アルパインクライミング・沢登り・フリークライミング・地域研究などジャンルを問わず活動する山岳会

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金峰山・千代の吹上第三岩稜A峰

金峰山の南面に展開する岩壁群、千代の吹上。
アプローチが長いこともあってか、あまり登られていないが、その中でも記録の見当たらない第三岩稜。
先月(2024年9月)ここを訪れ、第三岩稜がおおよそ4つの岩峰からなっていることがわかった。便宜上、上からA峰、B峰、C峰、D峰と名付け、その時はD峰の正面壁を登って来た。

パートナーはハンターでカメラマンの田丸さん(東京ヤングクライマースクラブ)。
藪歩きがすさまじく速く、鹿に出くわすと人格が変わる。
自動車メーカーの専属で撮影をしていたこともあって、車にも詳しいらしい。

前回はなが~い瑞牆山荘からのアプローチでばてたので、今回は大弛峠から金峰山を越えて行くこととした。これで1時間ほど節約できる。前夜は大弛峠にて、田丸さんの車中泊仕様の軽バンで宴会。案の定飲みすぎの感が・・・

前回D峰を登ったのでつづきを登ろうという予定。
小さく見えるC峰は割愛して、B峰~A峰を続けて登るつもり。
かなりロングルートとなりそうなので、大弛峠を早朝出発のつもりだったが、前日の雨が乾くのに時間がかかりそう(という口実で飲んだんだけど)なので、目的をA峰のみに絞って少しゆっくり目に出発。

稜線から撮影した第3岩稜の上部。左のほうに見えているピークがA峰の頭。(下から見るとここで第3岩稜が終わって見える)
おぢさん二人で名づけるとしたらたった一つのワードしか思いつかないA峰の頭。下から見るとよりそれらしい。ここに立ちたい。

稜線から見て第3岩稜の左側ルンゼをクライムダウン。懸垂下降しようかという程度の急な斜面だが、樹林を使えばなんとか下りられる。

目的のA峰の下部に到着。
B, C, D峰が下方に見渡せる。
D峰の頭には先月懸垂下降用に作った支点につけた捨て縄が見えている。
B峰は上から見てA峰より右よりに稜線を伸ばしている。そしてB峰とA峰の下部はのっぺりしたスラブ帯でつながって見える。B峰からA峰につなげるとしたら、このスラブを登るか、弱点となりそうな草付きを登ることになるのか。

B峰からさらに上に伸びる岩稜。

B峰上部の岩稜は第3岩稜に向かって伸びてきており、その終了点が合流しているのか独自に稜線に向かっているのかは確認できなかった。
手前のスラブ壁はA峰の下部ともいえるところ。この下がさらにB峰の側壁とつながっているようだ。
このスラブ壁は手掛かりがなく、簡単には登れそうもないので、A峰のピナクル部分の末端から取付くこととした。

A峰の1ピッチ目(正面のフェースはグラウンドアップでは手がつけられず、ピークを右側から回り込むようなラインとなった。)

1ピッチ目の出だしはクラックがいくつか切れ込んだフェース。後半はフレアしながら右上するワイドクラック。
まだ若干濡れているし、フェース部分は表面が風化していて、気を付けないとスタンスを壊しそう。
見た目より悪いフェースから右上ワイドクラック。
クラック左側がハングになっているため、右のカンテにトラバースしたいのだが、風化しているうえ、ホールドも乏しく苦労する。
ハング下の泥つきクラックにいれたカムにあぶみをかけて右フェースに乗り移ろうとするが、どうしてもハングに頭がつかえてバランスがとれずに振られてしまう。今回借りて来た、私のより高級な妻のヘルメットを泥ハングに何度もこすりつけてしまった・・・・
バランスを維持するためフェース部分にボルトを打ち、そこにもあぶみをかけてなんとか右のフェースに乗り移ることができた。ふ~。
あまりの激闘ぶりにビレイしていた田丸さんも緊張していて、赤沼の雄姿は撮影ならず。

1ピッチ目。右上するワイドクラックからフェースに移る部分を登る田丸さん。

2ピッチ目。
1ピッチ目でA峰ピークの右側裏に回り込んできたので、振り返った頭上がA峰ピーク。登路を探して少し右(手前)に草付き帯をトラバース。

薄い苔に覆われた露岩帯を木登り。いやらしい登りだ。
A峰ピークよりも稜線よりに大きなスラブ壁が見えており、登り口まで行ってみた。手の付けられそうもないフェースに残置ボルトが一本。
ん?誰か来たのはわかるが、ボルトの上は登れそうもないぞ。
どうも登ったようには見えないので、A峰ピーク寄りに戻る。
ジェードル状になった薄被りのシンクラックがある。
泥もつまっているし大変そうだが、もうここ以外に登路がなさそうなので、1ピッチ目で疲弊した身体に鞭打って取付く。

3ピッチ目のシンクラックはいきなりのカムエイド。左側がかぶり気味で、またまたバランスのとりづらい登り。
右の風化花崗岩に右足をこすりつけ、左足はあぶみという状態で苦労して伸びあがってはつぎのカムを設置するというハードな登り。小型カム中心に6ポイントで右のフェースに移る。

第3岩稜の主稜線部分に出て3ピッチ目を終了。件のピークは後ろ側になってしまった。

4ピッチ目は金峰山の稜線に向かって伸びあがる岩稜。

小ピークをひとつ登ったところでピッチを切ってもらう。
件のA峰ピークの上で写真を撮ってもらうためだ。

ビレイ点から戻るようにA峰ピークまで行って写真を撮ってもらう。

またいでいる隙間をのぞき込むと、50cm程度のチムニーが下のほうまで続いている。ここを登りたかったな~。ここを登って、この隙間から顔を出すことができたら、中尾さんには悪いけど別の意味?で「生まれる気分」が味わえたかも。(瑞牆山で中尾さんの開拓したルートの名前です。)

これが第3岩稜最後のピーク。

最終部分は面倒そうなフェースなので割愛して、ここから左にトラバースして樹林に入る。

第3岩稜終了点

歩き部分もいれて全7ピッチのクライミングでした。
A峰だけちょろっと登って、物足りなかったら第2、第3岩稜の中間にある小さな岩峰でも登ろうかなんて言っていたが、激闘ピッチふたつを含むハードな内容となり、もう二人ともへろへろでした。

金峰山・千代の吹上第三岩稜D峰正面壁ルート開拓

金峰山山頂の西側稜線の南面に、千代の吹上という岩壁群があることはよく知られている。
高差約200m, 幅約200mにわたって展開する金峰山最大の岩壁群だ。
白水社の日本登山大系では第一~第四岩稜の間に展開する7本のルートが紹介されている。
同書でも「開拓の歴史が浅く」とあるとおり足跡は少ないようだ。
ネット情報を参照しても情報は少なく、第二岩稜周辺と第四岩稜が時折登られたり、近年第二フェースにルートが開拓された情報が見つかる程度だ。

