アルパインクライミング・沢登り・フリークライミング・地域研究などジャンルを問わず活動する山岳会

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佐久・御陵山の皇子峰

皇子峰というのは山巡赤沼の得意技、面白がっての誇張命名ですよ。もちろん。御陵山(おみはかやま)北面(南相木村側)のやぶ岩峰のことです。

つい先日、南相木ダム手前のずみ岩を登った帰路、ほの見えたきれいな二等辺三角形のやぶ岩峰。
やばい(いろんな意味でね)岩峰があったら登ってやろう・・・というのが最近の行動様式なわけで、まずはそれがどこなのかの特定作業。
どうやら以前に歩いたことのある御陵山の北面にあるピークらしい。それがわかった瞬間、「墳墓」と言う言葉が頭に浮かんだ。
一人でもいいけど、やぶ岩歩きの好きな仲間でも誘って一緒に行ってみるか~と思っていたら、1年以上会ってない長友さんから山に行こうとお誘いが。かつて南相木を一緒に歩き回った相棒だ。
タイミングよすぎでしょ。

4日後の金曜朝には二人で南相木村。
御陵山里宮という神社(祠?)から行動開始。


さてなぜ「墳墓」という言葉が浮かんだのか。

南相木村の地図上に名前のないような山々を辿り歩き、隣村川上村の岩峰を登り歩くうち、「悲運の皇子、重仁親王がこの地に住んだ」という言い伝えが耳に入ってきていた。
言い伝えが実話であるという前提で話をまとめると以下のようになる。


平安時代末期、皇位継承問題に端を発した保元の乱で敗れた崇徳上皇と、その皇子重仁親王は讃岐に配流され、崇徳上皇は配流先で罪人として扱われ、失意のうちに亡くなる。その後敵方を中心に大事件が多く起きたことから、怨霊として描かれるようになり、平将門、菅原道真とともに日本三大怨霊のひとりとも言われる。
一方皇子の重仁親王は、保元の乱で崇徳上皇に荷担した武士方の総将格であった信濃の村上基国を頼って身を寄せ、その庇護のもと千曲川を遡って南相木村から臨幸峠を越えて、川上村の御所平、御殿窪(みどのくぼ)に安住。ここで兵を調練したり鷹狩をしたりしつつ、再起をかけて過ごしていたが若くして病に倒れた。
その名残として川上村に古名として地名や遺跡が残っている。
歴史学者で佐久の郷土史家、楜沢竜吉氏から、佐久に疎開していた作家の佐藤春夫が歴史史料の提供を受けたらしい。佐藤春夫は「佐久の内裏」という作品に「佐久川上村御所平要図」という史料をもとにした古名などについて記載している。(定本佐藤春夫全集第13巻に収載)

御所平 御殿窪(みどのくぼ)

竜昌寺(現、富澤山 龍昌禅寺)の裏にある御殿窪に重仁親王が住んだ。背後の山は今も内裏山と呼ばれている。(写真は龍昌寺の山門と内裏山)

この地には熊野神社があり、のちに龍昌寺が移されてきた。当時の天皇家は熊野神社とのつながりが深く、頻繁に熊野詣でを行ってきた。

住吉神社

龍昌寺の千曲川をはさんだ向かい側に位置する。
住吉神社は熊野神社の別当。

住吉神社から龍昌寺方面。左の山が内裏山。
住吉神社から撮影。右端が赤顔山。さらにその右方向に天狗山、そして御陵山が連なる。この一帯が重仁親王のいた御所平の中心地となる。

ちなみに千曲川は熊野と同じ三山信仰の三峰詣の街道筋でもあった。

御霊社(御霊神社)

御殿窪と同様、内裏山の麓に位置する。

川上村公民館発行の館報かわかみ 第104号(昭和43年)には「村上基国のもとを親王が辞するとき白馬を進献され、臨幸峠を越えて川上村に入った際の姿が御霊社のご神体である」との記載がある。

川上村では重仁親王を祀った神社として護っていたようだが、今はなぜか入口が藪の奥に埋もれ、祠はまるで隠されるように安置。
産泰神社と名前も変えられている。

重仁親王、三大怨霊の皇子だよ。やはり失意のうちに亡くなってるんだけどなんか今は忌避してない?こんなことして大丈夫なん?というのは赤沼の心の声。

このほかに古名として兵を調練したかのような「馬場平」、貴族のスポーツ鷹狩をしたのか「鷹揚場」、「天主の台」、「鷹放」、「兵部」などの地名もあったようだ。

以上は主に雨海博洋氏筆「悲運の皇子、重仁親王の流離譚」より引用させていただいた。


以上が本当の史実であれば、御所平の奥に控える御陵山は、その名前からいっても重仁親王の墳墓であると考えるのが自然ではなかろうか。

御陵山山頂の祠

山頂の祠に奉納されてきたらしい神具の説明。雨ごいの神事によるものと記載がある。なぜか南相木村教育委員会。
しかし17世紀とあるし、ここが重仁親王の墳墓として祀られていたのだとしても矛盾はしない。だいたい御陵(おみはか)と雨乞いって結びつくのかね?

そして不思議なことに御陵山の北、南相木村にも御所平という地名があり、御陵山里宮という小さな神社が現存する。

この神社は御陵山の北側の尾根が南相木川に落ちて来た、三川というところに建つ。そして尾根はここからまっすぐに、件の三角やぶ岩峰(皇子峰)を経て、御陵山に至る。
そして南相木村にも里仁親王の流離譚があり、御陵山はまさに里仁親王の墳墓であると伝えられている。
重仁親王の言い伝えに酷似してますな。
ちなみに里仁親王という名は史書にはないのだが、藤原政権時代に謀反人として名前を歴史から抹消されたのだとか・・・

さてさて真実はどこにあるのか。

どこかに事実があるのか、村上基国がその野心から勝手に親王を担いだのか、あるいはどこにでもある貴種流離譚のひとつで、自治体がそれを利用したり、忌避したりなのか?

