アルパインクライミング・沢登り・フリークライミング・地域研究などジャンルを問わず活動する山岳会

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金峰山・千代の吹上第一岩稜・岩壁観光ルート開拓

千代の吹上第4岩稜を登った時に遠望した、第一岩稜を登ってきた。

この左スカイラインが第一岩稜。
易しそうに見える。もしかしたら歩きになるかな?
でも一番下部が切れ落ちているので、少しはクライミング要素もありそう。
難しすぎない岩遊びを目指している自分にとって、理想のお遊びフィールドに見えるぞ。

パートナーは斉藤真帆ちゃん。

自転車で中南米を旅した(縦断?)際に見た素敵な岩峰(クライミング対象としては世界最高クラスにやばいやつ)に登りたくなって、そのために今はアルパインクライミング修業中らしい。
故郷を離れ、山に囲まれた北杜市で稼ぎながら、ひとりでネパールヒマラヤの山を登って、北杜市に戻ってきたばかり。すぐにまた、パキスタンあたりに登山に行くらしい。

平日に休みが一致したので、日帰りでつきあってもらうことになった。

第4岩稜の時は大弛峠からアプローチしたが、早朝の集合には北杜市からのアクセスが長すぎる。今回は歩きは少し長いが北杜市からは近い瑞牆山荘スタートのアプローチ。

岩場に向けて歩く歩く。長い道のり約3時間半で金峰山山頂手前。
やっと第一岩稜が見えてきた。

第一岩稜の金峰山寄りのガレと草付きのルンゼを歩いておりる。

白ザレが出たところで、これぞ取付き!という岩稜の末端となる。

1P目。上に見えている急傾斜のフェースめがけてガレ交じりの岩を登る。難しくはないがルートファインディングは慎重に行く必要あり。

1P目終了点

2P目から岩登りらしくなってくる。
とりあえず真上の垂直部分を目指すが、真正面は取付くしまなし。
右側、ハングとスラブの出会う凹角あたりを登る。

見た目はぐずぐずの草付き壁だが、意外にちゃんとした岩登り。
ムーブ的にも5級程度のポイントがいくつか出てきて、フェースのマントリング、内面登攀技術なども使いながらの、岩登りが楽しめるピッチだった。

2P目終了点

さてここで下部フェースの垂直部分は若干巻いた感じ。
この辺で稜線上に戻ろう。

そういうわけで、3P目は稜線に向かって側壁にあたるフェースを直上。
固めの花崗岩のフェースでカムも決まるし、技術的にもここが核心。
小さなスタンスに足をこすりつけてのトラバースあり、フィンガークラックありで、かなり楽しめた。

3P目終了点付近を岩稜に抜けてくる真帆ちゃんの図

3P目で岩稜上に出ると眼前に第一岩稜。その左に広がる第一フェースには古いルートがあるらしい。さらに奥には第2岩稜から第4岩稜まで、千代の吹上の全景が広がる。

左下に見える緩やかなスラブ状の岩稜がこの間登った第4岩稜のようだ。

真ん中の顕著なリッジが第2岩稜。今度はこれかな?このリッジラインは登られているらしい。

4P目は歩き以上、クライミング未満なリッジ。でもところどころロープの欲しくなるようなフェースが出てくるので、ロープを結んだまま進む。
大きく広がる岩壁群を眺めながらの楽しい岩稜クライミング。

5P目。第一フェースの右側ラインをそのまま登っていく。

5P目終了点から見下ろす。

まもなく5P目終了。

金峰山の稜線上の第一岩稜終了点はもう目と鼻の先。ここでちょっともぐもぐタイム。いやなんか腹減ってるの忘れて登ってたわ。

さあこれが最終ピッチになるか。真帆ちゃんがリード。

「ロープが足りたらトップアウトしてしまっていいからね~」と見守る赤沼。

というわけで感動のトップアウト。

赤沼も到着。

全6ピッチ、200メートル弱?のクライミングで、登攀時間は約2時間。
下部はルートファインディングをしながら、見た目よりはかなりクライミングらしいクライミングができる。
上部は千代の吹上の全景に圧倒されながらの、高度感もあって気持ちのよい、そして難しくない岩稜クライミング。
かなりよいルートです。ぜひ登ってみてほしいルートとなった。