【山巡の今までのクライミング】
2023年6月 第四岩稜
記録のまったく見当たらない第三岩稜を目指したが、ルートの取付きがわからず、結果として第四岩稜~白い尖峰を登って来た。
2023年7月 第一岩稜
第四岩稜を登った際遠望した、美しい第一岩稜を登って来た。
楽しいクライミングを通して、千代の吹上の全体像を、かなりの迫力をもって見ることができた。知る限り記録も見当たらなかったので、「岩壁観光ルート」と命名。第一岩稜は既登であるとのコメントもいただいたが詳細は不明のまま。初トレースであるかどうかはどうでもよいとして、とても美しいラインの好ルートなので多くの人に登ってもらいたい。
実際知り合いのクライマーが後日これを登り、楽しいルートだったとのコメントをいただいたのが嬉しい。

さて第四岩稜を登った際、ガスの合間に見え隠れしていた迫力ある岩壁群が第三岩稜と思われる。かなり難しそうだ。
記録は見当たらず、難しすぎて誰も登っていないのか、それとも登攀価値のないつまらない岩稜なのか?
そんな好奇心もあって、第三岩稜を訪ねてみた。

結論から言うと、第三岩稜はひとつのリッジというよりも4~5個程度の尖峰の集合体であり、各岩峰は南面を中心にそれぞれ素敵なフェースやクラックから構成されているクライミングの楽しめそうなエリアだ。
便宜上上ピナクル1~ピナクル4と呼ぼうかと思ったが、日本登山大系で第一岩稜の終了点がP1、第四岩稜あたりがP3と記載されており、まぎらわしいので、上から第三岩稜A峰~D峰と仮称した。

登山大系の概念図にA~D峰を書き加えてみた。

2024年9月13日

山巡の若手女子、斉藤真帆ちゃんと第三岩稜に向かう。
瑞牆山荘から第四岩稜と第三岩稜の間の下降点(左写真、砂払いノ頭)まで約3時間半。

第三岩稜最下部の岩峰(D峰)は、千代の吹上全体でももっとも低い位置から始まる岩壁かと思われる。取付きまでは急なルンゼを約45分のクライムダウン。右岸の第四岩稜の美しいスラブの取付きより少し下くらいから左岸にトラバースして岩壁基部。

D峰基部付近から第四岩稜を望む。

D峰正面壁を見上げる。
これはなかなかの岩壁ですぞ、と感激しているが、実はこれが第三岩稜全体からすれば下部のほんの一部であることをあとで知る次第。
高度がここまでおりればこの岩壁の上が長いことは想定されたが、「どうせ木登りで終わるんじゃない?」なんて、この時点では軽く考えていたのだ。
下部はスラブ壁で、2ピッチ目あたりにいやらしそうなクラックが見えている。
ちょっと悪そうなので、2ピッチ目で山巡の鉄砲玉、真帆ちゃんを投入すべく計算して、1ピッチ目は赤沼リードでスタート。

1ピッチ目スタート
左手には第四岩稜が見える。

1ピッチ目の核心はこのフレークをつかんでえいやと登るうすらかぶりフェースか。
この右手にかなり古い残置ロープを発見。誰か登っているのか?と思ったが、残置の場所やロープの形状から何かの採集のためのものではないかと思われた。あるいはかなり昔の試登用だった可能性も。

1ピッチ目終了点から2ピッチ目を仰ぎ見る。

2ピッチ目は基部からも見えたように急なフェースのまんなかにクラックが一本走り、上部はハング気味となっている。

クラックの形は美しいが、泥と草が詰まっているだろうな~
クライミング自体もそこそこ難しそうだし、泥臭いクライミングになりそうだ。

ということで、予定どおり鉄砲玉、真帆ちゃんの投入。
こういうピッチの突破には若さが必要だよね。


真帆ちゃん、ロープを渡すと黙って突っ込みます。
クラックの核心部。

真帆ちゃん、泥のつまったクラックでプロテクション設置に苦労しているようだが、掃除作業のあとアブミに乗ってカムエイドで核心部を突破。

核心のクラック上から振り返って撮影。
クラックのあとはハングにぶつかる。

ハング下も悪いらしく、苦労しながらトラバースして上部の樹林に飛び込んだ。Good Job!

「あんな悪いピッチをよく頑張った!さすがだね~」とか言いつつフォローしていくと、「赤沼さんにクライミングが遅い!と言われるんじゃないかと心配してた」とか・・・・はは。自分は残置してもらったあぶみをいきなりつかんで登っておいて、言うかそんなこと。

さて3ピッチ目。
ビレー点についた時、真帆ちゃんがやけににやけてるなと思ったら、3ピッチ目は真帆ちゃんの大好きなワイドクラックがきれいに口をあけているではありませんか。

赤沼「ん?登りたいの?別に登ってもいいよ?」
真帆「いや別にどっちでもいいですけど・・・・」

なぁんてはっきりしないので、順番どおり赤沼リード。
まあこの時点でこの先は木登りで終了と勝手に想像していたもので、1ピッチくらいは頑張っちゃってもいいかなと思った次第。

左側のハンドクラックで行けるかなと思っていたけど、どんどん中に吸い込まれていくタイプのやつでした。

「赤沼さん、ワイドもやれるじゃないですか~!」などとおだてられつつ、頑張っちゃってます。

3ピッチ目後半はD峰の先端近くまでチムニー。
「ワイドあるかもよ~」と事前の憶測だけで真帆ちゃんに伝えていたため、真帆ちゃんはワイド用のでっかいカムを持ってきてくれていたけど、それでもこのチムニーはプロテクションとれませんな。ただただ壁のなかでいんぐりもんぐり高度を稼いでトップアウト。ザックを置いてきたので荷揚げで体力使い果たし。

真帆ちゃんも楽しそうに登って来た。

最後の最後で使った大きめカムを回収。「役にたったでしょ?」と見せたかったらしい。

D峰の頭に立ってみると、なんとまだこんな岩壁が立ちはだかってますよ。
真正面がB峰と仮称したやつ(C峰は左手下にあって写っていない。比較的小ぶり)。
そのうしろにぴょこんととんがっているのが一応A峰と仮称したやつ。AもBも独立した尖った岩峰に見えますな。
右手に聳えているのは第二岩稜。
この時点で今日は時間切れ。なにせアプローチ4時間あるので、この先を登っていたら間違いなく帰りは真っ暗。それ以前に相当ばててますな。われわれ。

D峰の下に見えてるC峰。小さめだが一応独立岩峰ぽいのでCとしてみた。

足下となったD峰はやはり尖った岩峰で、ピークからはむこうがわに懸垂下降をするしかなさそう。懸垂支点とするのに使えそうな木もないので、ボルトを打ったことのない真帆ちゃんの練習がてら2本打って(途中で赤沼に交代)懸垂。