そういうわけで、話は長くなったけど、歴史的ロマンのある、墳墓のような岩峰を、悲運の皇子を偲びつつ敬意をもって踏破してみようかと。そういうことになった次第。

南相木村の御陵山里宮の前からはじまる林道に入り、適当なところで車を停めて、御陵山の北に延びる尾根を登り始める。
結構な岩尾根っぽいし、あの岩峰(皇子峰)も急峻な露岩が出てっぽい。
ロープを持つかどうか迷ったが、長友さんと赤沼のふたりならそういうのは得意分野だしいらんだろう!ということで軽装でスタート。

樹林を踏み跡だか獣道だかを辿る。歩きやすいし、気持ちいいし、
「登山道をぞろぞろ歩いてる人がかわいそうだよね~」とか二人して言いたい放題。

初冬の小春日和って感じのむちゃくちゃ感じのよい尾根筋。

踏み跡らしいものがあったのは、送電線のメンテのためもあったのかな。

いくつか小ピークを越えていく。

前半はかなり歩きやすい。

尾根どおしでルートも明瞭。

このあたりは岩峰だらけ。露岩が出始め、急な木登り露岩登りとなってくる。

急な岩峰が連続する。慎重にルーファイしながらピークを登ったり下りたり。

露岩をクライムダウン中。

越えてきた小ピークを振り返る。

結構いやらしい木登りと露岩登り。にこにこと登ってくる長友さんにあとで聞いたら、手袋の形状やらムーブやらいろいろと研究してノウハウを蓄積しているらしい。

突っ込んだ岩峰が案外悪くていったん下降中ですが、実はこの先で事件が。
赤沼の腰ベルトにつけていた熊よけスプレーのストッパーがやぶでなくなり、下降中、木の枝でスイッチが押されてしまったのだ。
幸い大事には至らなかったが、スプレーの液体を処理した布に触った手で触れた場所のすべてが、ひりひりと発熱。一晩ほどかっかしてましたわ。

皇子峰はもう目前。なんか難しそうに見えるぞ。

どこを越えてやろうか。できれば中央突破したいね。

しばしルーファイタイム。

良い子のみなさん。長友さんの木登り露岩登りテクニックを、この動画から学んでください。いろんなノウハウが見てとれますよ。(いやまじで)

南相木ダムが遠望できる。

皇子峰に到着!

皇子峰から少し下ってまた登ると天狗山から御陵山への稜線。登山道があって、ここからはすぐに御陵山山頂に着く。

御陵山山頂から天狗山方面。天狗山の向こうは八ヶ岳が白くなってる。

御陵山山頂

にわか祝詞を奏上

さて下降は一本西よりの尾根を考えていたが、長友さんが「沢を下りちゃいましょう」というのでただついて行く。長友さんの読みがあたってあっという間に車を停めてある林道に出た。




天狗山ダイレクトから

あっこちゃん(中江明子さん)と天狗山。
昨年敗退した下部フェースを登るかと出かけたけど、寒さに負けて転進。天狗山ダイレクト。
(敗退の顛末はこちらに記載してます。)

天狗山南面の岩壁群では唯一、天狗山ダイレクトというルートが知られていて、あとの岩壁はほぼ情報がなかった。
情報の多い既成ルートにだけ人が集まり、あの広大な岩壁群に何もないのがもったいない。
そこに昨年から手を付け始めて、難しすぎずに登れそうなラインを狙って、6本ほど登って来た。(登ったラインの概要はこちら)
今さら一度は登った既成ルート、天狗山ダイレクトになんで行ったかと言うと、単なる宴会前のお茶濁しなんだけど・・・・壁のまんなかを一直線にあがるこのルート、実は自分の作ってきたルートのよき展望台だということがわかった。

東岩稜

いくつかの小さなフェースの連続した岩稜。
やぶ尾根歩き、ときどき岩登りというのんびり楽しめるやさしめのルート。

右壁右稜

天狗山ダイレクトに並行するように山頂に伸びあがる岩稜。
左が切れ落ちてた壁で、右は樹林帯。ちょうどその境目の岩稜を登るやさしく楽しいルート。

そして写真は撮らなかったけど南稜もよく見えた。

どれも山歩き以上、クライミング未満みたいなルートで、「ルート開拓」というよりは「ルート発掘」と言ったほうがしっくりくるようなところ。

最近はこういう山遊びが楽しくて仕方がない。
「情報のないところは怖いところ」ではないと思うよ。
情報がないから、「行って見て」、「自分に登れそうなラインにとりついてみて」、「だめならおりてくればいいんでない?」という遊び方ができるんじゃないかな。

こういうルートは誰かがすでに登っているかもしれないし、「ルート開拓」とか、「初登攀」とかいう言い方にはそぐわない。だから「ルート発掘」なんて言った方がいいのかもと思った。
最初に登ったあと、東岩稜も南稜もこの記録を見て登ってくれた人がいるし、右壁右稜も登りたいという人を案内したりもした。それがとっても嬉しい。

60歳過ぎて、クライミング人生が終わるまでに登れるルートがあと何本あるのかな。そんな想いを抱き始めて、難しいことやかっこいいことがしたいんではなく、いい仲間と「あーでもない、こーでもない」と言いながら、こうやって山と触れ合い、じゃれあって遊びたいんだよね~ということに気が付いた。

開拓とかいうもんじゃなくて、いい遊び場を発掘していきたいな~。

瑞牆山十一面岩

金峰山の千代の吹上、第三岩稜の中間部分(上部と下部を登った登り残し)を登る計画だったが、さすがに11月に入って気温が低いうえ、風の強い予報。
「これは楽しくないよね~」ということでの転進。

パートナーは瑞牆山でいくつもの高難度ルートを拓いてきた中尾政樹さん。ヒマラヤ、サトパント南壁の初登やシブリン北稜を登った、アルピニストでもある。

「千代の吹上が中止なら、瑞牆山で軽いクライミングでもして、情報交換がてら飲みましょうか?」という魅力的なお誘い。
難しいルートばかりの印象で、怖くて手を出せなかった瑞牆山を、そこの主のような人に案内してもらえる絶好のチャンス。逃すわけにはいかないよね。

朝ゆっくり目に駐車場で待ち合わせ、どこに行くのかも知らずただついていく。天気も上々。なんかガイド登山の客というか、素敵なレストランで有名シェフにおまかせフルコース頼んでワイン飲んでるような気分?
どこに連れてってくれるのかな~ルンルン♪てなもんで。

40分ほどの歩きでついたのは、中尾さんも岩場の名前をまだ決めかねているようなところらしい。位置的には十一面岩の末端の末端の末端・・・あたりらしい。すでに登られたワイドクラックから、まだ掃除の終わってない(誰かほかのクライマーが掃除してるかも?なんてことらしいが)、未踏かもしれないクラックにつなげようという作戦。

ここは中尾さんも以前登っているらしい。赤沼も久々でテーピングばっちり・・・のつもりが、ずっと使わなかったテーピングが古すぎて粘着力が怪しい。
「それはだいぶ古いね~。いつから使ってないの。」
と笑われましたです。

中尾さんリードで離陸。
出だしがかぶっているけど、核心部は上のほうだった。

赤沼もがんばって、いんぐりもんぐり中。
ワイドクラックって息が切れるし還暦すぎのおじさんのやる遊びではないよな~。中尾さんは息も切らしてなかったみたいだけど。

ぜーはーぜーはー。
リードしてるみたいに見えるけど、ちゃんと上にロープついてます。

2P目も中尾さんには既登部分。
真っ暗なチムニー内を、クラックを使って登り、最後はうしろの壁に体重かけて休めるという特典つき。きわめて楽しいピッチです。

この辺が核心部。

さて未踏かもしれないこのピッチ。
「誰か掃除してくれてるらしい。登ってみよう~」と中尾さん。

でも取付き部分のハングが脆すぎてだめ。
ここは浮石落とし切らないとだめということで、頭の中は宴会モードに。

当然夕方から我が家で酒宴。
まあ話がはずむこと。
楽しい夜は更けていきました。

たまにこういう観光気分のクライミングもいいもんだね~、って割といつもそんな調子か?