さて第一岩稜だが、登山大系には第一岩稜をおりて第一フェースに取付いたという記載はあるが、実際現地を見ると少し左のルンゼ寄りを下りたほうがはるかに合理的。たぶん第一岩稜自体はおりてないんじゃないだろうか。(おりるなら一部は懸垂になる。だったら手っ取り早く草付きルンゼおりるよね~)
そして下部はまず登られてないでしょう。
そういうわけで、少なくとも下部は初トレース。おそらく上部も。
なので一応ルート名なんかもつけちゃおう~。
命名は真帆ちゃんにまかせた。

真剣に考え中。
結果、ルート名「千代の吹上第一岩稜、岩壁観光ルート」
となりました。

メモ:

登攀日:2023年7月20日
使用ギア:50mダブルロープ1本、カム1.5セット。ハーケン、ボルトは使用せず。
1P目:3級35m
2P目:5級30m
3P目:6級30m
4P目: 3級30m
5P目:3級45m
6P目:4級35m
瑞牆山荘6:08am – 第一岩稜終了点となるピーク付近9:10am – 第一岩稜取付き10:00am – 第一岩稜終了点12:10pm – 瑞牆山荘15:00pm

佐久・天狗山「なんやこれルート」

先週、偵察してきた天狗山の岩壁に、一本のラインを引いてきた。
ほかの山行が流れてたまたま偵察に同行することになった、銀嶺会の宮田組長。すっかりこの岩壁に魅せられて(?)、本当は谷川岳あたりでクライミングのはずが、パートナーを巻き込んでの参戦。巻き込まれたのはアンジー(ばりばりの関西系日本人)。彼女とは一度宴会を共にしている。いわゆる人たらし宮田人脈のひとり。いつもニコニコ明るく爽やか笑顔なアルパインクライマー。銀嶺会にも最近入ったらしい。

さらにさらに、八ヶ岳のわが家のご近所さんたち、エリサさんと、バンさんチームが加わって2パーティーでの山行となった。このふたりは山が好きすぎてこの地に来た移住組。バンさんとは今回が初対面。ふたりとも人たらしの大御所、寺沢ネコ人脈でもある。

左から宮田、赤沼、アンジー、バン、エリサ(敬称略)。
登山口でファイトコール・・・のまね。
さあスタート。

エリサ、バンチームはボルト、ハーケン等、行き詰ったときの逃亡キットをもっていないので、天狗山ダイレクトに行くと言っていたが、「まあ様子見て登れそうなところがあれば登ってしまえば?」とそそのかし、下部岩壁まで同行。
登山道で山頂を越え、少しおりたところから南面に下りて行く。ここは偵察の成果でまあまあスムースに下部岩壁に。
あらためて見ると下部岩壁は灌木も多く、すっきりしない印象。
下部岩壁の左稜、または左壁あたりのすっきりしたところを登るか~と岩場の基部に沿って左にトラバース。
でも、昨日の雨のせいかあんまり印象よくないんだよな。泥に足をとられて赤沼は二回もこけるし。

比較的岩の露出の多そうなところからスタートとする。あとでトラックログを見たらどうやら左壁の左稜あたりに取付いていたようだ。

一方エリサ、バンチームはここから引き返し下部岩壁を登ってみることに。

今回のトラックレコード。
天狗山南面を登ったつもりが、どこも傾斜きつくどろどろで、左に逃げて行った結果、左壁の左稜あたりから取付き、男山方面の尾根(登山道あるところ)の側壁あたりを登ったらしい。

岩壁基部をうろちょろ。昨日の雨でじと~っとしていて、よく滑る。さわやかな壁を求めてどんどん左へトラバース。

もうここ登るか!と離陸。壁はじとっと濡れてて、岩の組成も思っていたより脆い。泥に足をこすりつけながら高度を稼ぐ。
左上の立ち木のテラスを目指すのだ。
1P目終了点でビレイ中。
1P目終了点の宮田さん

この上は垂直悪絶フェース。一部人工を交えて垂直部を越えれば行けないこともないが、かなりのハードワークになるのはたしか。難しすぎないルート開拓を標榜するわれわれ向きではないな。