本日はここから下山と決め、アプローチでおりてきたルンゼまでD峰の側壁部を3ピッチの懸垂下降。

下りて来たルンゼをぜいぜい言いながら登り返し、登山道を瑞牆山荘まで下山。
約12時間の行動となった。

D峰の頭に懸垂支点がなかったことからも、D峰正面壁は未踏だったのだろうと思われる。(情報あればぜひコメントいただきたく。)
そしてD峰から、上部の岩峰につなげれば最低でも10ピッチは越える長いルートとなると思われる。しかも内容も相当濃いものとなるのは必至。
アプローチが長いので、取付きで一泊くらいのつもりでやらないとだめだろうな~
気力が高まったらやってみるかもしれないし、どなたか試みる方がいるなら喜んで情報は提供させていただきます。なんか上の岩峰たちも未踏な気がするな~

関係ないけど、アプローチから通してこの辺ってきのこの宝庫らしい。
もひとつ関係ないけど水晶もいっぱい落ちてるらしい。真帆ちゃんは大喜びで拾い集めてました。
今回のトラックログ

佐久・天狗山中段岩壁左稜

山巡若手女子の斉藤真帆ちゃんと前穂高岳でルート開拓の予定が、北杜市ベースでその辺登り歩きとなった3日間。その最終日です。
2日目は瑞牆山でワイルド系クライミングをやって、結構疲れてもいたので、軽いクライミングをしようということに。

ところで今まで、天狗山南面岩壁群にいくつかのラインを引いてきたわけですが、残された課題が、下部フェースから中段岩壁を登って上部岩壁をかすめて山頂に至る一本のラインでした。昨年これを一気に登ろうと、北杜市在住クライマーの今井エリサさんと出かけました。

天狗山南面岩壁群の概略図
2023年10月、下部フェース2P目。

2023年10月。エリサさんと下部フェースにトライ。
傾斜の強い逆相のフェースに2ピッチ分ロープを伸ばし、下部フェース最終ピッチと思われる3ピッチ目の途中、赤沼が記憶を飛ばすという事態がおきました。自分がどこにいて、何やっているかわからなくなってしまったのですよ。実は前日まで妻とテント泊で仙丈ヶ岳に登って帰って来たばかり。少々のつまみで酒を飲んで寝てしまい、早朝からパンを一つ食べただけでエリサさんと飲み食いを忘れて登っていたのです。
当日の様子は当ブログには書いていませんが、Facebookの山巡ページに投稿をしていたので以下に引用しておきます。



まあそんなわけで、下部フェースから上部につなげるラインが残された課題となっていたのですが。

でもここを登りなおすのはさすがに「軽いクライミング」とはならないので、下部フェースはいったん置いておいて、中段以降を登ってみようということになりました。

馬越峠から天狗山山頂を越え、男山方面に少しあるいたところから樹林を下りて中段岩壁に向かう。
中段岩壁は傾斜強めのフェースなので、その左スカイラインあたりが軽めの楽しいクライミングになるのではないかという目論見です。
樹林をおりていくとリッジの末端に出たので、これが中段岩壁左稜だと思い取付きました。(実は間違ってた)

岩稜末端に出たのでここから取付く。

お!いいぞ!思い描いていたようなやさしく楽しいクライミング!と思いつつ登っていくと、岩稜は1ピッチだけで樹林の尾根になってしまいました。
ふと右を見るともう一本の岩稜があります。
あれ?そういえば中段岩壁の左稜だったら右側がフェースになっていて樹林のわけないよな~。

しょうがないので、右の樹林をクライムダウンして正しい中段岩壁左稜の取付きへ。

中段岩壁の左稜取付き。
下部フェースによく似た、天狗山特有の傾斜が強い逆相岩壁です。

左稜そのものは樹林がかぶさっていて歩けてしまいそうなので、あえてこの逆相フェースに取付いてみます。
カムを効かせられるような節理が乏しいので、ハーケンを打ちながらの厳し目フリークライミングです。

結構厳しいクライミングとなり、壁の半ばでギアが切れてしまいました。(なんか最近このパターン多いな~。クライミングをなめすぎて装備が足りなくなるのは老化現象でしょうか。)

壁内でトラバースをしてしまったので、若干怖いんですが、最後のハーケンに捨て縄をかけてクライムダウンで取付き付近まで戻ります。
途中で打ったハーケンも回収。

左の樹林には突っ込まないが、難しすぎないという微妙なラインを登りなおして1ピッチ終了。こちらもこれで樹林の尾根になります。

フォローする真帆ちゃん。

あとは樹林を歩いて行けそうなんですが、さっき登ろうとしていたフェースで楽しいフリークライミングができそうということで、真帆ちゃんはここからロープダウンしてトップロープで登ってみることになりました。
ついでに先ほどのハーケンと捨て縄も回収してもらいます。

最後はかぶってきて、5.10bくらいかな?とか言いながら登ってくる真帆ちゃん。ハンガーボルトでも打てば楽しいフリールートになりそうだそうで。

トップロープでフリークライミングを楽しむ。
樹林の尾根を辿っていくと、上段岩壁部分も樹林歩きで終わって、山頂直下の天狗山ダイレクトの終了点付近に飛び出します。
今回の足跡を描きいれてみました。

佐久・赤顔山南壁左稜

その辺の崖(壁?)です。
川上村の男山、天狗山、五郎山と岩峰でのクライミングも大方(自分に登れそうなラインは)片付きはじめて、ついにその辺の崖に手を出そうかという段階・・・・なのかな?

まあ気にはなっていたわけです。
天狗山の手前に割と印象的な赤く脆そうな崖があって、それなりに目立っていたんで。
ナナーズ川上村店あたりからは結構迫力あるように見えるし。
ちなみにナナーズ川上村店では、つよつよクライマーが二人もレジ打ってたりするし(2024年6月現在)、その敷地内にはルーフロックというクライミングショップがあって、代表の北平さんはじめすごいクライマーだらけ。
その周辺でも赤顔山(あかづらやま)の岩場はそれなりに注目?はされていたみたい。(ルートがあるという未確認情報もあり)

それともう一つ。
悲運の皇子、重仁親王が南相木村から臨幸峠を越えて川上村の御所平に居を構えていたという説がありまして。
その説によると、白馬に乗って臨幸峠を越えてきた重仁親王の姿がご神体として祀られたのが、赤顔山の下(一角にある内裏山というのが本体?)御霊社であるらしい。