金峰山・千代の吹上第三岩稜A峰

金峰山の南面に展開する岩壁群、千代の吹上。
アプローチが長いこともあってか、あまり登られていないが、その中でも記録の見当たらない第三岩稜。
先月(2024年9月)ここを訪れ、第三岩稜がおおよそ4つの岩峰からなっていることがわかった。便宜上、上からA峰、B峰、C峰、D峰と名付け、その時はD峰の正面壁を登って来た。

パートナーはハンターでカメラマンの田丸さん(東京ヤングクライマースクラブ)。
藪歩きがすさまじく速く、鹿に出くわすと人格が変わる。
自動車メーカーの専属で撮影をしていたこともあって、車にも詳しいらしい。

前回はなが~い瑞牆山荘からのアプローチでばてたので、今回は大弛峠から金峰山を越えて行くこととした。これで1時間ほど節約できる。前夜は大弛峠にて、田丸さんの車中泊仕様の軽バンで宴会。案の定飲みすぎの感が・・・

前回D峰を登ったのでつづきを登ろうという予定。
小さく見えるC峰は割愛して、B峰~A峰を続けて登るつもり。
かなりロングルートとなりそうなので、大弛峠を早朝出発のつもりだったが、前日の雨が乾くのに時間がかかりそう(という口実で飲んだんだけど)なので、目的をA峰のみに絞って少しゆっくり目に出発。

稜線から撮影した第3岩稜の上部。左のほうに見えているピークがA峰の頭。(下から見るとここで第3岩稜が終わって見える)
おぢさん二人で名づけるとしたらたった一つのワードしか思いつかないA峰の頭。下から見るとよりそれらしい。ここに立ちたい。

稜線から見て第3岩稜の左側ルンゼをクライムダウン。懸垂下降しようかという程度の急な斜面だが、樹林を使えばなんとか下りられる。

目的のA峰の下部に到着。
B, C, D峰が下方に見渡せる。
D峰の頭には先月懸垂下降用に作った支点につけた捨て縄が見えている。
B峰は上から見てA峰より右よりに稜線を伸ばしている。そしてB峰とA峰の下部はのっぺりしたスラブ帯でつながって見える。B峰からA峰につなげるとしたら、このスラブを登るか、弱点となりそうな草付きを登ることになるのか。

B峰からさらに上に伸びる岩稜。

B峰上部の岩稜は第3岩稜に向かって伸びてきており、その終了点が合流しているのか独自に稜線に向かっているのかは確認できなかった。
手前のスラブ壁はA峰の下部ともいえるところ。この下がさらにB峰の側壁とつながっているようだ。
このスラブ壁は手掛かりがなく、簡単には登れそうもないので、A峰のピナクル部分の末端から取付くこととした。

A峰の1ピッチ目(正面のフェースはグラウンドアップでは手がつけられず、ピークを右側から回り込むようなラインとなった。)

1ピッチ目の出だしはクラックがいくつか切れ込んだフェース。後半はフレアしながら右上するワイドクラック。
まだ若干濡れているし、フェース部分は表面が風化していて、気を付けないとスタンスを壊しそう。
見た目より悪いフェースから右上ワイドクラック。
クラック左側がハングになっているため、右のカンテにトラバースしたいのだが、風化しているうえ、ホールドも乏しく苦労する。
ハング下の泥つきクラックにいれたカムにあぶみをかけて右フェースに乗り移ろうとするが、どうしてもハングに頭がつかえてバランスがとれずに振られてしまう。今回借りて来た、私のより高級な妻のヘルメットを泥ハングに何度もこすりつけてしまった・・・・
バランスを維持するためフェース部分にボルトを打ち、そこにもあぶみをかけてなんとか右のフェースに乗り移ることができた。ふ~。
あまりの激闘ぶりにビレイしていた田丸さんも緊張していて、赤沼の雄姿は撮影ならず。

1ピッチ目。右上するワイドクラックからフェースに移る部分を登る田丸さん。

2ピッチ目。
1ピッチ目でA峰ピークの右側裏に回り込んできたので、振り返った頭上がA峰ピーク。登路を探して少し右(手前)に草付き帯をトラバース。

薄い苔に覆われた露岩帯を木登り。いやらしい登りだ。
A峰ピークよりも稜線よりに大きなスラブ壁が見えており、登り口まで行ってみた。手の付けられそうもないフェースに残置ボルトが一本。
ん?誰か来たのはわかるが、ボルトの上は登れそうもないぞ。
どうも登ったようには見えないので、A峰ピーク寄りに戻る。
ジェードル状になった薄被りのシンクラックがある。
泥もつまっているし大変そうだが、もうここ以外に登路がなさそうなので、1ピッチ目で疲弊した身体に鞭打って取付く。

3ピッチ目のシンクラックはいきなりのカムエイド。左側がかぶり気味で、またまたバランスのとりづらい登り。
右の風化花崗岩に右足をこすりつけ、左足はあぶみという状態で苦労して伸びあがってはつぎのカムを設置するというハードな登り。小型カム中心に6ポイントで右のフェースに移る。

第3岩稜の主稜線部分に出て3ピッチ目を終了。件のピークは後ろ側になってしまった。

4ピッチ目は金峰山の稜線に向かって伸びあがる岩稜。

小ピークをひとつ登ったところでピッチを切ってもらう。
件のA峰ピークの上で写真を撮ってもらうためだ。

ビレイ点から戻るようにA峰ピークまで行って写真を撮ってもらう。

またいでいる隙間をのぞき込むと、50cm程度のチムニーが下のほうまで続いている。ここを登りたかったな~。ここを登って、この隙間から顔を出すことができたら、中尾さんには悪いけど別の意味?で「生まれる気分」が味わえたかも。(瑞牆山で中尾さんの開拓したルートの名前です。)

これが第3岩稜最後のピーク。

最終部分は面倒そうなフェースなので割愛して、ここから左にトラバースして樹林に入る。

第3岩稜終了点

歩き部分もいれて全7ピッチのクライミングでした。
A峰だけちょろっと登って、物足りなかったら第2、第3岩稜の中間にある小さな岩峰でも登ろうかなんて言っていたが、激闘ピッチふたつを含むハードな内容となり、もう二人ともへろへろでした。

