アルパインクライミング・沢登り・フリークライミング・地域研究などジャンルを問わず活動する山岳会

カテゴリー: 山行報告 Page 1 of 10

瑞牆山十一面岩

金峰山の千代の吹上、第三岩稜の中間部分(上部と下部を登った登り残し)を登る計画だったが、さすがに11月に入って気温が低いうえ、風の強い予報。
「これは楽しくないよね~」ということでの転進。

パートナーは瑞牆山でいくつもの高難度ルートを拓いてきた中尾政樹さん。ヒマラヤ、サトパント南壁の初登やシブリン北稜を登った、アルピニストでもある。

「千代の吹上が中止なら、瑞牆山で軽いクライミングでもして、情報交換がてら飲みましょうか?」という魅力的なお誘い。
難しいルートばかりの印象で、怖くて手を出せなかった瑞牆山を、そこの主のような人に案内してもらえる絶好のチャンス。逃すわけにはいかないよね。

朝ゆっくり目に駐車場で待ち合わせ、どこに行くのかも知らずただついていく。天気も上々。なんかガイド登山の客というか、素敵なレストランで有名シェフにおまかせフルコース頼んでワイン飲んでるような気分?
どこに連れてってくれるのかな~ルンルン♪てなもんで。

40分ほどの歩きでついたのは、中尾さんも岩場の名前をまだ決めかねているようなところらしい。位置的には十一面岩の末端の末端の末端・・・あたりらしい。すでに登られたワイドクラックから、まだ掃除の終わってない(誰かほかのクライマーが掃除してるかも?なんてことらしいが)、未踏かもしれないクラックにつなげようという作戦。

ここは中尾さんも以前登っているらしい。赤沼も久々でテーピングばっちり・・・のつもりが、ずっと使わなかったテーピングが古すぎて粘着力が怪しい。
「それはだいぶ古いね~。いつから使ってないの。」
と笑われましたです。

中尾さんリードで離陸。
出だしがかぶっているけど、核心部は上のほうだった。

赤沼もがんばって、いんぐりもんぐり中。
ワイドクラックって息が切れるし還暦すぎのおじさんのやる遊びではないよな~。中尾さんは息も切らしてなかったみたいだけど。

ぜーはーぜーはー。
リードしてるみたいに見えるけど、ちゃんと上にロープついてます。

2P目も中尾さんには既登部分。
真っ暗なチムニー内を、クラックを使って登り、最後はうしろの壁に体重かけて休めるという特典つき。きわめて楽しいピッチです。

この辺が核心部。

さて未踏かもしれないこのピッチ。
「誰か掃除してくれてるらしい。登ってみよう~」と中尾さん。

でも取付き部分のハングが脆すぎてだめ。
ここは浮石落とし切らないとだめということで、頭の中は宴会モードに。

当然夕方から我が家で酒宴。
まあ話がはずむこと。
楽しい夜は更けていきました。

たまにこういう観光気分のクライミングもいいもんだね~、って割といつもそんな調子か?

冷山の黒曜石巨大露頭

山巡じじい会による黒曜石の巨大露頭探索行は、メンバーのわたべ氏の発案で始まった。
「なんでも大型バスサイズの巨大露頭が北八ヶ岳にあって、研究者たちはそれを見つけているけど場所を隠しているらしいぞ!」
というわけ。

やじうま根性にもとづくリサーチ(研究者の論文から場所を特定できそうなところを探したり、Google earthで探したり・・・)のうえで冷山周辺を散策した際、案外と簡単に露頭にたどりつけそうなヒントを得てしまった。(そのヒントを上記リンクの投稿に記載したら、それを見てたどり着いた方がいたようなので、なんかそれもいかんな・・・と当該テキストは削除いたしました。)
じじい会のおとぼけハイキングの際は時間切れでたどり着けなかったので、いつかはと思っていた露頭見学山行を今回、実行してみた。

目をつけていた某所より入山。
苔に覆われた北八ヶ岳特有の森歩きが気持ちよい。
時折現れるはいまつやシャクナゲの密集したやぶを避けつつ、いくつかの手掛かりをもとに森林内を徘徊。
ときおり現れる赤やピンクのテープに惑わされたり、以前にこのへんを探索したらしい方のGPSログなどを頼りに迷走のすえ、どうやらたどり着いたようだ。