川上村村誌によるとそのような記載があるらしい(私は未確認)が、今では産泰神社として藪と墓場の裏に隠されたかのように祀られております。

そして臨幸峠からつづく稜線上にあるのが天狗山、馬越峠、そしてなんと御陵山(おみはかやま)。御霊神社(産泰神社)の上が内裏山、そして赤顔山。なんか悲運の皇子との関連性を疑ってしまうような地名が並んでおりますな~。ちょっとそんな興味というか、やじうま目線もあって赤顔山にはなんとなく気が引かれておりました。

さて6月20日。
どこか山行きたいな~と山巡唯一の若手部員真帆ちゃんに都合を聞くと、「午後半休ならとれますけど・・・」って。
私は私でちょっといろいろ疲れ気味だったりするし、長い山歩きよりは軽いクライミングがいいなと思い、「じゃあ気になっていた赤顔山に手を出すか!」となった次第。
先日南稜に行った際駐車した大深山遺跡の駐車場から歩けば近そうだし、壁も大きくはない。半日あれば十分だろう。

大深山遺跡見学者用の駐車場からスタート。

すぐに大深山遺跡。
縄文中期の遺跡で全国でもまれにみる大型遺跡で、竪穴式住居が52戸も見つかったそうだ。

大深山遺跡を越えてさらに林道を使って山腹をトラバースしていくと、赤顔山の南面岩壁が見えてくる。
思っていたより崖の規模が大きいかも。
真帆ちゃんは「これは崖じゃなくて、列記とした壁です!」と主張。

いずれにせよ悪そうな岩場だな。

よく観察すると左によるほど傾斜は落ちて行き、登れるかもという感じ。右側は赤くて脆そうな岩でかなりオーバーハングしている。

登るのははじめから想定していた左の壁ぎわライン。
木登りに終わるのか、少しは岩登りができるのか。
少なくとも右側の稜よりは岩が多く露出して見える。

林道が終わったところから左稜の末端を目指して樹林をトラバースしていく。

それとすぐにわかる左稜の尾根に出て、少し登るといかにも取付き!という岩場となる。難しくはなさそうだが一応ロープをつけてスタート。

じゃんけんに勝った赤沼からリード。
お!なんか楽しいぞ!
岩は硬いしフリクションもよし。
絵に描いたような楽しい3級岩稜コースではないか~!

「楽しいではないですか~!」
と登ってくる真帆ちゃん。

そのまま真帆ちゃんが2P目に突入するが、かなり傾斜も落ちてほぼ歩き。

一応ビレイはしてます的な?

ここからはロープはずして行こうか~と、雑に巻いたロープを肩に歩き出す。木の根っこつかんで、時折出てくる露岩のクライミング。松の葉っぱが滑って少し怖い。

岩登りとは言えないが、いい感じの尾根歩き。でも右側は岩壁が切れ落ちていて大迫力。

尾根の右側は迫力の岩壁が展開。
右稜はなんだか木に覆われてそうだな。

登るとしたらいくらか傾斜の落ちる左よりですな。天狗山と同じ岩質だとしたら逆相で結構苦労するかも。

時折ロープを出すけど、いらないレベルでした。

こんな感じの岩稜をすたすたと登っていくので、身体にはこたえるが、どんどんと高度を稼いでいけます。

尾根の最後がかぶった岩場になっている。

一応ロープをつけて登っていくとまもなく終了点。

なんだか絵に描いたような終了点。
この尾根、岩登りっぽくはないんだけど、最初と最後がクライミングルートっぽいのが笑える・・・というか、とても楽しい気分になるところですな。

というわけで、自撮りのツーショット。

岩場の終了点から赤顔山までは踏み跡らしきものもあり、軽く赤顔山山頂を往復。

赤顔山山頂手前には少し岩登りっぽくなるポイントもある。

赤顔山山頂の標識は文字が消えているものの、その上に小さく山名が書いてあった。北杜市のパン屋エルベテルのウィンナーロールとツーショット。

左稜を登ったから、今度は右稜を下降してみようと、岩場の終了点あたりまで戻ってくる。下には川上村が広がる。ナナーズがよく見えてるね。

川上村のナナーズを望遠撮影。ルーフロックもわかるね。

右稜は案の定岩場とは言えず、樹林ごしに歩いておりていく。少しおりるとさっき登って来た左稜が見える。

右稜の急斜面をおりていくと傾斜の緩い笹薮となって、登って来た林道に出る。

赤顔山南面岩壁左稜を登って、右稜を下りたわけ。こちらがトラックレコード。

11:20am 大深山遺跡
12:15pm 左稜取付き
13:00pm 左稜終了点
13:40pm 赤顔山山頂
14:20pm 右稜下降終了
14:40pm 大深山遺跡駐車場

半日かからないかる~い岩稜クライミング&ハイキングでした。

佐久・天狗山左壁「たまひよルート」開拓

たまひよルート開拓と言ったものの、岩登り要素よりは左壁の弱点を辿ってとりあえず左壁をトレースしたというところ。壁の正面突破はせず、田丸さんが日和ってルートどりしたから「たまひよルート」。

今回のパートナーはYCC (東京ヤングクライマーズクラブ)の家口さんと田丸さん。いつものでこぼこ酒飲みコンビ。

左壁は天狗山南面の岩場群の左端に広がるスラブ壁。

天狗山南面岩壁偵察時の写真
左壁の中心付近を田丸さんリードで離陸

一部垂直部の核心があり、ハーケンを叩き込んで突入するがかなり苦戦気味。節理の甘い岩壁なので灌木があてにならない。なんどか灌木をつかんで身体を上げようとした挙句、灌木が抜けて滑落。5~6メートル落ちてハーケンで停止。
幸い怪我もなかった様子だが、田丸さんこれでちと意地になったか?家口さんと私でルート変更を主張するが、もう一度トライするという
そして同じ場所で2度目の滑落。
「いや~あと3センチで登れたんだ!もう一度!」とか言う田丸さんを問答無用で戻って来させて、ルート変更。

左壁の岩壁基部に沿って右上。ちょっとしたテラスまで灌木、草付き帯をたどっていくと大きなテラス。というかすでにこの時点で壁全体の半分くらいまでの高さに達しているが・・・・
ここから再度、田丸さんリードで取付き。
今度は打って変わって慎重なルート選択で、バンドを2ピッチ左上していき、左壁左稜上に近いテラスに到達。
そして簡単なリッジを登って行くと終了点。
左壁の(おそらくは)初トレースとはなったものの、岩登り要素としては「巻き」に近いかな。

というわけで、田丸さんが日和って登った「たまひよルート」。
でもまあこれで左壁の様子がわかった。左壁はどこを登っても結構難しそうだな。

金峰山・千代の吹上第一岩稜・岩壁観光ルート開拓

千代の吹上第4岩稜を登った時に遠望した、第一岩稜を登ってきた。

この左スカイラインが第一岩稜。
易しそうに見える。もしかしたら歩きになるかな?
でも一番下部が切れ落ちているので、少しはクライミング要素もありそう。
難しすぎない岩遊びを目指している自分にとって、理想のお遊びフィールドに見えるぞ。

