金城山は巻機山の北西約5.5kmほどに位置する1396mの山。
つばくろ岩は金城山から東方向に伸びる登山道のない藪尾根800mほどのところにあるイワキの頭というピーク南面の急峻なスラブ壁で、高差250mほど、幅300mほどにわたって展開している。一言でその特徴を言えば、越後の超マイナーな悪壁。
1970年台ころにあらかわ山の会、江戸川山の会、東京稜行会などによって何本かのルートが登られ情報もまとめられ、あらかわ山の会のホームページには一部公表されていたらしいが、今年2025年に会が解散となりホームページとともに情報もなくなってしまった。

今回のパートナーは野島梨恵さん(ぶなの会)。
今までに甲斐駒ヶ岳摩利支天の岩壁や雨飾山ふとん菱、それに海谷の海老嵓などでクライミングを共にした頼れる相棒。

「自分は草付き泥壁の中で至福を感じる沢屋」と言い切ってるだけあって、まるで呼吸をするように沢を歩き藪をこいでいく。

前穂高の南面で赤沼懸案のリッジルート開拓につきあっていただく予定だったが、天候不順で転進。
梨恵さんは15年も前からつばくろ岩を狙って情報を集めており、何度かこのエリアを訪れてはいたが、まだつばくろ岩本体を特定することもできずにいた。
転進先はここにした。

上の写真に写っているこのあたりがつばくろ岩だったということが、登ってみてはじめてわかった。

実はこのつばくろ岩、赤沼の知り合いでもある山登魂山岳会の鮎、オーブコンビが2009年5月に登り、往復たった6時間で登山口に帰還している。
それを見て昼までには帰るつもりでいたのだが・・・・

5月の残雪を利用してのアプローチとは裏腹別物。
「雪がなくても河原歩きで簡単に行けるだろう」なんて考え、無雪期の越後の沢の悪さを想定していなかったのはそもそも大ポカだった。

雪崩に磨かれた花崗岩系の滝がいくつも続く。
ボルダリングレベルの難しいクライミングで越えたり、延々と草付きと露岩を越えて巻いたりが連続する。
赤沼が登りだした側壁は悪すぎていきづまり、泥クラックに突っ込んだカムを捨てて懸垂しておりたり・・・・
梨恵さんがチョックストン滝を、空身になってカムと泥に打ち込んだハンマーのエイドで越えたり・・・・
垂直の藪をロープクライミングで尾根まであがっての高巻きがあったり・・・・
岩壁の取付き付近まで実に7時間の奮闘的な沢クライミングとなった。

さてどうやら取付き付近にたどりついたようだ。
で、どこ登ればいいんだ?
まわりじゅう垂直の藪と垂直のぬめりまくったルンゼといや~な感じのスラブ壁しか見えん。
しょうがないので↑こいつの右端のほうを登りだしてみる。
いやな態勢でハーケン打ったりしながらようやく岩壁帯にたどりついたけど、簡単に登れそうには見えない。
山登魂の2人はフリーソロであっさり越えてるらしいんだが、これどう見てもロープつけて、ボルト打ちながら奮戦する壁でしょ?
ふと振り返ると、谷の向かい側に気持ちよさそうな、つまり傾斜のゆるいスラブ壁が稜線近くまで続いているじゃあありませんか。
さっさと懸垂でおりて、そちらにトラバース。


いやいや。こんな快適なスラブ壁でしたよ。
これがたぶん山登魂のふたりの登ったS字スラブだろう。

ともあれ楽しい岩登り自体はあっという間におしまい。
これでだいぶ高度は稼げたけどね。

稜線に近づくと傾斜の強い藪漕ぎといやらしい露岩のミックス、つまりとてもとても越後らしい岩壁になってくる。佐梨の岩壁登ったことある人ならどんな感じかわかると思う。
下に向かって生えてるしゃくなげの根をつかんで、ぬめった露岩に足をこすりつけて、ほぼ腕力で身体を持ち上げて行くような、体力の消耗の激しいクライミング。根っこをがっちり持っている限り怖い感じはしないんだけど、間違って落ちたらまあ助からないでしょう。(そういうパートは余裕なくて写真も撮ってないす。)

岩壁部分を抜けて少し傾斜が落ちてくるも、藪漕ぎはかわらず。

もうすぐ稜線。


稜線にでたところのピーク「いわきの頭」。
登山道の通っている金城山までは1キロほどの藪稜線。
暗くなると同時くらいに金城山にたどりつき、あとは嵐となってしまった中、すべりやすい登山道をおりて登山口にたどりついた。14時間ほどの行程となった。

高棚川林道途中0622am-二股0855am-小峠付近1030am-つばくろ岩基部1330pm-イワキ頭1618pm-金城山1744pm-観音山(雲洞)登山口2030pm-タクシー-高棚川林道駐車地2045pm