1P目終了点から真上の悪絶フェースを見上げてなぜか笑う二人

悪絶フェースは避けて左にトラバース。
左壁をさらにまわりこんだあたりでフェースに取付く。

2P目。組成が脆く外傾。昨日の雨で足場もどろどろ。

実はこのフェースの左側に灌木のルンゼがあり、そこに逃げれば苦労はしても安全に登れるのだが、ここまででも結構逃げのルートとなっているので、気持ちを奮い起こしてフェース部分を行く。
小さめのホールドの連なりを探しながら、右へ左へと弱点を拾ってルートを伸ばす。カムは小さいのがたまに使える程度。あとは気休めの小灌木とハーケン。ハーケンは2本打って、1本は回収できず残置。
技術的にはこのピッチが最難だった。

2P目をフォローしてくるアンジー。右に見えるスカイラインが左壁左稜かと思われる。

ところで、このピッチのリード中、苦しい態勢でハーケンを打っているあたりでエリサ、バンチームから電話がかかってきた。もちろん出られず2P目終了点から折り返すと、下部岩壁にトライしたが、ボルト、ハーケンなしでは支点がうまくとれず、下降して天狗山ダイレクトに向かったとのこと。あとで聞いたら天狗山ダイレクトから、われわれのハーケンを打つ音が聞こえたそうな。

さて最終となる3P目はこの壁。この写真はリードが終わったあと、アンジーをビレイする宮田さんを少し離れた岩峰上から撮影したもの。

二つのフェースにはさまれたルンゼの灌木で支点をとりつつ、右の壁を登ったり、左の壁を登ったり、ルンゼ内で垂直の木登りをしたり。

終了点で宮田さんを迎える。終了点で登山道に合流する。

宮田さんにとってはこういうクライミングになることは想定内。

アンジーも間もなく終了点

実はこのピッチをリードしながら、こんな泥臭いクライミングになってしまって、開拓クライミングがはじめてのアンジーに呆れられてしまうかな~と心配していたのだが・・・・

アンジーは「なんやこれ?なんやこれ?」と心のなかで呟きながらも、自然と笑いがこみあげてきて、幸せに登ってきたのだそうな。

というわけで、このルートは「なんやこれルート」となった次第。

ルートは合計3P。壁のコンディションが悪かったのもあって、逃げて逃げて、想定よりかなり左のほうを登ることになった。

使ったのはダブルロープ2本、カム小さめ数回、ハーケン2枚(1枚残置)、シュリンゲ多め

2023年6月10日のクライミング
取付き9時半~終了点12時半

山頂をもう一度越えて登山口へ。
そしてまだ明るい午後4時から宴会スタート。途中からまほちゃんも合流。

まほちゃんは山に近いこの地で働き、単身ネパールに行って山に登り、帰ってきたばかり。またしばらくはご近所で働くそうな。

さておじさんは10時半でダウン・・・したものの宴会時間はクライミングより長いね。そして女子チームは0時過ぎまで女子トークをしていたそうで。元気だね。

五郎山、2本の新ルート

五郎山に2本の新ルートを追加してきた。
2020年の11月に五郎山ダイレクトという、五郎山では最初のクライミングルートを作って以来、2年半ほどで派生ルートも含めると7本のラインができたことになる。
これで「難しすぎず楽しく登れそうなライン」はほぼ登り終え、われわれの五郎山通いもいったん卒業ということとなった。

パートナーは五郎山ダイレクトで初めてロープを結んだ長友さん。
仕事が忙しくお疲れモードで、土曜はお休み。日曜だけで2本を登った。

マキヨセ本峰リッジ

右側スカイラインがマキヨセ本峰リッジ

マキヨセ主峰の南面に落ち込む顕著なリッジで、この写真は登山道を西側から登ってマキヨセの稜線に出たあたりからのもの。登ったのはスカイラインの少し向こう側。

マキヨセに向かう登山道が、マキヨセの南面岩壁にあたったところから岩壁基部を右にトラバース。
100メートル程度(?)で顕著な本峰リッジの取付き。

マキヨセ南面の岩壁基部をトラバースすると、すぐにそれとわかるマキヨセ本峰リッジの下へ。上に見えるピラミッド状のピークが特徴。

リッジを少し回り込んだあたりを取付きとする。

渾身のじゃんけんに勝った赤沼リードで離陸。

正面は迫力ある岩壁だが、右から巻き込んでいくと若干組成の弱い感じはあるものの、3級程度の簡単なクライミングであっさりと特徴的なピラミッド状のピークに到達。それにしても素敵な景色、素敵なシチュエーション、快適で難しくないクライミングに幸せ気分が盛り上がる。癒し系クライミングの極みですな。