パートナーは斉藤真帆ちゃん。

自転車で中南米を旅した(縦断?)際に見た素敵な岩峰(クライミング対象としては世界最高クラスにやばいやつ)に登りたくなって、そのために今はアルパインクライミング修業中らしい。
故郷を離れ、山に囲まれた北杜市で稼ぎながら、ひとりでネパールヒマラヤの山を登って、北杜市に戻ってきたばかり。すぐにまた、パキスタンあたりに登山に行くらしい。

平日に休みが一致したので、日帰りでつきあってもらうことになった。

第4岩稜の時は大弛峠からアプローチしたが、早朝の集合には北杜市からのアクセスが長すぎる。今回は歩きは少し長いが北杜市からは近い瑞牆山荘スタートのアプローチ。

岩場に向けて歩く歩く。長い道のり約3時間半で金峰山山頂手前。
やっと第一岩稜が見えてきた。

第一岩稜の金峰山寄りのガレと草付きのルンゼを歩いておりる。

白ザレが出たところで、これぞ取付き!という岩稜の末端となる。

1P目。上に見えている急傾斜のフェースめがけてガレ交じりの岩を登る。難しくはないがルートファインディングは慎重に行く必要あり。

1P目終了点

2P目から岩登りらしくなってくる。
とりあえず真上の垂直部分を目指すが、真正面は取付くしまなし。
右側、ハングとスラブの出会う凹角あたりを登る。

見た目はぐずぐずの草付き壁だが、意外にちゃんとした岩登り。
ムーブ的にも5級程度のポイントがいくつか出てきて、フェースのマントリング、内面登攀技術なども使いながらの、岩登りが楽しめるピッチだった。

2P目終了点

さてここで下部フェースの垂直部分は若干巻いた感じ。
この辺で稜線上に戻ろう。

そういうわけで、3P目は稜線に向かって側壁にあたるフェースを直上。
固めの花崗岩のフェースでカムも決まるし、技術的にもここが核心。
小さなスタンスに足をこすりつけてのトラバースあり、フィンガークラックありで、かなり楽しめた。

3P目終了点付近を岩稜に抜けてくる真帆ちゃんの図

3P目で岩稜上に出ると眼前に第一岩稜。その左に広がる第一フェースには古いルートがあるらしい。さらに奥には第2岩稜から第4岩稜まで、千代の吹上の全景が広がる。

左下に見える緩やかなスラブ状の岩稜がこの間登った第4岩稜のようだ。

真ん中の顕著なリッジが第2岩稜。今度はこれかな?このリッジラインは登られているらしい。

4P目は歩き以上、クライミング未満なリッジ。でもところどころロープの欲しくなるようなフェースが出てくるので、ロープを結んだまま進む。
大きく広がる岩壁群を眺めながらの楽しい岩稜クライミング。

5P目。第一フェースの右側ラインをそのまま登っていく。

5P目終了点から見下ろす。

まもなく5P目終了。

金峰山の稜線上の第一岩稜終了点はもう目と鼻の先。ここでちょっともぐもぐタイム。いやなんか腹減ってるの忘れて登ってたわ。

さあこれが最終ピッチになるか。真帆ちゃんがリード。

「ロープが足りたらトップアウトしてしまっていいからね~」と見守る赤沼。

というわけで感動のトップアウト。

赤沼も到着。

全6ピッチ、200メートル弱?のクライミングで、登攀時間は約2時間。
下部はルートファインディングをしながら、見た目よりはかなりクライミングらしいクライミングができる。
上部は千代の吹上の全景に圧倒されながらの、高度感もあって気持ちのよい、そして難しくない岩稜クライミング。
かなりよいルートです。ぜひ登ってみてほしいルートとなった。

さて第一岩稜だが、登山大系には第一岩稜をおりて第一フェースに取付いたという記載はあるが、実際現地を見ると少し左のルンゼ寄りを下りたほうがはるかに合理的。たぶん第一岩稜自体はおりてないんじゃないだろうか。(おりるなら一部は懸垂になる。だったら手っ取り早く草付きルンゼおりるよね~)
そして下部はまず登られてないでしょう。
そういうわけで、少なくとも下部は初トレース。おそらく上部も。
なので一応ルート名なんかもつけちゃおう~。
命名は真帆ちゃんにまかせた。

真剣に考え中。
結果、ルート名「千代の吹上第一岩稜、岩壁観光ルート」
となりました。

メモ:

登攀日:2023年7月20日
使用ギア:50mダブルロープ1本、カム1.5セット。ハーケン、ボルトは使用せず。
1P目:3級35m
2P目:5級30m
3P目:6級30m
4P目: 3級30m
5P目:3級45m
6P目:4級35m
瑞牆山荘6:08am – 第一岩稜終了点となるピーク付近9:10am – 第一岩稜取付き10:00am – 第一岩稜終了点12:10pm – 瑞牆山荘15:00pm

佐久・天狗山「なんやこれルート」

先週、偵察してきた天狗山の岩壁に、一本のラインを引いてきた。
ほかの山行が流れてたまたま偵察に同行することになった、銀嶺会の宮田組長。すっかりこの岩壁に魅せられて(?)、本当は谷川岳あたりでクライミングのはずが、パートナーを巻き込んでの参戦。巻き込まれたのはアンジー(ばりばりの関西系日本人)。彼女とは一度宴会を共にしている。いわゆる人たらし宮田人脈のひとり。いつもニコニコ明るく爽やか笑顔なアルパインクライマー。銀嶺会にも最近入ったらしい。

さらにさらに、八ヶ岳のわが家のご近所さんたち、エリサさんと、バンさんチームが加わって2パーティーでの山行となった。このふたりは山が好きすぎてこの地に来た移住組。バンさんとは今回が初対面。ふたりとも人たらしの大御所、寺沢ネコ人脈でもある。

左から宮田、赤沼、アンジー、バン、エリサ(敬称略)。
登山口でファイトコール・・・のまね。
さあスタート。

エリサ、バンチームはボルト、ハーケン等、行き詰ったときの逃亡キットをもっていないので、天狗山ダイレクトに行くと言っていたが、「まあ様子見て登れそうなところがあれば登ってしまえば?」とそそのかし、下部岩壁まで同行。
登山道で山頂を越え、少しおりたところから南面に下りて行く。ここは偵察の成果でまあまあスムースに下部岩壁に。
あらためて見ると下部岩壁は灌木も多く、すっきりしない印象。
下部岩壁の左稜、または左壁あたりのすっきりしたところを登るか~と岩場の基部に沿って左にトラバース。
でも、昨日の雨のせいかあんまり印象よくないんだよな。泥に足をとられて赤沼は二回もこけるし。

