金峰山の南面に展開する岩壁群、千代の吹上。
アプローチが長いこともあってか、あまり登られていないが、その中でも記録の見当たらない第三岩稜。
先月(2024年9月)ここを訪れ、第三岩稜がおおよそ4つの岩峰からなっていることがわかった。便宜上、上からA峰、B峰、C峰、D峰と名付け、その時はD峰の正面壁を登って来た。

パートナーはハンターでカメラマンの田丸さん(東京ヤングクライマースクラブ)。
藪歩きがすさまじく速く、鹿に出くわすと人格が変わる。
自動車メーカーの専属で撮影をしていたこともあって、車にも詳しいらしい。

前回はなが~い瑞牆山荘からのアプローチでばてたので、今回は大弛峠から金峰山を越えて行くこととした。これで1時間ほど節約できる。前夜は大弛峠にて、田丸さんの車中泊仕様の軽バンで宴会。案の定飲みすぎの感が・・・

前回D峰を登ったのでつづきを登ろうという予定。
小さく見えるC峰は割愛して、B峰~A峰を続けて登るつもり。
かなりロングルートとなりそうなので、大弛峠を早朝出発のつもりだったが、前日の雨が乾くのに時間がかかりそう(という口実で飲んだんだけど)なので、目的をA峰のみに絞って少しゆっくり目に出発。

稜線から撮影した第3岩稜の上部。左のほうに見えているピークがA峰の頭。(下から見るとここで第3岩稜が終わって見える)
おぢさん二人で名づけるとしたらたった一つのワードしか思いつかないA峰の頭。下から見るとよりそれらしい。ここに立ちたい。

稜線から見て第3岩稜の左側ルンゼをクライムダウン。懸垂下降しようかという程度の急な斜面だが、樹林を使えばなんとか下りられる。

目的のA峰の下部に到着。
B, C, D峰が下方に見渡せる。
D峰の頭には先月懸垂下降用に作った支点につけた捨て縄が見えている。
B峰は上から見てA峰より右よりに稜線を伸ばしている。そしてB峰とA峰の下部はのっぺりしたスラブ帯でつながって見える。B峰からA峰につなげるとしたら、このスラブを登るか、弱点となりそうな草付きを登ることになるのか。

B峰からさらに上に伸びる岩稜。

B峰上部の岩稜は第3岩稜に向かって伸びてきており、その終了点が合流しているのか独自に稜線に向かっているのかは確認できなかった。
手前のスラブ壁はA峰の下部ともいえるところ。この下がさらにB峰の側壁とつながっているようだ。
このスラブ壁は手掛かりがなく、簡単には登れそうもないので、A峰のピナクル部分の末端から取付くこととした。

A峰の1ピッチ目(正面のフェースはグラウンドアップでは手がつけられず、ピークを右側から回り込むようなラインとなった。)

1ピッチ目の出だしはクラックがいくつか切れ込んだフェース。後半はフレアしながら右上するワイドクラック。
まだ若干濡れているし、フェース部分は表面が風化していて、気を付けないとスタンスを壊しそう。
見た目より悪いフェースから右上ワイドクラック。
クラック左側がハングになっているため、右のカンテにトラバースしたいのだが、風化しているうえ、ホールドも乏しく苦労する。
ハング下の泥つきクラックにいれたカムにあぶみをかけて右フェースに乗り移ろうとするが、どうしてもハングに頭がつかえてバランスがとれずに振られてしまう。今回借りて来た、私のより高級な妻のヘルメットを泥ハングに何度もこすりつけてしまった・・・・
バランスを維持するためフェース部分にボルトを打ち、そこにもあぶみをかけてなんとか右のフェースに乗り移ることができた。ふ~。
あまりの激闘ぶりにビレイしていた田丸さんも緊張していて、赤沼の雄姿は撮影ならず。

1ピッチ目。右上するワイドクラックからフェースに移る部分を登る田丸さん。

2ピッチ目。
1ピッチ目でA峰ピークの右側裏に回り込んできたので、振り返った頭上がA峰ピーク。登路を探して少し右(手前)に草付き帯をトラバース。

薄い苔に覆われた露岩帯を木登り。いやらしい登りだ。
A峰ピークよりも稜線よりに大きなスラブ壁が見えており、登り口まで行ってみた。手の付けられそうもないフェースに残置ボルトが一本。
ん?誰か来たのはわかるが、ボルトの上は登れそうもないぞ。
どうも登ったようには見えないので、A峰ピーク寄りに戻る。
ジェードル状になった薄被りのシンクラックがある。
泥もつまっているし大変そうだが、もうここ以外に登路がなさそうなので、1ピッチ目で疲弊した身体に鞭打って取付く。

3ピッチ目のシンクラックはいきなりのカムエイド。左側がかぶり気味で、またまたバランスのとりづらい登り。
右の風化花崗岩に右足をこすりつけ、左足はあぶみという状態で苦労して伸びあがってはつぎのカムを設置するというハードな登り。小型カム中心に6ポイントで右のフェースに移る。

第3岩稜の主稜線部分に出て3ピッチ目を終了。件のピークは後ろ側になってしまった。

4ピッチ目は金峰山の稜線に向かって伸びあがる岩稜。

小ピークをひとつ登ったところでピッチを切ってもらう。
件のA峰ピークの上で写真を撮ってもらうためだ。

ビレイ点から戻るようにA峰ピークまで行って写真を撮ってもらう。

またいでいる隙間をのぞき込むと、50cm程度のチムニーが下のほうまで続いている。ここを登りたかったな~。ここを登って、この隙間から顔を出すことができたら、中尾さんには悪いけど別の意味?で「生まれる気分」が味わえたかも。(瑞牆山で中尾さんの開拓したルートの名前です。)

これが第3岩稜最後のピーク。

最終部分は面倒そうなフェースなので割愛して、ここから左にトラバースして樹林に入る。

第3岩稜終了点

歩き部分もいれて全7ピッチのクライミングでした。
A峰だけちょろっと登って、物足りなかったら第2、第3岩稜の中間にある小さな岩峰でも登ろうかなんて言っていたが、激闘ピッチふたつを含むハードな内容となり、もう二人ともへろへろでした。