ピラミッド状ピークでビレイする赤沼

良いとこどりしてゴメンね。長友さん。

ここからは数メートルの簡単な岩稜で樹林に飛び込んで、すぐにマキヨセ主峰。思ったより簡単なクライミングでした。
1P目40m 3級 2P目20m 2級といったところ。

ルート取付き、5月21日9時15分、終了10時20分。約1時間の軽いクライミングでした。

五郎山南壁トラバース満喫ルート開拓

さて。西側からの見た目で結構大変なクライミングを想定していたものの、あっさり1時間のクライミングで終わってしまったマキヨセ本峰リッジ。もう1本登ってしまおう。
この地域(五郎山、マキヨセ一帯の岩場)で、「必然性があって難しすぎないライン」といえばあと一つ。
五郎山南壁のダイレクトどまんなかルートの間の大きなフェースだ。

五郎山ダイレクトと南壁どまんなかルートの間には、気持ちのよさげなフェースが展開しているが・・・・
下部が陰惨で急傾斜の垂壁帯。苔と水滴と闘いながらかぶり気味フェースでのクライミングをしたいか?

それはもう特殊な好みの人たちにまかせるとして、癒し系クライミング愛好家のわれわれのターゲットからは完全にはずれますな。

ちなみにどまんなかルートの右側にも素敵なフェースがあるように見えますが、上図のお絵描きが下手なのもありまして、このへんはあっさり1Pで登れそうなしょぼい系フェースなんです。まあこのあたりは将来暇なときに遊びにきてもいいんですが、当面のターゲットからは除外。

下部の垂壁帯を避けて、どまんなかルートの途中から左にトラバースして、上部だけを登ろうという作戦で、どまんなかルートからスタート。
長友さんリードで離陸。

どまんなかルート1P目終了点となるハング下テラスまでロープを伸ばす。

2P目は赤沼リードでいよいよ左のフェースに向かってトラバース。カンテの向こう側はどうなっていることやら。

カンテを廻り込んだ先はビレー点からは見えない。カンテを廻るあたりがホールドスタンスに乏しい、露出感のあるポイント。

カンテの先は上に見える終了点のテラスに向かってフェースを左上していく。

終了点となる広く気持ちのよいテラスに長友さんも到着。

ダイレクトルートの終了点でもある気持ちのよいテラスでしばしまったり。

さあこれで五郎山でのクライミングも一段落。山頂でも踏んでおりるか~というところだったが・・・・長友さん、今のピッチがお気に入りのようで、今度はリードで登りたいと。

てなわけで懸垂下降でおりて、また登って、今度は赤沼フォローで再度テラスに到着。

どまんなかルートの派生ながら、とても気持ちのよいトラバースを楽しむことのできるラインなので、トラバース満喫ルートと名付けた。

1P 20m4級(どまんなかルート) 2P 40m 5級(オリジナルのトラバース&テラスにあがるライン)

八ヶ岳・東ギボシ西壁ルンゼ偵察行

2015年の冬、西岳から遠望したギボシの西壁。
そのどまんなかに食い込む真っ黒なルンゼがターゲット。
登攀記録のないこの壁にまずは無雪期にルートを一本開拓し、山巡ルートとした。無雪期のルンゼ自体はあまりにも脆く、最初の垂直部を越えたあと左のリッジに移り、これを登った。最初の垂直部以降、ルンゼは急峻なガレ状に見えた。

垂直部が凍結するか、雪で埋まった冬期なら登れるかもしれない。
条件が揃えば簡単に登れるし、条件が悪ければ登攀不可能。そのどちらかだろうと予想。
東ギボシ山頂の手前稜線から歩いておりれば簡単にアプローチできるが、どうせ登れるかどうかわからないなら、立場川の支流ノロシバ沢を詰めて下から行ってみたい。