比較的岩の露出の多そうなところからスタートとする。あとでトラックログを見たらどうやら左壁の左稜あたりに取付いていたようだ。

一方エリサ、バンチームはここから引き返し下部岩壁を登ってみることに。

今回のトラックレコード。
天狗山南面を登ったつもりが、どこも傾斜きつくどろどろで、左に逃げて行った結果、左壁の左稜あたりから取付き、男山方面の尾根(登山道あるところ)の側壁あたりを登ったらしい。

岩壁基部をうろちょろ。昨日の雨でじと~っとしていて、よく滑る。さわやかな壁を求めてどんどん左へトラバース。

もうここ登るか!と離陸。壁はじとっと濡れてて、岩の組成も思っていたより脆い。泥に足をこすりつけながら高度を稼ぐ。
左上の立ち木のテラスを目指すのだ。
1P目終了点でビレイ中。
1P目終了点の宮田さん

この上は垂直悪絶フェース。一部人工を交えて垂直部を越えれば行けないこともないが、かなりのハードワークになるのはたしか。難しすぎないルート開拓を標榜するわれわれ向きではないな。

1P目終了点から真上の悪絶フェースを見上げてなぜか笑う二人

悪絶フェースは避けて左にトラバース。
左壁をさらにまわりこんだあたりでフェースに取付く。

2P目。組成が脆く外傾。昨日の雨で足場もどろどろ。

実はこのフェースの左側に灌木のルンゼがあり、そこに逃げれば苦労はしても安全に登れるのだが、ここまででも結構逃げのルートとなっているので、気持ちを奮い起こしてフェース部分を行く。
小さめのホールドの連なりを探しながら、右へ左へと弱点を拾ってルートを伸ばす。カムは小さいのがたまに使える程度。あとは気休めの小灌木とハーケン。ハーケンは2本打って、1本は回収できず残置。
技術的にはこのピッチが最難だった。

2P目をフォローしてくるアンジー。右に見えるスカイラインが左壁左稜かと思われる。

ところで、このピッチのリード中、苦しい態勢でハーケンを打っているあたりでエリサ、バンチームから電話がかかってきた。もちろん出られず2P目終了点から折り返すと、下部岩壁にトライしたが、ボルト、ハーケンなしでは支点がうまくとれず、下降して天狗山ダイレクトに向かったとのこと。あとで聞いたら天狗山ダイレクトから、われわれのハーケンを打つ音が聞こえたそうな。

さて最終となる3P目はこの壁。この写真はリードが終わったあと、アンジーをビレイする宮田さんを少し離れた岩峰上から撮影したもの。

二つのフェースにはさまれたルンゼの灌木で支点をとりつつ、右の壁を登ったり、左の壁を登ったり、ルンゼ内で垂直の木登りをしたり。

終了点で宮田さんを迎える。終了点で登山道に合流する。

宮田さんにとってはこういうクライミングになることは想定内。

アンジーも間もなく終了点

実はこのピッチをリードしながら、こんな泥臭いクライミングになってしまって、開拓クライミングがはじめてのアンジーに呆れられてしまうかな~と心配していたのだが・・・・

アンジーは「なんやこれ?なんやこれ?」と心のなかで呟きながらも、自然と笑いがこみあげてきて、幸せに登ってきたのだそうな。

というわけで、このルートは「なんやこれルート」となった次第。

ルートは合計3P。壁のコンディションが悪かったのもあって、逃げて逃げて、想定よりかなり左のほうを登ることになった。

使ったのはダブルロープ2本、カム小さめ数回、ハーケン2枚(1枚残置)、シュリンゲ多め

2023年6月10日のクライミング
取付き9時半~終了点12時半

山頂をもう一度越えて登山口へ。
そしてまだ明るい午後4時から宴会スタート。途中からまほちゃんも合流。

まほちゃんは山に近いこの地で働き、単身ネパールに行って山に登り、帰ってきたばかり。またしばらくはご近所で働くそうな。

さておじさんは10時半でダウン・・・したものの宴会時間はクライミングより長いね。そして女子チームは0時過ぎまで女子トークをしていたそうで。元気だね。

五郎山、2本の新ルート

五郎山に2本の新ルートを追加してきた。
2020年の11月に五郎山ダイレクトという、五郎山では最初のクライミングルートを作って以来、2年半ほどで派生ルートも含めると7本のラインができたことになる。
これで「難しすぎず楽しく登れそうなライン」はほぼ登り終え、われわれの五郎山通いもいったん卒業ということとなった。

パートナーは五郎山ダイレクトで初めてロープを結んだ長友さん。
仕事が忙しくお疲れモードで、土曜はお休み。日曜だけで2本を登った。

マキヨセ本峰リッジ

右側スカイラインがマキヨセ本峰リッジ

マキヨセ主峰の南面に落ち込む顕著なリッジで、この写真は登山道を西側から登ってマキヨセの稜線に出たあたりからのもの。登ったのはスカイラインの少し向こう側。

マキヨセに向かう登山道が、マキヨセの南面岩壁にあたったところから岩壁基部を右にトラバース。
100メートル程度(?)で顕著な本峰リッジの取付き。

マキヨセ南面の岩壁基部をトラバースすると、すぐにそれとわかるマキヨセ本峰リッジの下へ。上に見えるピラミッド状のピークが特徴。

リッジを少し回り込んだあたりを取付きとする。

渾身のじゃんけんに勝った赤沼リードで離陸。

正面は迫力ある岩壁だが、右から巻き込んでいくと若干組成の弱い感じはあるものの、3級程度の簡単なクライミングであっさりと特徴的なピラミッド状のピークに到達。それにしても素敵な景色、素敵なシチュエーション、快適で難しくないクライミングに幸せ気分が盛り上がる。癒し系クライミングの極みですな。

ピラミッド状ピークでビレイする赤沼

良いとこどりしてゴメンね。長友さん。

ここからは数メートルの簡単な岩稜で樹林に飛び込んで、すぐにマキヨセ主峰。思ったより簡単なクライミングでした。
1P目40m 3級 2P目20m 2級といったところ。

ルート取付き、5月21日9時15分、終了10時20分。約1時間の軽いクライミングでした。

五郎山南壁トラバース満喫ルート開拓

さて。西側からの見た目で結構大変なクライミングを想定していたものの、あっさり1時間のクライミングで終わってしまったマキヨセ本峰リッジ。もう1本登ってしまおう。
この地域(五郎山、マキヨセ一帯の岩場)で、「必然性があって難しすぎないライン」といえばあと一つ。
五郎山南壁のダイレクトどまんなかルートの間の大きなフェースだ。

五郎山ダイレクトと南壁どまんなかルートの間には、気持ちのよさげなフェースが展開しているが・・・・
下部が陰惨で急傾斜の垂壁帯。苔と水滴と闘いながらかぶり気味フェースでのクライミングをしたいか?