こんなのがいきなり現れたので、例の巨大露頭なるものは近くにあると感じた。

周辺一帯、黒光りする黒曜石らしきものが顔を出していたり、落ちていたり。

巨大露頭というからには崖のようになっているはず・・・と目星をつけて地形を探るとそれらしき斜面が現れる。

この下は急傾斜に落ちているぞ。

これか?と思ったがバスほどのサイズではない。まあ研究者だって誇張はするかもね~とか思いつつ。

あったわ。10メートルはありそう。これなら大型バスと言ってもよいでしょう。お隣にも少しだけこれより小さいのがある。
ただ普通の苔に覆われた岩にしか見えない。でもところどころ黒光りするものが顔を出しているし、まあこの中が黒曜石なんでしょうね。このまわりにもいっぱい黒光りした岩があることだし。

この大岩の下は気持ちのよい広場になっていて、割れたビンやらキャンプした跡のような感じとかいろいろあって、これがその巨大露頭だと確信する。

なによりもあたりをつけていた場所にぴったりな場所。

探索行は以上でした。
ここからは研究者のつけたらしい踏み跡(と言っても結構とぎれとぎれでルーファイは難しい)を辿って30分ほどで国道に帰ることができた。(つまりこの場所さえわかればものの30分でたどり着ける場所ということですね。)

黒曜石露頭の学術的価値や興味については、素人の語ることではないので控えます。でも調べてみるととても面白い。
興味を持たれましたら、茅野市のHPや日本で唯一とかいう明治大学の黒曜石研究センターのHPをご参照ください。その他検索すると民間研究者もいろいろいるようですよ~。

金峰山・千代の吹上第三岩稜A峰

金峰山の南面に展開する岩壁群、千代の吹上。
アプローチが長いこともあってか、あまり登られていないが、その中でも記録の見当たらない第三岩稜。
先月(2024年9月)ここを訪れ、第三岩稜がおおよそ4つの岩峰からなっていることがわかった。便宜上、上からA峰、B峰、C峰、D峰と名付け、その時はD峰の正面壁を登って来た。

パートナーはハンターでカメラマンの田丸さん(東京ヤングクライマースクラブ)。
藪歩きがすさまじく速く、鹿に出くわすと人格が変わる。
自動車メーカーの専属で撮影をしていたこともあって、車にも詳しいらしい。

前回はなが~い瑞牆山荘からのアプローチでばてたので、今回は大弛峠から金峰山を越えて行くこととした。これで1時間ほど節約できる。前夜は大弛峠にて、田丸さんの車中泊仕様の軽バンで宴会。案の定飲みすぎの感が・・・

前回D峰を登ったのでつづきを登ろうという予定。
小さく見えるC峰は割愛して、B峰~A峰を続けて登るつもり。
かなりロングルートとなりそうなので、大弛峠を早朝出発のつもりだったが、前日の雨が乾くのに時間がかかりそう(という口実で飲んだんだけど)なので、目的をA峰のみに絞って少しゆっくり目に出発。

稜線から撮影した第3岩稜の上部。左のほうに見えているピークがA峰の頭。(下から見るとここで第3岩稜が終わって見える)
おぢさん二人で名づけるとしたらたった一つのワードしか思いつかないA峰の頭。下から見るとよりそれらしい。ここに立ちたい。

稜線から見て第3岩稜の左側ルンゼをクライムダウン。懸垂下降しようかという程度の急な斜面だが、樹林を使えばなんとか下りられる。

目的のA峰の下部に到着。
B, C, D峰が下方に見渡せる。
D峰の頭には先月懸垂下降用に作った支点につけた捨て縄が見えている。
B峰は上から見てA峰より右よりに稜線を伸ばしている。そしてB峰とA峰の下部はのっぺりしたスラブ帯でつながって見える。B峰からA峰につなげるとしたら、このスラブを登るか、弱点となりそうな草付きを登ることになるのか。