それにしてもノロシバ沢って情報少ないね~。
クライマーの間ではわりとよく知られた「バリエーションしましょ」というブログに、冬に登った記録がでていたが、12月で雪が少なく、凍結も甘く、苦労して稜線に抜けた様子。ちなみにブログ主さん、この登攀をした直後に甲斐駒で亡くなってしまったらしく、許可のとりようもなく勝手にリンク張ってしまいました・・・ご冥福をお祈りします。

今回の相棒はYCC(ヤングクライマーズクラブ)の家口さんと、田丸さん。山も酒もパワフルな二人。決して若くはないが・・・・
金曜夜、家口さんの車で北杜市のわが家に移動し、深夜の宴会。
翌早朝まだ暗い船山十字路の先まで車で移動。

いや、水流れてます。
ここのところ大きな寒波もきておらず、凍結状態が心配だったが、この時点であきらめモード。
まあ旭小屋まで行って、状態見て、だめそうなら立場岳でも往復してくるか・・・・と出発。

水の流れる立場川を渡渉して対岸に渡ると、林道があり、踏み跡はないものの、旭小屋あたりまでこれを辿ることができる。

立場川本谷をつめる。踏み跡はまったくなし。
足首からひざ下程度の軽いラッセルだが、水流部は5cm前後くらいの凍結状態で、下を水が流れているところも多い。
ときおり踏み抜いてドボンするし、歩きづらいことこのうえない。

唯一、堰堤にできた氷瀑でアイスクライミングのまね事。氷が硬すぎて結構怖い。

氷の踏み抜きドボン、要注意!

何度かドボンして、濡れた足回りがあっという間に凍り付きながらも意に介さず、パワフルなラッセルで先行してくれる家口さん。いや~助かるわ~。
ちなみにドボン王者は家口さん。次が田丸さん。赤沼はドボンなし。

どうやって越えよう・・・怖いこわい。

快晴無風で気温は低め。マイナス15度くらいかと思われる。
年齢には勝てず寒さ耐性がかなり落ちてます。
若いころはフリースの上に、ダウンなんか着て歩いてたら大汗かいてたもんだけどな~。

ノロシバ沢に入ると水流が減って、全面凍結。安心して歩けるようになった。

この日は日帰りで行けるところまで行って、下山の時間を考えて11時になったら引き返すということにしていた。
この時間内で、あわよくばギボシ西壁ルンゼを登ってしまおうかなんて考えていたのだが、まったくの計算違い。11時時点でノロシバ沢の4分の1程度くらいまでしか行けず、ここでタイムリミット。
残念ながらギボシの全景も見られず引き返すことに。

でもまあ偵察行としては、だいぶ雰囲気がわかったのでOKとしよう。

  • 完全凍結していないとアプローチがかなり厄介。寒波のきたあとを狙うべし。
  • 雪すくなく中途半端は歩きにくいのなんの。あったりまえか~。
  • 雪多すぎるとやっぱつらいよね。あったりまえ。
  • 雪が締まってないとつらいよね。あったりまえ~。
  • つーことは、やっぱ3月あたりの冷え込みのあとを狙うのがいいかね。まあ最初からそうだとは思ってたけどさ。
  • 立場川もノロシバ沢も、とりあえず到達した範囲では氷瀑らしい氷瀑はなし。上部に少しはあるらしいが、技術的問題はなさそう。
  • アプローチは思ったよりだいぶ長い。日帰りで行こうなんて考えが相当甘かったらしい。ノロシバ沢出会いあたりでテント張って、2日行程くらいは必要と思われる。
  • ギボシあたりを遠望した感じでは雪があんまりついてない。これもやはり3月あたりの雪がそこそこあって、締まった時期がよしとの結論になりますな。
水流の横を溜息つきながら下山する田丸さん。動画です。音が出ます。
今回のトラックレコード

当然の打ち上げ。下山は案外早く、午後3時~5時で1次会。一回昼寝して午後8時~午前2時前に至る2次会。3人で2升をコンプリートしました。わたしゃ酔っぱらって、iPhoneをストーブで焼いちゃった。ケースが焦げただけだけど・・・・

