アルパインクライミング・沢登り・フリークライミング・地域研究などジャンルを問わず活動する山岳会

南相木グレートトラバース

初夏の彩りに満ちた、美しくなだらかな、そして変化と起伏に富んだ尾根を縦走してきた。数知れない鹿の群れと、熊やいのしし、狸の痕跡に満ちていたし、林業家の手は入っているものの、登山者の訪れた気配はほとんどなかった。

長野県南相木村と南牧村の村界尾根を縦走するこのルートに、勝手ながら「南相木グレートトラバース」という大層な名前を付けた。

直線距離で約7.5kmの比較的なだらかな尾根で、西端近くに武田信玄初陣の地と言われる海ノ口城址(城山)、東端は佐久の盟主男山と天狗山の間に位置する垣越山となる。
この尾根上で国土地理院の地図に名前が載っているのは、城山と大芝峠、合羽坂、それに臨幸峠だけ。あとは垣越山も含めて、各ピークに標高を示す数字が記載されているだけだ。つまりほとんど知られないマイナーな尾根だということ。たいがいのデッパリには登ってヤマレコあたりに記録を残しているあのディープハイカーズも、ここにはほとんど足跡を残していないようだ。

これはパトロールが必要だと、まずは尾根の中央あたりにある臨幸峠というところに登ってみた。

コゴミの親分ソテツに覆われた、急な北斜面を登っていくと峠で植生が明るく変わり、八ヶ岳などの展望も一気にひらけた。なだらかで、美しい尾根だ。

パトロールの際は臨幸峠から東、天狗山の方向に少しだけ縦走してきた。やぶの密生も激しくなく、展望に恵まれた気持ちのよい尾根だった。

天狗山から臨幸峠を通って、海ノ口城址(城山)までつなげたら、楽しいルートとなるだろう。このルートは川上村を一部通り、南牧村と南相木村の村界を辿るものとなる。商業的な開発や有名な山、観光資源に乏しい南相木村に興味を持って、何度か訪れたことから始まった縦走プランなので、「南相木グレートトラバース」と名付け、実行することとした。

メンバーは強くて力持ち、ダンディーI口さんと、ハンターで写真家のワイルド自然児T丸さん。全長13.5kmほどの道なきルートを行くプランなので、植生や岩場の状態次第でどれくらい時間がかかるかわからない。しかし今回は、体力十分、経験十分で頼りがいのあるメンバーがそろったものだ。つまり足引っ張る担当は赤沼ということで。

左から野生動物の敵(あるいは仲間?)T丸さん、おにぎりいくつ持ってあるいてるんですか?なI口さん、それに疲れ気味の赤沼

土曜午後に八ヶ岳南麓の家に集合して、もちろん宴会。T丸さん持参のロースト鹿肉に舌鼓を打ちつつ、酒の空瓶が並ぶ。
それでも翌朝は4時に起きて出発。
I口さんの車を佐久海ノ口駅にデポし、南相木側から赤沼車で馬越峠に向かう・・・が、まさかの雨。プランはいったんあきらめ、南相木唯一の観光資源ともいえる、南相木ダムまでドライブ。一応登山口を確認しておくかと馬越峠に向かってみたがなんと工事で8月まで通行止め。
ここまでやってもまだ6時台。では南相木から臨幸峠を越えて、川上村の御所平に至り居を構えたという悲運の皇子、重仁親王を祀ったと言われる御霊神社にも立ち寄り、さらに川上村側からの馬越峠も偵察しておこうということになった。

御所平の御霊神社。入口は藪に覆われていて場所を見つけるのに苦労した。

さて今度は馬越峠に川上村側から登っていくと、峠まで着いてしまった。
どうやら工事は相木側だけらしい。
時間は8時前。そしていつの間にか雨は止み、晴れ間さえ見えている。


「天狗山でも往復してくるか?」
「だったら臨幸峠まで行って、そこから佐久側におりれば小海線の佐久広瀬駅から電車でI口車まで行けるんでは?」
「いやあ、それだと車道歩きが長いし、たいして所要時間もかわらなそう。なんなら予定ルートで佐久海ノ口まで歩いてしまうか~」

というわけで行動計画は徐々にヒートアップし、予定プランの実行となった。7時50分馬越峠出発!

そもそも出発地点を馬越峠に持ってきたのは、天狗山さえ登ってしまえばあとはだいたい下りの尾根になるからという安易な理由。
本格的な登りは天狗山のみ!ということで、ここはふんばって30分で天狗山山頂着。

天狗山より男山方面を望む。その手前のピークが垣越山。ここから右へ尾根を下りて行くプラン。下ってますな。はは。
垣越山に向かうと左手に川上村の壮大なソーラー発電所が見える。山の自然破壊の主役は今やゴルフ場からソーラー発電に移ったのかな~(怒)


垣越山までは登山道。そこから右の尾根に入っていく。
尾根沿いにある程度は踏み跡があって、案外と歩きやすい尾根。
1か所岩稜がシャクナゲに覆われていて歩きにくい場所があったほかは、ルートを通してさほどの藪もなく、GPSとT丸さんの野生に導かれつつ、人間やら鹿やら熊やらの道を拾って快適に歩くことができた。

馬越峠から約5時間で海ノ口大橋に到着

梅雨入り直前の良い時期で、多彩な色どりの変化を見せる緑に魅せられ、野生動物たちと共有する土や岩の感触に癒されながらの徒歩旅行となった。
地図に山名記載のない山も、行ってみると小さな標識なんかがあって地元で呼ばれている山の名前がわかったりすることが多いものだが、今回はそういう情報はまったくなし。登山が目的で入る人のほとんどいないエリアなのだろう。

予定では以前に登った海ノ口城址(城山)まで行くつもりだったが、その部分はもう歩いたからいいやと日和って、手前の大芝峠からその下を抜ける小沢志なの入トンネルの入口(出口?)を通って佐久海ノ口駅に戻った。国土地理院の地図上は大芝峠、合羽坂、臨幸峠には峠越えの道が記載されているが、すべて廃道に近い状態で踏み跡はほとんど見当たらない。

今度はふたりの健脚に引きずられて、相当早いペースで歩いたので、全行程5時間ほどで終わることができた。普段のペースだったら倍くらいかかったかも。以下のデータはそういうつもりでご参照のほどを。

【データ】
2022年6月5日
馬越峠 7:50am
天狗山 8:20am
1656m峰 9:43am
1683m峰 10:05am
1591m峰 10:30am
臨幸峠 10:40am
1518m峰 11:05am
合羽坂 12:00am
大芝峠 12:13pm
佐久海ノ口駅 12:50pm

野猿返し&宴会

南相木グレートトラバース(エクステンディッド)

2件のコメント

  1. てらさわれいこ

    いや~、おもしろそう=^_^=

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