B峰からさらに上に伸びる岩稜。

B峰上部の岩稜は第3岩稜に向かって伸びてきており、その終了点が合流しているのか独自に稜線に向かっているのかは確認できなかった。
手前のスラブ壁はA峰の下部ともいえるところ。この下がさらにB峰の側壁とつながっているようだ。
このスラブ壁は手掛かりがなく、簡単には登れそうもないので、A峰のピナクル部分の末端から取付くこととした。

A峰の1ピッチ目(正面のフェースはグラウンドアップでは手がつけられず、ピークを右側から回り込むようなラインとなった。)

1ピッチ目の出だしはクラックがいくつか切れ込んだフェース。後半はフレアしながら右上するワイドクラック。
まだ若干濡れているし、フェース部分は表面が風化していて、気を付けないとスタンスを壊しそう。
見た目より悪いフェースから右上ワイドクラック。
クラック左側がハングになっているため、右のカンテにトラバースしたいのだが、風化しているうえ、ホールドも乏しく苦労する。
ハング下の泥つきクラックにいれたカムにあぶみをかけて右フェースに乗り移ろうとするが、どうしてもハングに頭がつかえてバランスがとれずに振られてしまう。今回借りて来た、私のより高級な妻のヘルメットを泥ハングに何度もこすりつけてしまった・・・・
バランスを維持するためフェース部分にボルトを打ち、そこにもあぶみをかけてなんとか右のフェースに乗り移ることができた。ふ~。
あまりの激闘ぶりにビレイしていた田丸さんも緊張していて、赤沼の雄姿は撮影ならず。

1ピッチ目。右上するワイドクラックからフェースに移る部分を登る田丸さん。

2ピッチ目。
1ピッチ目でA峰ピークの右側裏に回り込んできたので、振り返った頭上がA峰ピーク。登路を探して少し右(手前)に草付き帯をトラバース。

薄い苔に覆われた露岩帯を木登り。いやらしい登りだ。
A峰ピークよりも稜線よりに大きなスラブ壁が見えており、登り口まで行ってみた。手の付けられそうもないフェースに残置ボルトが一本。
ん?誰か来たのはわかるが、ボルトの上は登れそうもないぞ。
どうも登ったようには見えないので、A峰ピーク寄りに戻る。
ジェードル状になった薄被りのシンクラックがある。
泥もつまっているし大変そうだが、もうここ以外に登路がなさそうなので、1ピッチ目で疲弊した身体に鞭打って取付く。

3ピッチ目のシンクラックはいきなりのカムエイド。左側がかぶり気味で、またまたバランスのとりづらい登り。
右の風化花崗岩に右足をこすりつけ、左足はあぶみという状態で苦労して伸びあがってはつぎのカムを設置するというハードな登り。小型カム中心に6ポイントで右のフェースに移る。

第3岩稜の主稜線部分に出て3ピッチ目を終了。件のピークは後ろ側になってしまった。

4ピッチ目は金峰山の稜線に向かって伸びあがる岩稜。

小ピークをひとつ登ったところでピッチを切ってもらう。
件のA峰ピークの上で写真を撮ってもらうためだ。

ビレイ点から戻るようにA峰ピークまで行って写真を撮ってもらう。

またいでいる隙間をのぞき込むと、50cm程度のチムニーが下のほうまで続いている。ここを登りたかったな~。ここを登って、この隙間から顔を出すことができたら、中尾さんには悪いけど別の意味?で「生まれる気分」が味わえたかも。(瑞牆山で中尾さんの開拓したルートの名前です。)

これが第3岩稜最後のピーク。

最終部分は面倒そうなフェースなので割愛して、ここから左にトラバースして樹林に入る。

第3岩稜終了点

歩き部分もいれて全7ピッチのクライミングでした。
A峰だけちょろっと登って、物足りなかったら第2、第3岩稜の中間にある小さな岩峰でも登ろうかなんて言っていたが、激闘ピッチふたつを含むハードな内容となり、もう二人ともへろへろでした。