佐久・五郎山南壁「どまんなかルート」開拓

当時中学生だった石鍋礼くんと知り合ったのは30年以上も前の話。
私はほとんど忘れてしまっているが、礼くんの鮮明な記憶では、その中学生を越沢バットレスだの松木沢のアイスクライミングだの、やばいところばかり連れまわしていたらしい。覚えているのは礼くんの実家の天ぷら屋さんで「息子が世話になってます。」とご馳走になったおいしい天ぷらのことだけ・・・できた親ですな。
礼くんはその後フリークライミング修業をして、海外で高難度フリールートを落とすまでになったが、仕事やら家庭やらでしばらくのブランク。そして3年ほどまえに一念発起?して1年間のオフ(キャリアブレイクというらしい)をとってクライミングしまくり、ついにはヨセミテの大岩壁El Capitanまで登ってきてしまったんだと。やるね。

さて私にとって残された課題の一つ、上高地帝国ホテルの裏手に見えている霞沢岳八右衛門沢上流の岩壁群を登ろうというお誘いに、礼くんは二つ返事でつきあってくれることとなった。礼くんはついこの間、穂高の滝谷でクライミングをしてきたばかりで、気持ちが穂高モードになっていたらしい。

準備万端、天気も比較的安定していることを見極めて出発。ところがバスに乗って上高地帝国ホテル前停留所をおりてすぐに、まさかの雨が降り出した。
携帯のレーダーアプリで確認するとどうやらピンポイントでここだけが雨の様子。
「降り出すならバス乗るまえにしてくれよ~」とか「なんでここだけ」とか、ぶつくさ言いながらも、スポット的に天気の悪いエリアに長居は無用と転進を決定。
山でのクライミング用の細いロープ(ダブルロープという)しか持っていないので、小川山などでのフリークライミングはしたくない。
そこで私にとっては7回目となる五郎山に新ルートを付け加えに行くこととなった。どれだけ五郎山好きなの?って声がどこからか聞こえてきそうなんだけど無視無視。

閑話休題。

朝9時台にはいつもの林道終点に駐車。
歩きなれた急登のアプローチを行き、11時には五郎山南壁の取付きへ。

五郎山南壁。左のスカイラインあたりが初登攀ルートの「五郎山ダイレクト」。赤線が今回登った「どまんなかルート」

マキヨセ岩峰と五郎山の鞍部(以下、五郎山コル)から五郎山にむかって左におりて行くと、この壁にあっては長めのラインがとれる五郎山ダイレクトの取付き。五郎山コルからそこまでは下部がオーバーハングしたフェースとなっている。
五郎山コルの稜線と五郎山南壁が接するあたりが、五郎山南壁のほぼ中央部分となる。
つまり南壁の中央部分から左のスカイラインの間は、登れば傾斜の強いフェースから始まる難しいルートとなる。
より美しいラインで、適度に易しく登りたい私としては、南壁の左フェースは当面対象外。
五郎山コルと南壁の接点から右にあたる右フェースはスケールは小さめ。しかしどこもそれほど傾斜がきつくはなく、楽しく登れそうなラインがいくつかある。

どまんなかルートの取付き

マキヨセ、五郎山のコルと南壁の接点を2~3メートル右に行ったあたりの緩めのフェースを取付きとする。ホールド多めで快適なフェース。最低限の支点だけとりながら快適にロープを伸ばすと、上部をハングにふさがれたテラス。ここでピッチを切る。1ピッチで抜けられそうな壁だが、60メートルのダブルロープ1本を半分にして30メートルダブル状態にして登っているので、早めにピッチを切った。ここで約20メートル。

頭上のハング下テラスまでが第一ピッチ(20m)
2ピッチ目を登りだす礼くん

2ピッチ目はハング右側のラインを登る。薄被りながらホールドは比較的豊富。小ハングのちょっとした切れ目をついてここを越える。
そのままフェース直上で五郎山ダイレクトの終了点にもなった山頂左下(西)に広がる大きなテラスの右端に出た。