それはもう特殊な好みの人たちにまかせるとして、癒し系クライミング愛好家のわれわれのターゲットからは完全にはずれますな。

ちなみにどまんなかルートの右側にも素敵なフェースがあるように見えますが、上図のお絵描きが下手なのもありまして、このへんはあっさり1Pで登れそうなしょぼい系フェースなんです。まあこのあたりは将来暇なときに遊びにきてもいいんですが、当面のターゲットからは除外。

下部の垂壁帯を避けて、どまんなかルートの途中から左にトラバースして、上部だけを登ろうという作戦で、どまんなかルートからスタート。
長友さんリードで離陸。

どまんなかルート1P目終了点となるハング下テラスまでロープを伸ばす。

2P目は赤沼リードでいよいよ左のフェースに向かってトラバース。カンテの向こう側はどうなっていることやら。

カンテを廻り込んだ先はビレー点からは見えない。カンテを廻るあたりがホールドスタンスに乏しい、露出感のあるポイント。

カンテの先は上に見える終了点のテラスに向かってフェースを左上していく。

終了点となる広く気持ちのよいテラスに長友さんも到着。

ダイレクトルートの終了点でもある気持ちのよいテラスでしばしまったり。

さあこれで五郎山でのクライミングも一段落。山頂でも踏んでおりるか~というところだったが・・・・長友さん、今のピッチがお気に入りのようで、今度はリードで登りたいと。

てなわけで懸垂下降でおりて、また登って、今度は赤沼フォローで再度テラスに到着。

どまんなかルートの派生ながら、とても気持ちのよいトラバースを楽しむことのできるラインなので、トラバース満喫ルートと名付けた。

1P 20m4級(どまんなかルート) 2P 40m 5級(オリジナルのトラバース&テラスにあがるライン)

八ヶ岳・東ギボシ西壁ルンゼ偵察行

2015年の冬、西岳から遠望したギボシの西壁。
そのどまんなかに食い込む真っ黒なルンゼがターゲット。
登攀記録のないこの壁にまずは無雪期にルートを一本開拓し、山巡ルートとした。無雪期のルンゼ自体はあまりにも脆く、最初の垂直部を越えたあと左のリッジに移り、これを登った。最初の垂直部以降、ルンゼは急峻なガレ状に見えた。

垂直部が凍結するか、雪で埋まった冬期なら登れるかもしれない。
条件が揃えば簡単に登れるし、条件が悪ければ登攀不可能。そのどちらかだろうと予想。
東ギボシ山頂の手前稜線から歩いておりれば簡単にアプローチできるが、どうせ登れるかどうかわからないなら、立場川の支流ノロシバ沢を詰めて下から行ってみたい。

それにしてもノロシバ沢って情報少ないね~。
クライマーの間ではわりとよく知られた「バリエーションしましょ」というブログに、冬に登った記録がでていたが、12月で雪が少なく、凍結も甘く、苦労して稜線に抜けた様子。ちなみにブログ主さん、この登攀をした直後に甲斐駒で亡くなってしまったらしく、許可のとりようもなく勝手にリンク張ってしまいました・・・ご冥福をお祈りします。

今回の相棒はYCC(ヤングクライマーズクラブ)の家口さんと、田丸さん。山も酒もパワフルな二人。決して若くはないが・・・・
金曜夜、家口さんの車で北杜市のわが家に移動し、深夜の宴会。
翌早朝まだ暗い船山十字路の先まで車で移動。

いや、水流れてます。
ここのところ大きな寒波もきておらず、凍結状態が心配だったが、この時点であきらめモード。
まあ旭小屋まで行って、状態見て、だめそうなら立場岳でも往復してくるか・・・・と出発。

水の流れる立場川を渡渉して対岸に渡ると、林道があり、踏み跡はないものの、旭小屋あたりまでこれを辿ることができる。

立場川本谷をつめる。踏み跡はまったくなし。
足首からひざ下程度の軽いラッセルだが、水流部は5cm前後くらいの凍結状態で、下を水が流れているところも多い。
ときおり踏み抜いてドボンするし、歩きづらいことこのうえない。

唯一、堰堤にできた氷瀑でアイスクライミングのまね事。氷が硬すぎて結構怖い。

氷の踏み抜きドボン、要注意!

何度かドボンして、濡れた足回りがあっという間に凍り付きながらも意に介さず、パワフルなラッセルで先行してくれる家口さん。いや~助かるわ~。
ちなみにドボン王者は家口さん。次が田丸さん。赤沼はドボンなし。

どうやって越えよう・・・怖いこわい。

快晴無風で気温は低め。マイナス15度くらいかと思われる。
年齢には勝てず寒さ耐性がかなり落ちてます。
若いころはフリースの上に、ダウンなんか着て歩いてたら大汗かいてたもんだけどな~。

ノロシバ沢に入ると水流が減って、全面凍結。安心して歩けるようになった。

この日は日帰りで行けるところまで行って、下山の時間を考えて11時になったら引き返すということにしていた。
この時間内で、あわよくばギボシ西壁ルンゼを登ってしまおうかなんて考えていたのだが、まったくの計算違い。11時時点でノロシバ沢の4分の1程度くらいまでしか行けず、ここでタイムリミット。
残念ながらギボシの全景も見られず引き返すことに。

でもまあ偵察行としては、だいぶ雰囲気がわかったのでOKとしよう。

  • 完全凍結していないとアプローチがかなり厄介。寒波のきたあとを狙うべし。
  • 雪すくなく中途半端は歩きにくいのなんの。あったりまえか~。
  • 雪多すぎるとやっぱつらいよね。あったりまえ。
  • 雪が締まってないとつらいよね。あったりまえ~。
  • つーことは、やっぱ3月あたりの冷え込みのあとを狙うのがいいかね。まあ最初からそうだとは思ってたけどさ。
  • 立場川もノロシバ沢も、とりあえず到達した範囲では氷瀑らしい氷瀑はなし。上部に少しはあるらしいが、技術的問題はなさそう。
  • アプローチは思ったよりだいぶ長い。日帰りで行こうなんて考えが相当甘かったらしい。ノロシバ沢出会いあたりでテント張って、2日行程くらいは必要と思われる。
  • ギボシあたりを遠望した感じでは雪があんまりついてない。これもやはり3月あたりの雪がそこそこあって、締まった時期がよしとの結論になりますな。
水流の横を溜息つきながら下山する田丸さん。動画です。音が出ます。
今回のトラックレコード

当然の打ち上げ。下山は案外早く、午後3時~5時で1次会。一回昼寝して午後8時~午前2時前に至る2次会。3人で2升をコンプリートしました。わたしゃ酔っぱらって、iPhoneをストーブで焼いちゃった。ケースが焦げただけだけど・・・・