金峰山・千代の吹上第三岩稜D峰正面壁ルート開拓

金峰山山頂の西側稜線の南面に、千代の吹上という岩壁群があることはよく知られている。
高差約200m, 幅約200mにわたって展開する金峰山最大の岩壁群だ。
白水社の日本登山大系では第一~第四岩稜の間に展開する7本のルートが紹介されている。
同書でも「開拓の歴史が浅く」とあるとおり足跡は少ないようだ。
ネット情報を参照しても情報は少なく、第二岩稜周辺と第四岩稜が時折登られたり、近年第二フェースにルートが開拓された情報が見つかる程度だ。

【山巡の今までのクライミング】
2023年6月 第四岩稜
記録のまったく見当たらない第三岩稜を目指したが、ルートの取付きがわからず、結果として第四岩稜~白い尖峰を登って来た。
2023年7月 第一岩稜
第四岩稜を登った際遠望した、美しい第一岩稜を登って来た。
楽しいクライミングを通して、千代の吹上の全体像を、かなりの迫力をもって見ることができた。知る限り記録も見当たらなかったので、「岩壁観光ルート」と命名。第一岩稜は既登であるとのコメントもいただいたが詳細は不明のまま。初トレースであるかどうかはどうでもよいとして、とても美しいラインの好ルートなので多くの人に登ってもらいたい。
実際知り合いのクライマーが後日これを登り、楽しいルートだったとのコメントをいただいたのが嬉しい。

さて第四岩稜を登った際、ガスの合間に見え隠れしていた迫力ある岩壁群が第三岩稜と思われる。かなり難しそうだ。
記録は見当たらず、難しすぎて誰も登っていないのか、それとも登攀価値のないつまらない岩稜なのか?
そんな好奇心もあって、第三岩稜を訪ねてみた。

結論から言うと、第三岩稜はひとつのリッジというよりも4~5個程度の尖峰の集合体であり、各岩峰は南面を中心にそれぞれ素敵なフェースやクラックから構成されているクライミングの楽しめそうなエリアだ。
便宜上上ピナクル1~ピナクル4と呼ぼうかと思ったが、日本登山大系で第一岩稜の終了点がP1、第四岩稜あたりがP3と記載されており、まぎらわしいので、上から第三岩稜A峰~D峰と仮称した。

登山大系の概念図にA~D峰を書き加えてみた。

2024年9月13日

山巡の若手女子、斉藤真帆ちゃんと第三岩稜に向かう。
瑞牆山荘から第四岩稜と第三岩稜の間の下降点(左写真、砂払いノ頭)まで約3時間半。

第三岩稜最下部の岩峰(D峰)は、千代の吹上全体でももっとも低い位置から始まる岩壁かと思われる。取付きまでは急なルンゼを約45分のクライムダウン。右岸の第四岩稜の美しいスラブの取付きより少し下くらいから左岸にトラバースして岩壁基部。

D峰基部付近から第四岩稜を望む。

D峰正面壁を見上げる。
これはなかなかの岩壁ですぞ、と感激しているが、実はこれが第三岩稜全体からすれば下部のほんの一部であることをあとで知る次第。
高度がここまでおりればこの岩壁の上が長いことは想定されたが、「どうせ木登りで終わるんじゃない?」なんて、この時点では軽く考えていたのだ。
下部はスラブ壁で、2ピッチ目あたりにいやらしそうなクラックが見えている。
ちょっと悪そうなので、2ピッチ目で山巡の鉄砲玉、真帆ちゃんを投入すべく計算して、1ピッチ目は赤沼リードでスタート。

1ピッチ目スタート
左手には第四岩稜が見える。

1ピッチ目の核心はこのフレークをつかんでえいやと登るうすらかぶりフェースか。
この右手にかなり古い残置ロープを発見。誰か登っているのか?と思ったが、残置の場所やロープの形状から何かの採集のためのものではないかと思われた。あるいはかなり昔の試登用だった可能性も。

1ピッチ目終了点から2ピッチ目を仰ぎ見る。

2ピッチ目は基部からも見えたように急なフェースのまんなかにクラックが一本走り、上部はハング気味となっている。

クラックの形は美しいが、泥と草が詰まっているだろうな~
クライミング自体もそこそこ難しそうだし、泥臭いクライミングになりそうだ。

ということで、予定どおり鉄砲玉、真帆ちゃんの投入。
こういうピッチの突破には若さが必要だよね。


真帆ちゃん、ロープを渡すと黙って突っ込みます。
クラックの核心部。

真帆ちゃん、泥のつまったクラックでプロテクション設置に苦労しているようだが、掃除作業のあとアブミに乗ってカムエイドで核心部を突破。

核心のクラック上から振り返って撮影。
クラックのあとはハングにぶつかる。

ハング下も悪いらしく、苦労しながらトラバースして上部の樹林に飛び込んだ。Good Job!