小ハングを越えていく。
3ピッチ目の登りだし。

このテラスからは樹林を山頂まで行けることはわかっているのだが、すぐ横のフェースが岩茸に覆われてはいるものの登れそう。
少しでも長いルートにするか、とここを登ると、山頂に向かって岩のリッジが伸びているので、そのままリッジ上を登る。
若干ブッシュがあったりして鬱陶しいものの、きれいなリッジで気持ちよく高度をあげると山頂の一角にいきなり飛び出した。

3ピッチ目のフェース上から山頂に向かうリッジに移る。
3ピッチ目はじめのフェースをフォローする礼くん。
山頂に伸びるリッジ。
うしろに見えているのがマキヨセP2ルート上部。


さて山頂到着が12時20分くらい。易しいルートとはいえ1時間半弱で終わってしまった。
踏みあとを五郎山コルまで戻ったがまだ時間もあるので、マキヨセピークへの急峻な踏みあとを歩くくらいなら、マキヨセP2ルートの最終ピッチでも登って眺めのよいマキヨセ岩稜(踏みあとは北側斜面にある)を辿って帰ろうということになった。
このマキヨセP2最終ピッチの取付きまでは五郎山コルから樹林を通って歩いて行かれるのだ。
初登ルートを登るつもりだったが、その左にもう少し長いラインのとれそうなフェースがあり、そちらにルート変更。

マキヨセP2最終ピッチの左ルート。

初登ルートに比べて少し傾斜の強めのフェースを直上するルートを礼くんが選択。

空に向かってぐいぐい登ると尖ったピークに至る気持ちのよいピッチ。
これでこの日のクライミングはおしまい。
何度来ても気持ちのよいピーク。

さて帰りの車中で、ルートに一応名前つけておかないとと二人で検討。
位置的には五郎山南壁中央フェースとでもなるんだが、面白みもないね。
初登ルートの五郎山ダイレクトより、さらに山頂にまっすぐ抜けるルートだから「五郎山もっとダイレクトルート」とか。
いろいろ話し合った結果、あまり悪ふざけもしすぎず、中央ルートとかいうかわりに「南壁どまんなかルート」で行きましょうとなったわけ。

まああの南壁の正面フェースにルートが一本はあっていいし、これで易しめルートの開拓もほぼ一段落かな~という次第。

登ったのは2021年9月11日


五郎山南壁どまんなかルート
1P目 五郎山コルと南壁接点あたりのフェースをハング手前の顕著なテラスまで20m 4級
2P目 ハング右のフェースを直上。山頂直下の大きなテラスの右端まで。20m 4級
3P目 テラス右端のさらに右の岩茸で真っ黒なフェースを登って、山頂に至るスカイラインリッジを山頂まで。3級(一部4級)
登攀時間1時間半程度

マキヨセP2ルート最終ピッチの左ルート
マキヨセP2の顕著な岩峰の先端のみを登る。
初登ルートはハング状の壁の右に切れる凹角だが、今回はハング左のフェースを直上。20m 4級

佐久・マキヨセP2ルート開拓

五郎山から見るマキヨセP2
この下に垂直の下部岩壁が続く。

2020年11月に佐久・川上村の五郎山の岩壁にルート(五郎山ダイレクト)を拓いた際、顕著に見えていた岩峰、マキヨセのP2(もっとも五郎山寄りの目立つ岩峰)を登ってきた。岩峰は上部の尖った岩壁、中央のフェースと傾斜の強い下部壁からなっている。この写真では上部と中央フェースのみが見えている。

パートナーは五郎山ダイレクトの開拓をご一緒した長友さん。40台前半の脂の乗り切ったクライマーであるのはもとより、美意識、信条のはっきりとした聡明な人柄で、クライミング行を楽しくさせてくれる人。

今回はメパンナことS川さん、ニコちゃんことN口さんも同行して開拓の応援と写真撮影をしてくれた。
メパンナはアイゼンとアックスを使ったスポートクライミング、ドライツーリング(略してドラツー)の日本でも有数のプレイヤーで、今や世界を転戦中らしい。一緒に歩きながらもドラツー向きの岩壁がないかとエロい視線をそこここの岩壁にそそいでいた。股関節故障中で、開拓は参加せず。
ニコちゃんは長年アルパインをやってきた頼もしいクライマー仲間だが、やはり肩の故障でクライミングはできず。今回は仲間内で名シェフとして名高い料理の腕前をふるってもらいいい宴会ができた。