佐久・五郎山南壁「どまんなかルート」開拓

当時中学生だった石鍋礼くんと知り合ったのは30年以上も前の話。
私はほとんど忘れてしまっているが、礼くんの鮮明な記憶では、その中学生を越沢バットレスだの松木沢のアイスクライミングだの、やばいところばかり連れまわしていたらしい。覚えているのは礼くんの実家の天ぷら屋さんで「息子が世話になってます。」とご馳走になったおいしい天ぷらのことだけ・・・できた親ですな。
礼くんはその後フリークライミング修業をして、海外で高難度フリールートを落とすまでになったが、仕事やら家庭やらでしばらくのブランク。そして3年ほどまえに一念発起?して1年間のオフ(キャリアブレイクというらしい)をとってクライミングしまくり、ついにはヨセミテの大岩壁El Capitanまで登ってきてしまったんだと。やるね。

さて私にとって残された課題の一つ、上高地帝国ホテルの裏手に見えている霞沢岳八右衛門沢上流の岩壁群を登ろうというお誘いに、礼くんは二つ返事でつきあってくれることとなった。礼くんはついこの間、穂高の滝谷でクライミングをしてきたばかりで、気持ちが穂高モードになっていたらしい。

準備万端、天気も比較的安定していることを見極めて出発。ところがバスに乗って上高地帝国ホテル前停留所をおりてすぐに、まさかの雨が降り出した。
携帯のレーダーアプリで確認するとどうやらピンポイントでここだけが雨の様子。
「降り出すならバス乗るまえにしてくれよ~」とか「なんでここだけ」とか、ぶつくさ言いながらも、スポット的に天気の悪いエリアに長居は無用と転進を決定。
山でのクライミング用の細いロープ(ダブルロープという)しか持っていないので、小川山などでのフリークライミングはしたくない。
そこで私にとっては7回目となる五郎山に新ルートを付け加えに行くこととなった。どれだけ五郎山好きなの?って声がどこからか聞こえてきそうなんだけど無視無視。

閑話休題。

朝9時台にはいつもの林道終点に駐車。
歩きなれた急登のアプローチを行き、11時には五郎山南壁の取付きへ。

五郎山南壁。左のスカイラインあたりが初登攀ルートの「五郎山ダイレクト」。赤線が今回登った「どまんなかルート」

マキヨセ岩峰と五郎山の鞍部(以下、五郎山コル)から五郎山にむかって左におりて行くと、この壁にあっては長めのラインがとれる五郎山ダイレクトの取付き。五郎山コルからそこまでは下部がオーバーハングしたフェースとなっている。
五郎山コルの稜線と五郎山南壁が接するあたりが、五郎山南壁のほぼ中央部分となる。
つまり南壁の中央部分から左のスカイラインの間は、登れば傾斜の強いフェースから始まる難しいルートとなる。
より美しいラインで、適度に易しく登りたい私としては、南壁の左フェースは当面対象外。
五郎山コルと南壁の接点から右にあたる右フェースはスケールは小さめ。しかしどこもそれほど傾斜がきつくはなく、楽しく登れそうなラインがいくつかある。

どまんなかルートの取付き

マキヨセ、五郎山のコルと南壁の接点を2~3メートル右に行ったあたりの緩めのフェースを取付きとする。ホールド多めで快適なフェース。最低限の支点だけとりながら快適にロープを伸ばすと、上部をハングにふさがれたテラス。ここでピッチを切る。1ピッチで抜けられそうな壁だが、60メートルのダブルロープ1本を半分にして30メートルダブル状態にして登っているので、早めにピッチを切った。ここで約20メートル。

頭上のハング下テラスまでが第一ピッチ(20m)
2ピッチ目を登りだす礼くん

2ピッチ目はハング右側のラインを登る。薄被りながらホールドは比較的豊富。小ハングのちょっとした切れ目をついてここを越える。
そのままフェース直上で五郎山ダイレクトの終了点にもなった山頂左下(西)に広がる大きなテラスの右端に出た。

小ハングを越えていく。
3ピッチ目の登りだし。

このテラスからは樹林を山頂まで行けることはわかっているのだが、すぐ横のフェースが岩茸に覆われてはいるものの登れそう。
少しでも長いルートにするか、とここを登ると、山頂に向かって岩のリッジが伸びているので、そのままリッジ上を登る。
若干ブッシュがあったりして鬱陶しいものの、きれいなリッジで気持ちよく高度をあげると山頂の一角にいきなり飛び出した。

3ピッチ目のフェース上から山頂に向かうリッジに移る。
3ピッチ目はじめのフェースをフォローする礼くん。
山頂に伸びるリッジ。
うしろに見えているのがマキヨセP2ルート上部。


さて山頂到着が12時20分くらい。易しいルートとはいえ1時間半弱で終わってしまった。
踏みあとを五郎山コルまで戻ったがまだ時間もあるので、マキヨセピークへの急峻な踏みあとを歩くくらいなら、マキヨセP2ルートの最終ピッチでも登って眺めのよいマキヨセ岩稜(踏みあとは北側斜面にある)を辿って帰ろうということになった。
このマキヨセP2最終ピッチの取付きまでは五郎山コルから樹林を通って歩いて行かれるのだ。
初登ルートを登るつもりだったが、その左にもう少し長いラインのとれそうなフェースがあり、そちらにルート変更。

マキヨセP2最終ピッチの左ルート。

初登ルートに比べて少し傾斜の強めのフェースを直上するルートを礼くんが選択。

空に向かってぐいぐい登ると尖ったピークに至る気持ちのよいピッチ。
これでこの日のクライミングはおしまい。
何度来ても気持ちのよいピーク。

さて帰りの車中で、ルートに一応名前つけておかないとと二人で検討。
位置的には五郎山南壁中央フェースとでもなるんだが、面白みもないね。
初登ルートの五郎山ダイレクトより、さらに山頂にまっすぐ抜けるルートだから「五郎山もっとダイレクトルート」とか。
いろいろ話し合った結果、あまり悪ふざけもしすぎず、中央ルートとかいうかわりに「南壁どまんなかルート」で行きましょうとなったわけ。

まああの南壁の正面フェースにルートが一本はあっていいし、これで易しめルートの開拓もほぼ一段落かな~という次第。

登ったのは2021年9月11日


五郎山南壁どまんなかルート
1P目 五郎山コルと南壁接点あたりのフェースをハング手前の顕著なテラスまで20m 4級
2P目 ハング右のフェースを直上。山頂直下の大きなテラスの右端まで。20m 4級
3P目 テラス右端のさらに右の岩茸で真っ黒なフェースを登って、山頂に至るスカイラインリッジを山頂まで。3級(一部4級)
登攀時間1時間半程度

マキヨセP2ルート最終ピッチの左ルート
マキヨセP2の顕著な岩峰の先端のみを登る。
初登ルートはハング状の壁の右に切れる凹角だが、今回はハング左のフェースを直上。20m 4級

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