金峰山・千代の吹上第三岩稜D峰正面壁ルート開拓

金峰山山頂の西側稜線の南面に、千代の吹上という岩壁群があることはよく知られている。
高差約200m, 幅約200mにわたって展開する金峰山最大の岩壁群だ。
白水社の日本登山大系では第一~第四岩稜の間に展開する7本のルートが紹介されている。
同書でも「開拓の歴史が浅く」とあるとおり足跡は少ないようだ。
ネット情報を参照しても情報は少なく、第二岩稜周辺と第四岩稜が時折登られたり、近年第二フェースにルートが開拓された情報が見つかる程度だ。

【山巡の今までのクライミング】
2023年6月 第四岩稜
記録のまったく見当たらない第三岩稜を目指したが、ルートの取付きがわからず、結果として第四岩稜~白い尖峰を登って来た。
2023年7月 第一岩稜
第四岩稜を登った際遠望した、美しい第一岩稜を登って来た。
楽しいクライミングを通して、千代の吹上の全体像を、かなりの迫力をもって見ることができた。知る限り記録も見当たらなかったので、「岩壁観光ルート」と命名。第一岩稜は既登であるとのコメントもいただいたが詳細は不明のまま。初トレースであるかどうかはどうでもよいとして、とても美しいラインの好ルートなので多くの人に登ってもらいたい。
実際知り合いのクライマーが後日これを登り、楽しいルートだったとのコメントをいただいたのが嬉しい。

さて第四岩稜を登った際、ガスの合間に見え隠れしていた迫力ある岩壁群が第三岩稜と思われる。かなり難しそうだ。
記録は見当たらず、難しすぎて誰も登っていないのか、それとも登攀価値のないつまらない岩稜なのか?
そんな好奇心もあって、第三岩稜を訪ねてみた。

結論から言うと、第三岩稜はひとつのリッジというよりも4~5個程度の尖峰の集合体であり、各岩峰は南面を中心にそれぞれ素敵なフェースやクラックから構成されているクライミングの楽しめそうなエリアだ。
便宜上上ピナクル1~ピナクル4と呼ぼうかと思ったが、日本登山大系で第一岩稜の終了点がP1、第四岩稜あたりがP3と記載されており、まぎらわしいので、上から第三岩稜A峰~D峰と仮称した。

登山大系の概念図にA~D峰を書き加えてみた。

2024年9月13日

山巡の若手女子、斉藤真帆ちゃんと第三岩稜に向かう。
瑞牆山荘から第四岩稜と第三岩稜の間の下降点(左写真、砂払いノ頭)まで約3時間半。

第三岩稜最下部の岩峰(D峰)は、千代の吹上全体でももっとも低い位置から始まる岩壁かと思われる。取付きまでは急なルンゼを約45分のクライムダウン。右岸の第四岩稜の美しいスラブの取付きより少し下くらいから左岸にトラバースして岩壁基部。

D峰基部付近から第四岩稜を望む。

D峰正面壁を見上げる。
これはなかなかの岩壁ですぞ、と感激しているが、実はこれが第三岩稜全体からすれば下部のほんの一部であることをあとで知る次第。
高度がここまでおりればこの岩壁の上が長いことは想定されたが、「どうせ木登りで終わるんじゃない?」なんて、この時点では軽く考えていたのだ。
下部はスラブ壁で、2ピッチ目あたりにいやらしそうなクラックが見えている。
ちょっと悪そうなので、2ピッチ目で山巡の鉄砲玉、真帆ちゃんを投入すべく計算して、1ピッチ目は赤沼リードでスタート。

1ピッチ目スタート
左手には第四岩稜が見える。

1ピッチ目の核心はこのフレークをつかんでえいやと登るうすらかぶりフェースか。
この右手にかなり古い残置ロープを発見。誰か登っているのか?と思ったが、残置の場所やロープの形状から何かの採集のためのものではないかと思われた。あるいはかなり昔の試登用だった可能性も。

1ピッチ目終了点から2ピッチ目を仰ぎ見る。

2ピッチ目は基部からも見えたように急なフェースのまんなかにクラックが一本走り、上部はハング気味となっている。

クラックの形は美しいが、泥と草が詰まっているだろうな~
クライミング自体もそこそこ難しそうだし、泥臭いクライミングになりそうだ。

ということで、予定どおり鉄砲玉、真帆ちゃんの投入。
こういうピッチの突破には若さが必要だよね。


真帆ちゃん、ロープを渡すと黙って突っ込みます。
クラックの核心部。

真帆ちゃん、泥のつまったクラックでプロテクション設置に苦労しているようだが、掃除作業のあとアブミに乗ってカムエイドで核心部を突破。

核心のクラック上から振り返って撮影。
クラックのあとはハングにぶつかる。

ハング下も悪いらしく、苦労しながらトラバースして上部の樹林に飛び込んだ。Good Job!

「あんな悪いピッチをよく頑張った!さすがだね~」とか言いつつフォローしていくと、「赤沼さんにクライミングが遅い!と言われるんじゃないかと心配してた」とか・・・・はは。自分は残置してもらったあぶみをいきなりつかんで登っておいて、言うかそんなこと。

さて3ピッチ目。
ビレー点についた時、真帆ちゃんがやけににやけてるなと思ったら、3ピッチ目は真帆ちゃんの大好きなワイドクラックがきれいに口をあけているではありませんか。

赤沼「ん?登りたいの?別に登ってもいいよ?」
真帆「いや別にどっちでもいいですけど・・・・」

なぁんてはっきりしないので、順番どおり赤沼リード。
まあこの時点でこの先は木登りで終了と勝手に想像していたもので、1ピッチくらいは頑張っちゃってもいいかなと思った次第。

左側のハンドクラックで行けるかなと思っていたけど、どんどん中に吸い込まれていくタイプのやつでした。

「赤沼さん、ワイドもやれるじゃないですか~!」などとおだてられつつ、頑張っちゃってます。

3ピッチ目後半はD峰の先端近くまでチムニー。
「ワイドあるかもよ~」と事前の憶測だけで真帆ちゃんに伝えていたため、真帆ちゃんはワイド用のでっかいカムを持ってきてくれていたけど、それでもこのチムニーはプロテクションとれませんな。ただただ壁のなかでいんぐりもんぐり高度を稼いでトップアウト。ザックを置いてきたので荷揚げで体力使い果たし。

真帆ちゃんも楽しそうに登って来た。

最後の最後で使った大きめカムを回収。「役にたったでしょ?」と見せたかったらしい。

D峰の頭に立ってみると、なんとまだこんな岩壁が立ちはだかってますよ。
真正面がB峰と仮称したやつ(C峰は左手下にあって写っていない。比較的小ぶり)。
そのうしろにぴょこんととんがっているのが一応A峰と仮称したやつ。AもBも独立した尖った岩峰に見えますな。
右手に聳えているのは第二岩稜。
この時点で今日は時間切れ。なにせアプローチ4時間あるので、この先を登っていたら間違いなく帰りは真っ暗。それ以前に相当ばててますな。われわれ。