「あんな悪いピッチをよく頑張った!さすがだね~」とか言いつつフォローしていくと、「赤沼さんにクライミングが遅い!と言われるんじゃないかと心配してた」とか・・・・はは。自分は残置してもらったあぶみをいきなりつかんで登っておいて、言うかそんなこと。

さて3ピッチ目。
ビレー点についた時、真帆ちゃんがやけににやけてるなと思ったら、3ピッチ目は真帆ちゃんの大好きなワイドクラックがきれいに口をあけているではありませんか。

赤沼「ん?登りたいの?別に登ってもいいよ?」
真帆「いや別にどっちでもいいですけど・・・・」

なぁんてはっきりしないので、順番どおり赤沼リード。
まあこの時点でこの先は木登りで終了と勝手に想像していたもので、1ピッチくらいは頑張っちゃってもいいかなと思った次第。

左側のハンドクラックで行けるかなと思っていたけど、どんどん中に吸い込まれていくタイプのやつでした。

「赤沼さん、ワイドもやれるじゃないですか~!」などとおだてられつつ、頑張っちゃってます。

3ピッチ目後半はD峰の先端近くまでチムニー。
「ワイドあるかもよ~」と事前の憶測だけで真帆ちゃんに伝えていたため、真帆ちゃんはワイド用のでっかいカムを持ってきてくれていたけど、それでもこのチムニーはプロテクションとれませんな。ただただ壁のなかでいんぐりもんぐり高度を稼いでトップアウト。ザックを置いてきたので荷揚げで体力使い果たし。

真帆ちゃんも楽しそうに登って来た。

最後の最後で使った大きめカムを回収。「役にたったでしょ?」と見せたかったらしい。

D峰の頭に立ってみると、なんとまだこんな岩壁が立ちはだかってますよ。
真正面がB峰と仮称したやつ(C峰は左手下にあって写っていない。比較的小ぶり)。
そのうしろにぴょこんととんがっているのが一応A峰と仮称したやつ。AもBも独立した尖った岩峰に見えますな。
右手に聳えているのは第二岩稜。
この時点で今日は時間切れ。なにせアプローチ4時間あるので、この先を登っていたら間違いなく帰りは真っ暗。それ以前に相当ばててますな。われわれ。

D峰の下に見えてるC峰。小さめだが一応独立岩峰ぽいのでCとしてみた。

足下となったD峰はやはり尖った岩峰で、ピークからはむこうがわに懸垂下降をするしかなさそう。懸垂支点とするのに使えそうな木もないので、ボルトを打ったことのない真帆ちゃんの練習がてら2本打って(途中で赤沼に交代)懸垂。

本日はここから下山と決め、アプローチでおりてきたルンゼまでD峰の側壁部を3ピッチの懸垂下降。

下りて来たルンゼをぜいぜい言いながら登り返し、登山道を瑞牆山荘まで下山。
約12時間の行動となった。

D峰の頭に懸垂支点がなかったことからも、D峰正面壁は未踏だったのだろうと思われる。(情報あればぜひコメントいただきたく。)
そしてD峰から、上部の岩峰につなげれば最低でも10ピッチは越える長いルートとなると思われる。しかも内容も相当濃いものとなるのは必至。
アプローチが長いので、取付きで一泊くらいのつもりでやらないとだめだろうな~
気力が高まったらやってみるかもしれないし、どなたか試みる方がいるなら喜んで情報は提供させていただきます。なんか上の岩峰たちも未踏な気がするな~

関係ないけど、アプローチから通してこの辺ってきのこの宝庫らしい。
もひとつ関係ないけど水晶もいっぱい落ちてるらしい。真帆ちゃんは大喜びで拾い集めてました。
今回のトラックログ