二人とも4回目の五郎山。マキヨセP2基部でロープを結ぶ。

このラインは五郎山ダイレクトを登ったあと、長友さんが偵察に来て、トップロープで一部試登をしている。写真にも写っている上部岩壁と中央フェースは登れそうだが、下部岩壁が傾斜が強く、岩も脆そうで恐ろしいとのこと。
歩いて取付きに行くと、たしかに中央フェース真下の岩壁は一部ハングしており、登るのは苦労しそうだ。
岩壁左端の張り出しを巻いて数メートル左に移動すると、軽い凹角状のフェースとなっており、傾斜も若干緩いし、小さなクラックがいくつか走っているので、カムは使えなくても最悪ハーケンを打てばなんとかいけそうだ。垂壁の直上に未練がありそうな長友さんに「弱点ついていこうよ!」と、ここを登ることとする。「逃げの山巡」の伝統は守らねば。

1P目は長友さんのリードで離陸。

メパンナ撮影、動画その1「離陸シーン」

メパンナ撮影動画2「支点なしで離陸」


メパンナ撮影動画3 「命を守るハーケンを打つ!」

こんな感じでスタート!
数メートル、支点がとれないままに登っていき、少し不安になりはじめたあたりで長友さん、ハーケンの設置を決断。ハーケンをあまりにも叩き込みすぎて、結局回収不可能に。(もちろんこれで正解)
ちなみにこれ以降はすべてナチュラルプロテクションで登り、残置物はこれだけとなった。

1P目終了点から。赤沼フォロー中。

1Pを終了したところで中央フェース下のバンドに出た。
この上はまた傾斜が強そうなので、長友さんの想定していたフェース下までバンドをトラバース。

バンドをトラバース中。

このバンドは岩峰横の樹林帯から歩いてくることもできるため、ここまでニコちゃんが来て待っていた。
五郎山側からは顕著に広がる中央フェースは赤沼のリード。フェースいっぱいに岩茸が広がっていて滑るが、傾斜も緩めで節理もほどほどにあって快適に登れる。

2P目。中央フェース。黒いのはすべて岩茸。
2P目、中央フェース登攀中の赤沼。上にいるのがメパンナ。長友さんは下でビレー中。

中央フェースは五郎山側、登山道から張り出した岩壁の上からよく見えるため、ニコちゃんがそこから撮影してくれた。3人写っているのがわかりますかね?上にメパンナが写ってるが、やはり草付きのバンドを歩いて来ていたため。各ピッチごとに仲間が来ていて「まるで山登っていって山頂ついたら駐車場があったみたいな状態だね~」と笑いあいながらの登攀。

2P目、中央フェース登攀中。上の写真とほぼ同じ時刻に下から撮影。
2P目終了。メパンナ撮影。
2P目終了シーンを撮影するメパンナを、五郎山側からニコちゃん撮影。
2P目を長友さんも登ってくる。
長友さん到着。メパンナ撮影。
3P目。簡単な岩稜を上部ピークの基部まで。

ここから3P目はロープもいらない程度の岩稜を最終ピッチとなる上部岩壁の基部に移動。上の写真にも3人写っている。上がリードしている長友さん、下がビレーする赤沼。真ん中は遊び・・・もとい応援!に来ているメパンナ。

3P目終了点で撮影。フォロー中の赤沼。
4P目、上部岩壁。

最終ピッチは最後のとんがりを登りつめる嬉しいピッチ。長友さんのリードで。

最終ピッチをフォローする赤沼。
終了点で自撮り。本当のピークは真後ろの岩の上だが、怖いのでここで撮影。

マキヨセP2ルート、クライミング概要:
1P目
下部岩壁。左寄りのルンゼを直上(5級)25m
2P目
バンドを右にトラバースして中央フェースを直上(4級)25m
3P目
優しい岩稜を上部岩壁基部まで(2級)15m
4P目
上部岩壁(岩峰)を直上(4級)20m
登攀開始5月23日9時30分~終了11時30分)

使用ギアはハーケン1(残置)小~中サイズのカム約2セット
グレードはムーブだけを考えれば甘目かもしれない。
スポートルートではないので、危険度などの主観部分も加味。

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