D峰の下に見えてるC峰。小さめだが一応独立岩峰ぽいのでCとしてみた。

足下となったD峰はやはり尖った岩峰で、ピークからはむこうがわに懸垂下降をするしかなさそう。懸垂支点とするのに使えそうな木もないので、ボルトを打ったことのない真帆ちゃんの練習がてら2本打って(途中で赤沼に交代)懸垂。

本日はここから下山と決め、アプローチでおりてきたルンゼまでD峰の側壁部を3ピッチの懸垂下降。

下りて来たルンゼをぜいぜい言いながら登り返し、登山道を瑞牆山荘まで下山。
約12時間の行動となった。

D峰の頭に懸垂支点がなかったことからも、D峰正面壁は未踏だったのだろうと思われる。(情報あればぜひコメントいただきたく。)
そしてD峰から、上部の岩峰につなげれば最低でも10ピッチは越える長いルートとなると思われる。しかも内容も相当濃いものとなるのは必至。
アプローチが長いので、取付きで一泊くらいのつもりでやらないとだめだろうな~
気力が高まったらやってみるかもしれないし、どなたか試みる方がいるなら喜んで情報は提供させていただきます。なんか上の岩峰たちも未踏な気がするな~

関係ないけど、アプローチから通してこの辺ってきのこの宝庫らしい。
もひとつ関係ないけど水晶もいっぱい落ちてるらしい。真帆ちゃんは大喜びで拾い集めてました。
今回のトラックログ

佐久・天狗山中段岩壁左稜

山巡若手女子の斉藤真帆ちゃんと前穂高岳でルート開拓の予定が、北杜市ベースでその辺登り歩きとなった3日間。その最終日です。
2日目は瑞牆山でワイルド系クライミングをやって、結構疲れてもいたので、軽いクライミングをしようということに。

ところで今まで、天狗山南面岩壁群にいくつかのラインを引いてきたわけですが、残された課題が、下部フェースから中段岩壁を登って上部岩壁をかすめて山頂に至る一本のラインでした。昨年これを一気に登ろうと、北杜市在住クライマーの今井エリサさんと出かけました。

天狗山南面岩壁群の概略図
2023年10月、下部フェース2P目。

2023年10月。エリサさんと下部フェースにトライ。
傾斜の強い逆相のフェースに2ピッチ分ロープを伸ばし、下部フェース最終ピッチと思われる3ピッチ目の途中、赤沼が記憶を飛ばすという事態がおきました。自分がどこにいて、何やっているかわからなくなってしまったのですよ。実は前日まで妻とテント泊で仙丈ヶ岳に登って帰って来たばかり。少々のつまみで酒を飲んで寝てしまい、早朝からパンを一つ食べただけでエリサさんと飲み食いを忘れて登っていたのです。
当日の様子は当ブログには書いていませんが、Facebookの山巡ページに投稿をしていたので以下に引用しておきます。



まあそんなわけで、下部フェースから上部につなげるラインが残された課題となっていたのですが。

でもここを登りなおすのはさすがに「軽いクライミング」とはならないので、下部フェースはいったん置いておいて、中段以降を登ってみようということになりました。

馬越峠から天狗山山頂を越え、男山方面に少しあるいたところから樹林を下りて中段岩壁に向かう。
中段岩壁は傾斜強めのフェースなので、その左スカイラインあたりが軽めの楽しいクライミングになるのではないかという目論見です。
樹林をおりていくとリッジの末端に出たので、これが中段岩壁左稜だと思い取付きました。(実は間違ってた)

岩稜末端に出たのでここから取付く。

お!いいぞ!思い描いていたようなやさしく楽しいクライミング!と思いつつ登っていくと、岩稜は1ピッチだけで樹林の尾根になってしまいました。
ふと右を見るともう一本の岩稜があります。
あれ?そういえば中段岩壁の左稜だったら右側がフェースになっていて樹林のわけないよな~。

しょうがないので、右の樹林をクライムダウンして正しい中段岩壁左稜の取付きへ。

中段岩壁の左稜取付き。
下部フェースによく似た、天狗山特有の傾斜が強い逆相岩壁です。

左稜そのものは樹林がかぶさっていて歩けてしまいそうなので、あえてこの逆相フェースに取付いてみます。
カムを効かせられるような節理が乏しいので、ハーケンを打ちながらの厳し目フリークライミングです。

結構厳しいクライミングとなり、壁の半ばでギアが切れてしまいました。(なんか最近このパターン多いな~。クライミングをなめすぎて装備が足りなくなるのは老化現象でしょうか。)

壁内でトラバースをしてしまったので、若干怖いんですが、最後のハーケンに捨て縄をかけてクライムダウンで取付き付近まで戻ります。
途中で打ったハーケンも回収。

左の樹林には突っ込まないが、難しすぎないという微妙なラインを登りなおして1ピッチ終了。こちらもこれで樹林の尾根になります。

フォローする真帆ちゃん。

あとは樹林を歩いて行けそうなんですが、さっき登ろうとしていたフェースで楽しいフリークライミングができそうということで、真帆ちゃんはここからロープダウンしてトップロープで登ってみることになりました。
ついでに先ほどのハーケンと捨て縄も回収してもらいます。

最後はかぶってきて、5.10bくらいかな?とか言いながら登ってくる真帆ちゃん。ハンガーボルトでも打てば楽しいフリールートになりそうだそうで。

トップロープでフリークライミングを楽しむ。
樹林の尾根を辿っていくと、上段岩壁部分も樹林歩きで終わって、山頂直下の天狗山ダイレクトの終了点付近に飛び出します。
今回の足跡を描きいれてみました。

瑞牆山・カンマンボロン中央洞穴ルート

このルートを登るのは赤沼にとって3回目。
2013年の7月に登ったのが最初で、当ブログにも記録をだしていますが、あっさりしたものです。
2016年に何人か(たしか6名?)でぞろぞろ登った際は、宴会前にフリーで登れるお気楽ルートとか言って連れて行き、あとからメンバーに「これのどこがお気楽じゃ!いらないとか言ってたあぶみいるし!」と怒られた記憶が。アッコちゃん頭から湯気でてたなぁ。

さて今回。

パートナーは山巡唯一の若手女子、ワイドクラック大好きな斉藤真帆ちゃん。
平日3日間のお休みをとって、前穂高岳でルート開拓の予定でしたが、日本列島は暑すぎて雷雨が怖い、奥又白で熊3頭の目撃情報もでたばかり(親子だよね~)、体調もなんだかな~ということで二人にとってのベース、山梨県北杜市を中心に天気のよさそうなところを登り歩く作戦に切り替え。

