トラックレコード(西から東へ)

左端の馬越峠から歩き出し。東へ御陵山。その先は登山道はなし。
踏み跡をたどってさらに東へ。オソネ、東沢の頭と名付けられたピークを越えてさらに東へ。
再東端は高天の原山。北東には御巣鷹山。このまま東へ行けば三国山。

高天の原山から北上し、途中から適当に西の尾根に入る。三川の沢を下って南相木ダムに到着。

歩いた日:2022年6月26日

馬越峠 7時30分発
1753m峰 9時30分
オソネ  11時11分
1907m峰 12時10分
1935m峰 13時15分
高天の原山 13時45分
三川林道  15時15分
南相木ダム駐車場 16時着
全行程約17.5km 8時間半の歩きだった。

南相木グレートトラバース

初夏の彩りに満ちた、美しくなだらかな、そして変化と起伏に富んだ尾根を縦走してきた。数知れない鹿の群れと、熊やいのしし、狸の痕跡に満ちていたし、林業家の手は入っているものの、登山者の訪れた気配はほとんどなかった。

長野県南相木村と南牧村の村界尾根を縦走するこのルートに、勝手ながら「南相木グレートトラバース」という大層な名前を付けた。

直線距離で約7.5kmの比較的なだらかな尾根で、西端近くに武田信玄初陣の地と言われる海ノ口城址(城山)、東端は佐久の盟主男山と天狗山の間に位置する垣越山となる。
この尾根上で国土地理院の地図に名前が載っているのは、城山と大芝峠、合羽坂、それに臨幸峠だけ。あとは垣越山も含めて、各ピークに標高を示す数字が記載されているだけだ。つまりほとんど知られないマイナーな尾根だということ。たいがいのデッパリには登ってヤマレコあたりに記録を残しているあのディープハイカーズも、ここにはほとんど足跡を残していないようだ。

これはパトロールが必要だと、まずは尾根の中央あたりにある臨幸峠というところに登ってみた。

コゴミの親分ソテツに覆われた、急な北斜面を登っていくと峠で植生が明るく変わり、八ヶ岳などの展望も一気にひらけた。なだらかで、美しい尾根だ。

パトロールの際は臨幸峠から東、天狗山の方向に少しだけ縦走してきた。やぶの密生も激しくなく、展望に恵まれた気持ちのよい尾根だった。

天狗山から臨幸峠を通って、海ノ口城址(城山)までつなげたら、楽しいルートとなるだろう。このルートは川上村を一部通り、南牧村と南相木村の村界を辿るものとなる。商業的な開発や有名な山、観光資源に乏しい南相木村に興味を持って、何度か訪れたことから始まった縦走プランなので、「南相木グレートトラバース」と名付け、実行することとした。

メンバーは強くて力持ち、ダンディーI口さんと、ハンターで写真家のワイルド自然児T丸さん。全長13.5kmほどの道なきルートを行くプランなので、植生や岩場の状態次第でどれくらい時間がかかるかわからない。しかし今回は、体力十分、経験十分で頼りがいのあるメンバーがそろったものだ。つまり足引っ張る担当は赤沼ということで。

左から野生動物の敵(あるいは仲間?)T丸さん、おにぎりいくつ持ってあるいてるんですか?なI口さん、それに疲れ気味の赤沼

土曜午後に八ヶ岳南麓の家に集合して、もちろん宴会。T丸さん持参のロースト鹿肉に舌鼓を打ちつつ、酒の空瓶が並ぶ。
それでも翌朝は4時に起きて出発。
I口さんの車を佐久海ノ口駅にデポし、南相木側から赤沼車で馬越峠に向かう・・・が、まさかの雨。プランはいったんあきらめ、南相木唯一の観光資源ともいえる、南相木ダムまでドライブ。一応登山口を確認しておくかと馬越峠に向かってみたがなんと工事で8月まで通行止め。
ここまでやってもまだ6時台。では南相木から臨幸峠を越えて、川上村の御所平に至り居を構えたという悲運の皇子、重仁親王を祀ったと言われる御霊神社にも立ち寄り、さらに川上村側からの馬越峠も偵察しておこうということになった。

御所平の御霊神社。入口は藪に覆われていて場所を見つけるのに苦労した。

さて今度は馬越峠に川上村側から登っていくと、峠まで着いてしまった。
どうやら工事は相木側だけらしい。
時間は8時前。そしていつの間にか雨は止み、晴れ間さえ見えている。


「天狗山でも往復してくるか?」
「だったら臨幸峠まで行って、そこから佐久側におりれば小海線の佐久広瀬駅から電車でI口車まで行けるんでは?」
「いやあ、それだと車道歩きが長いし、たいして所要時間もかわらなそう。なんなら予定ルートで佐久海ノ口まで歩いてしまうか~」

というわけで行動計画は徐々にヒートアップし、予定プランの実行となった。7時50分馬越峠出発!

そもそも出発地点を馬越峠に持ってきたのは、天狗山さえ登ってしまえばあとはだいたい下りの尾根になるからという安易な理由。
本格的な登りは天狗山のみ!ということで、ここはふんばって30分で天狗山山頂着。

天狗山より男山方面を望む。その手前のピークが垣越山。ここから右へ尾根を下りて行くプラン。下ってますな。はは。
垣越山に向かうと左手に川上村の壮大なソーラー発電所が見える。山の自然破壊の主役は今やゴルフ場からソーラー発電に移ったのかな~(怒)


垣越山までは登山道。そこから右の尾根に入っていく。
尾根沿いにある程度は踏み跡があって、案外と歩きやすい尾根。
1か所岩稜がシャクナゲに覆われていて歩きにくい場所があったほかは、ルートを通してさほどの藪もなく、GPSとT丸さんの野生に導かれつつ、人間やら鹿やら熊やらの道を拾って快適に歩くことができた。

馬越峠から約5時間で海ノ口大橋に到着

梅雨入り直前の良い時期で、多彩な色どりの変化を見せる緑に魅せられ、野生動物たちと共有する土や岩の感触に癒されながらの徒歩旅行となった。
地図に山名記載のない山も、行ってみると小さな標識なんかがあって地元で呼ばれている山の名前がわかったりすることが多いものだが、今回はそういう情報はまったくなし。登山が目的で入る人のほとんどいないエリアなのだろう。

予定では以前に登った海ノ口城址(城山)まで行くつもりだったが、その部分はもう歩いたからいいやと日和って、手前の大芝峠からその下を抜ける小沢志なの入トンネルの入口(出口?)を通って佐久海ノ口駅に戻った。国土地理院の地図上は大芝峠、合羽坂、臨幸峠には峠越えの道が記載されているが、すべて廃道に近い状態で踏み跡はほとんど見当たらない。

今度はふたりの健脚に引きずられて、相当早いペースで歩いたので、全行程5時間ほどで終わることができた。普段のペースだったら倍くらいかかったかも。以下のデータはそういうつもりでご参照のほどを。

【データ】
2022年6月5日
馬越峠 7:50am
天狗山 8:20am
1656m峰 9:43am
1683m峰 10:05am
1591m峰 10:30am
臨幸峠 10:40am
1518m峰 11:05am
合羽坂 12:00am
大芝峠 12:13pm
佐久海ノ口駅 12:50pm

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