初日は唯一晴れマークのついている軽井沢近くの恩賀高岩を目指しましたが、想定通り(?)のヒルにおびえて敗退。

登山口付近で立ち話した地元のお二人が「大丈夫かな~」とか仰ってて、「ヒルですよね。ヒル除けのパウダー持ってきてますんで!」とか言いつつ入山して、ものの10分ほど?で帰ってきてしまった。帰りがけも地元の方は作業中で、若干気まずげに「ヒルすごかったです~」とか叫ぶ真帆ちゃん。

さて2日目。瑞牆方面が天気よさそう。
真帆ちゃんにルート選択をまかせるとワイドクラックでいじめられそうなので、「真帆ちゃんにはものたりないかもしれないけど・・・」と、以前登ったこのルートの写真などを見せると「ここいいですね!行きましょう!」となった。しめしめ。

植樹祭広場の手前から踏み跡を30分程度で取付き。
顕著なオーバーハングを目指します。
ルートはオーバーハングの右の切れ目。ここが洞穴状になっていて内面登攀でハング上に抜けられるので「中央洞穴ルート」となっています。

見た目怖いですよね~
「あれ?こんなやばそうな壁だったっけか?」と内心びびる赤沼。

なぜかハング上から固定ロープがぶらさがってます。

右側の草付きルンゼが正解なのはわかっているのですが、「真帆ちゃんには物足りないだろう」と、あえて左の岩場部分を登ってみます。
岩に穿たれたような穴を使った独特なクライミングでスタート。

あとで聞いた話ではこの紋様が梵字に見えるということで、カンマンボロン見学ハイカーの観光対象になっているとか。

かなり難しくて、あとちょっとでルンゼに合流するかというあたりでギア切れ。ピッチを切って、垂直部のどまんなかで真帆ちゃんを迎えます。

岩にあいた穴をくぐって出てくる真帆ちゃん。

ビレイしながらルートの様子を眺めていてひとつの疑念が。
これ中央洞穴ルートじゃないんじゃない?
以前に登った印象からするとやばすぎるのですよ。どう見ても。

「これルート違いだね!降りよう!」と赤沼。
「いや!見せてもらった写真の通りです!」と真帆ちゃん。

まあ何はともあれ懸垂で草付きルンゼに戻ろう。
少し先に懸垂支点になりそうなボルトがあるので、そのまま真帆ちゃんに行ってもらいます。

ここがだいぶ難しいあぶみトラバースとなり、しかも想定していたボルトは「古すぎて怖い」ということで、さらにルンゼ中央に見えている支点までトラバース。その支点を仲介してルンゼ内のテラスまで真帆ちゃんをロープダウン。

その後、赤沼が支点までトラバースしてから、真帆ちゃんにロープダウンしてもらうという凝ったロープワークでルンゼ内のテラスに無事降り立ちました。
(写真はロープダウンされてる赤沼)

ルンゼの底から上を見上げて「あ、やっぱこれが中央洞穴ルートだな~。それにしてもこんなに難しそうだったかな。」と赤沼。

真帆ちゃん怒ってるよ。
またまたパートナーを怒らす赤沼。
じいじは記憶がやばいし、トポ見ないし、適当なやつだって言ってたぢゃん!

正規ルート?に戻ったものの、この先のフェースも立ってるな~。
ここは真帆ちゃんに行ってもらおう。そうしよう。

このピッチは急なフェースを直上してからいよいよ洞穴内に突入していきます。

洞窟内に突入。
燕がやたらと飛び交う洞穴内。
やばいフェースの後は泥だか燕の糞だかのラッセルどろどろピッチ。
ラッセル汚いし、じいじはいい加減だし・・と心折れかけてる真帆ちゃん。ルートは写真左手のどろクラック?を直上。

泥壁はどうせ赤沼の出番。

泥臭いけどそれほどボロクもなく、ガバホールドも多いので見た目ほど難しくはないのですよ。

チョックストーンを廻り込んでいくといよいよハング直下のテラス。

振り返ってビレイ中の真帆ちゃん
チョックストーンを廻り込んで上のテラスから

見上げるといよいよ大ハング。
このフェースを右上トラバースしながら、小さくあいた穴に向かっていきます。

薄被りのハングを越えたり、ハング下をすこし下りながらトラバースしたりとルートファインディングがものを言います。
高度感たっぷりで楽しいピッチです。

じわりじわりと穴に向かう。

このへんのルートファインディングが難しい。

トラバース中、ビレイヤーを振り返る。

最後は足を突っ張って行くか、左のフェースを行くか。

最後のチムニー部分。真帆ちゃんはフェースを登って来た。

チムニーを抜けたあとワイドクラック少々登るとまたハングにあたる。

ハング左側のフェースを、連打されたボルトを使って人工登攀。

ハング上に出るとフリーになって、ワイドクラックのランアウトピッチ。
これでルートは終了。
カンマンボロンのピークにあがると、大面岩方面にフィックスロープがあって、大面岩とのコルに。
さらにコルから2ピッチの懸垂下降で樹林帯に戻れます。

さて。
今回もお気楽ルートだよといいながら来たわけですが、なんかやたらと難しく感じましたね~。
最初に登ったときの写真を見ると、核心部でも2~3本しかランナーとってないようだし。
今回は同じピッチで、すべての残置支点にランナーかけて、しかもテンションありあり。
ついに11年前の自分にだまされる始末となりました。

じいじはじいじを知る機会とはなりましたがね~

ところで翌日、天狗山に行った帰りにナナーズ川上村店の敷地内にあるクライミング用品の店「ルーフロック」に寄って瑞牆山の岩場のガイドブックを確認すると・・・・このルート出てないぢゃん!今回はじめて登った隣のルートの名前なんかもないかと期待していったのですが、このエリア全体が白紙となっておりました~。
瑞牆の忘れられた白紙地帯なのか?はたまた梵字のある聖地で登ってはいけなかったのか?

クライミングジムの効用

「クライミングジム通いで、山歩きは上手になるか?」という雑談です。

山岳巡礼倶楽部では代々、「逃げの山巡」なる謎ワードが語り継がれていました。
要はすぐに日和って、下山して、酒飲むよってことなんですが。
自己卑下のふりして実は「判断が早くて」、「撤収の段取りがよくて」、「下山の歩きが速い」という、うざめの自慢話だったりもしますね。

山を歩く技術ですが、なんといっても下りでその差が出ますよね。
登りももちろん歩き方で体力温存できたりはしますが、下りではさらに体力面、スピード面、安全面で差が出るかと思います。

幼馴染の妻とは約10年前に、それぞれが配偶者を亡くして再婚しました。

登山経験のほとんどない妻と軽い山歩きにちょこちょこと出かけてました。
2018年には少しレベルアップしてみようということで、夏のシーズンに向けて少しずつステップアップしていって最終的に穂高岳の山頂に立ちました。

そして雪山経験も少しずつ積んだりしながら昨年、稜線でのテント泊登山を経験したのがきっかけで、妻の登山熱が一気に加速。


今年は妻の方からいくつも行きたい山の提案がされてます。そんな中、妻にとっての山歩きの課題は「下りが苦手」でスピードが出ないこと。下りがもう少し速く歩けると、同じ日程でも山の選択肢が広まるし、体力的にも楽なので結構重要。

どうしたら下りの歩き方がうまくなるのか?

私も含めて若いころから山をやってきた人の多くは、あまり考えたこともなく、いつの間にか歩けるようになってたんではないでしょうか?

猫のように歩け?
足音は立てないように!
びゅわ~んと歩けばいいんだよ。忍者になれ!
根性だ!

そういう経験則や精神主義は、年齢とってから山を始めたおばさんには通用しません。

山を下るときのテクニックを分解してみました。

  1. 次の一歩を出す際、もっとも足が置きやすく安全な場所を選ぶ
  2. 選んだ足場に足を移すバランス移動
  3. 選んだ足場にすべらないように立つためのフットワーク(足の角度とか、向きとか)
  4. 上記2,3が上手くなれば1の「足を置く場所の選択肢」も増える。
  5. 今の自分の能力内で、今自分が足を置く場所を選択し、足を移動し、バランスを保つための判断力とそのスピード

あれ?
こうして分解してみるとこれって、岩登りの際のフットワークとほとんど同じじゃない?

たしかになんとなくですが、昔からクライミングの上手い人は歩きも上手いとは言われてましたよね。

じゃあクライミングはどうやったらうまくなるの?
これはもう反復練習と才能につきますよね。
才能は鍛えられるのかわかりませんが、クライミングジムや岩場での練習ならできますな。

というわけで妻を連れだしてクライミングジム

一番簡単そうなルートで、オブザベーション。
歩きでも事前にどこ歩くかの判断はしますからね~

一番簡単な緑色の課題。
でも2歩目でどこに立つかで、その次の動きが変わるよね~とか言いつつ。

足をどっち向きに置くかでバランスのとり方が変わってくるよ。

まあそういう思い付きの蘊蓄が役に立つのかどうかは置いておいて、テクニカルなボルダー課題よりは、単純はしご登りに近いトップロープ課題で経験値を積みましょうとなって。

まあいろんな思惑にまんまとはまって楽しくなってしまったらしい。妻もクライミングジムの会員となり、ジム用の靴下まで自分で買って帰る始末。
夫婦共通のお遊びも増えたし、これで歩きが上手くなってくれれば最高ですな。どうなることやら。

ちなみにこのジムは北杜市のロクボクです。
最近リニューアルしてリード壁も増えました。
スタッフもお客さんもフレンドリーでのどかなムード。
素敵なクライミングジムですよ。

佐久・赤顔山南壁

その辺の崖シリーズ。
赤顔山の第二弾です。
先月、情報のないこの壁にとりあえず触ってみようと出かけて左稜を登って来た
ただの崖と思っていた南壁だけど、案外迫力があって、規模は小さいけどちゃんとした壁っぽいよね~という感想。
今回は基部を歩き回って、登れそうなラインがあるかどうかの偵察に行ってきた。

こんな感じで歩き回った。

ところで今回は一人。
大声でしゃべりまくって熊を寄せ付けない相棒がいないので、できる限りの熊対策をしてきた。

熊鈴に笛、それに青森の農家が熊を寄せ付けないために使っているという匂い袋「クマヲボル」。そして今回から熊スプレーも追加。さらに最新の軽いストックでなく、重くて太いストック2本持ち。最後はこれで戦うのだ!
先週妻と雨飾山に行った際、どうも熊と思われる動物に接近遭遇。やや過剰でも登山道のないところばかり行くにあたってこれくらいはしておきたいよね。

左稜に向かってトラバースしていき、途中から歩きよさげなところを壁に向かって直上。

スラブ状のフェースが立ちはだかる。フリクションはよく効くし、硬そうに見える。
出だしは小川山のガマスラブのような感じで、すたすた登れそうだが、上に行くほど傾斜が強くなり、最後はいくらかかぶった感じ。
2本ばかり登れそうかな?というラインを見出し、GPSアプリに取付きポイントを追加。登ってもいないのにルート名を付ける。左上バンドルートと左壁スラブ。どちらもトラバースを繰り返しながら弱点を追うルートになるだろう。(登れればね)

最後のかぶった部分を左へ逃げられるかな?

登ってもいないのに名前をつけた左上バンドルートのあたり。やはり最後のハングをどう処理するかがポイントかも。バンドも全部つながっているか見切れない。

小川山のガマスラブのような出だし。最後がハング。

この辺は素敵なフェースだけど、ちょっと取付く気がしないな~。

左のスカイラインあたりがこの間登った左稜。

左壁の右寄りは傾斜が強くなってくる。登るならいずれにせよハングの切れ目に向かうことになりそう。

右に目を転じるとどこも傾斜が強く、圧迫感がある。

基部を右方向にトラバースすると上部のハングが大きくなってくる。手前の傾斜も強まる。このあたりが岩壁中央部左よりってなところ。壁は見た目ほど脆くなさそうだが、登るにはかなり手を焼きそう。

右へ行くほど上部はかぶってきて、しかも手前の壁もイワタケに覆われてくる。この辺は登る気しない。

ところどころハチの巣もあるので要注意。

こんなんもあったよ。

壁の真ん中あたりに滝がある。
この辺が壁の高差としては最長かも。それでもまあ2ピッチというところかな。
バンドをうまく拾っていけばフリーでいけるかもしれないが、簡単なクライミングにはならないでしょう。
さらに右へ行くがもうすべてがハングになってきて、じいじクライマーの対象外。

基部をより岩場に近く左に戻っていくと、左壁あたりに切れ込みがある。これを登ってみると、左壁をましたに見下ろして高度感いっぱいながらも木登りと歩きで岩場の上に出てしまった。

終了点。
なんか見覚えある場所だと思ったら、この間登った左稜の途中でした。

終了点に鹿の角。北杜市の家にでも飾るかとザックの中に。

赤顔山の偵察が終わったら、赤顔山から天狗山の稜線に抜けて、以前に登った南稜でもおりてみようかと思っていたけど、梅雨の晴れ間は蒸し暑くて・・・・やる気なくして右稜を下降。ほんの2時間半ほどの偵察行でした。
ところで一応これって南壁登ったことになるの?
ていうか。
終了点手前のバンドにある木の枝がはらってあったよ。
山仕事の人の道だったんかな?

トラックレコード

【メモ】

南壁はおおむね3つのフェースから構成される。
左壁は岩質のよいスラブ状フェース。傾斜は上にいくほど強くなるが、ところどころ灌木があり、少ないながら節理もある。最初にクライミングをするならこの辺かと思う。規模は1ピッチ程度。
中央壁は滝のあるフェースの左右に広がる急峻なフェース。高差はこの辺が一番ある。フリーで登れる?としたら滝の周辺かも。それ以外は上部がハングとなっている。
右のほうは全体的にかぶり気味で赤茶けた岩がどのくらい硬いのかは疑問。一見脆そうに見えるが。難しそうだが規模はさほど大きくない。ハチの巣も多い。

赤顔山偵察のトラックレコード(gpx)をダウンロード (Dropboxリンクです。)

佐久・赤顔山南壁左稜

その辺の崖(壁?)です。
川上村の男山、天狗山、五郎山と岩峰でのクライミングも大方(自分に登れそうなラインは)片付きはじめて、ついにその辺の崖に手を出そうかという段階・・・・なのかな?

まあ気にはなっていたわけです。
天狗山の手前に割と印象的な赤く脆そうな崖があって、それなりに目立っていたんで。
ナナーズ川上村店あたりからは結構迫力あるように見えるし。
ちなみにナナーズ川上村店では、つよつよクライマーが二人もレジ打ってたりするし(2024年6月現在)、その敷地内にはルーフロックというクライミングショップがあって、代表の北平さんはじめすごいクライマーだらけ。
その周辺でも赤顔山(あかづらやま)の岩場はそれなりに注目?はされていたみたい。(ルートがあるという未確認情報もあり)

それともう一つ。
悲運の皇子、重仁親王が南相木村から臨幸峠を越えて川上村の御所平に居を構えていたという説がありまして。
その説によると、白馬に乗って臨幸峠を越えてきた重仁親王の姿がご神体として祀られたのが、赤顔山の下(一角にある内裏山というのが本体?)御霊社であるらしい。


川上村村誌によるとそのような記載があるらしい(私は未確認)が、今では産泰神社として藪と墓場の裏に隠されたかのように祀られております。

そして臨幸峠からつづく稜線上にあるのが天狗山、馬越峠、そしてなんと御陵山(おみはかやま)。御霊神社(産泰神社)の上が内裏山、そして赤顔山。なんか悲運の皇子との関連性を疑ってしまうような地名が並んでおりますな~。ちょっとそんな興味というか、やじうま目線もあって赤顔山にはなんとなく気が引かれておりました。

さて6月20日。
どこか山行きたいな~と山巡唯一の若手部員真帆ちゃんに都合を聞くと、「午後半休ならとれますけど・・・」って。
私は私でちょっといろいろ疲れ気味だったりするし、長い山歩きよりは軽いクライミングがいいなと思い、「じゃあ気になっていた赤顔山に手を出すか!」となった次第。
先日南稜に行った際駐車した大深山遺跡の駐車場から歩けば近そうだし、壁も大きくはない。半日あれば十分だろう。

大深山遺跡見学者用の駐車場からスタート。

すぐに大深山遺跡。
縄文中期の遺跡で全国でもまれにみる大型遺跡で、竪穴式住居が52戸も見つかったそうだ。

大深山遺跡を越えてさらに林道を使って山腹をトラバースしていくと、赤顔山の南面岩壁が見えてくる。
思っていたより崖の規模が大きいかも。
真帆ちゃんは「これは崖じゃなくて、列記とした壁です!」と主張。

いずれにせよ悪そうな岩場だな。

よく観察すると左によるほど傾斜は落ちて行き、登れるかもという感じ。右側は赤くて脆そうな岩でかなりオーバーハングしている。

登るのははじめから想定していた左の壁ぎわライン。
木登りに終わるのか、少しは岩登りができるのか。
少なくとも右側の稜よりは岩が多く露出して見える。

林道が終わったところから左稜の末端を目指して樹林をトラバースしていく。

それとすぐにわかる左稜の尾根に出て、少し登るといかにも取付き!という岩場となる。難しくはなさそうだが一応ロープをつけてスタート。

じゃんけんに勝った赤沼からリード。
お!なんか楽しいぞ!
岩は硬いしフリクションもよし。
絵に描いたような楽しい3級岩稜コースではないか~!

「楽しいではないですか~!」
と登ってくる真帆ちゃん。

そのまま真帆ちゃんが2P目に突入するが、かなり傾斜も落ちてほぼ歩き。

一応ビレイはしてます的な?

ここからはロープはずして行こうか~と、雑に巻いたロープを肩に歩き出す。木の根っこつかんで、時折出てくる露岩のクライミング。松の葉っぱが滑って少し怖い。

岩登りとは言えないが、いい感じの尾根歩き。でも右側は岩壁が切れ落ちていて大迫力。

尾根の右側は迫力の岩壁が展開。
右稜はなんだか木に覆われてそうだな。

登るとしたらいくらか傾斜の落ちる左よりですな。天狗山と同じ岩質だとしたら逆相で結構苦労するかも。

時折ロープを出すけど、いらないレベルでした。

こんな感じの岩稜をすたすたと登っていくので、身体にはこたえるが、どんどんと高度を稼いでいけます。

尾根の最後がかぶった岩場になっている。

一応ロープをつけて登っていくとまもなく終了点。

なんだか絵に描いたような終了点。
この尾根、岩登りっぽくはないんだけど、最初と最後がクライミングルートっぽいのが笑える・・・というか、とても楽しい気分になるところですな。

というわけで、自撮りのツーショット。

岩場の終了点から赤顔山までは踏み跡らしきものもあり、軽く赤顔山山頂を往復。

赤顔山山頂手前には少し岩登りっぽくなるポイントもある。

赤顔山山頂の標識は文字が消えているものの、その上に小さく山名が書いてあった。北杜市のパン屋エルベテルのウィンナーロールとツーショット。

左稜を登ったから、今度は右稜を下降してみようと、岩場の終了点あたりまで戻ってくる。下には川上村が広がる。ナナーズがよく見えてるね。

川上村のナナーズを望遠撮影。ルーフロックもわかるね。

右稜は案の定岩場とは言えず、樹林ごしに歩いておりていく。少しおりるとさっき登って来た左稜が見える。

右稜の急斜面をおりていくと傾斜の緩い笹薮となって、登って来た林道に出る。

赤顔山南面岩壁左稜を登って、右稜を下りたわけ。こちらがトラックレコード。

11:20am 大深山遺跡
12:15pm 左稜取付き
13:00pm 左稜終了点
13:40pm 赤顔山山頂
14:20pm 右稜下降終了
14:40pm 大深山遺跡駐車場

半日かからないかる~い岩稜クライミング&ハイキングでした。

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