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佐久・天狗山中段岩壁左稜

山巡若手女子の斉藤真帆ちゃんと前穂高岳でルート開拓の予定が、北杜市ベースでその辺登り歩きとなった3日間。その最終日です。
2日目は瑞牆山でワイルド系クライミングをやって、結構疲れてもいたので、軽いクライミングをしようということに。

ところで今まで、天狗山南面岩壁群にいくつかのラインを引いてきたわけですが、残された課題が、下部フェースから中段岩壁を登って上部岩壁をかすめて山頂に至る一本のラインでした。昨年これを一気に登ろうと、北杜市在住クライマーの今井エリサさんと出かけました。

天狗山南面岩壁群の概略図
2023年10月、下部フェース2P目。

2023年10月。エリサさんと下部フェースにトライ。
傾斜の強い逆相のフェースに2ピッチ分ロープを伸ばし、下部フェース最終ピッチと思われる3ピッチ目の途中、赤沼が記憶を飛ばすという事態がおきました。自分がどこにいて、何やっているかわからなくなってしまったのですよ。実は前日まで妻とテント泊で仙丈ヶ岳に登って帰って来たばかり。少々のつまみで酒を飲んで寝てしまい、早朝からパンを一つ食べただけでエリサさんと飲み食いを忘れて登っていたのです。
当日の様子は当ブログには書いていませんが、Facebookの山巡ページに投稿をしていたので以下に引用しておきます。



まあそんなわけで、下部フェースから上部につなげるラインが残された課題となっていたのですが。

でもここを登りなおすのはさすがに「軽いクライミング」とはならないので、下部フェースはいったん置いておいて、中段以降を登ってみようということになりました。

馬越峠から天狗山山頂を越え、男山方面に少しあるいたところから樹林を下りて中段岩壁に向かう。
中段岩壁は傾斜強めのフェースなので、その左スカイラインあたりが軽めの楽しいクライミングになるのではないかという目論見です。
樹林をおりていくとリッジの末端に出たので、これが中段岩壁左稜だと思い取付きました。(実は間違ってた)

岩稜末端に出たのでここから取付く。

お!いいぞ!思い描いていたようなやさしく楽しいクライミング!と思いつつ登っていくと、岩稜は1ピッチだけで樹林の尾根になってしまいました。
ふと右を見るともう一本の岩稜があります。
あれ?そういえば中段岩壁の左稜だったら右側がフェースになっていて樹林のわけないよな~。

しょうがないので、右の樹林をクライムダウンして正しい中段岩壁左稜の取付きへ。

中段岩壁の左稜取付き。
下部フェースによく似た、天狗山特有の傾斜が強い逆相岩壁です。

左稜そのものは樹林がかぶさっていて歩けてしまいそうなので、あえてこの逆相フェースに取付いてみます。
カムを効かせられるような節理が乏しいので、ハーケンを打ちながらの厳し目フリークライミングです。

結構厳しいクライミングとなり、壁の半ばでギアが切れてしまいました。(なんか最近このパターン多いな~。クライミングをなめすぎて装備が足りなくなるのは老化現象でしょうか。)

壁内でトラバースをしてしまったので、若干怖いんですが、最後のハーケンに捨て縄をかけてクライムダウンで取付き付近まで戻ります。
途中で打ったハーケンも回収。

左の樹林には突っ込まないが、難しすぎないという微妙なラインを登りなおして1ピッチ終了。こちらもこれで樹林の尾根になります。

フォローする真帆ちゃん。

あとは樹林を歩いて行けそうなんですが、さっき登ろうとしていたフェースで楽しいフリークライミングができそうということで、真帆ちゃんはここからロープダウンしてトップロープで登ってみることになりました。
ついでに先ほどのハーケンと捨て縄も回収してもらいます。

最後はかぶってきて、5.10bくらいかな?とか言いながら登ってくる真帆ちゃん。ハンガーボルトでも打てば楽しいフリールートになりそうだそうで。

トップロープでフリークライミングを楽しむ。
樹林の尾根を辿っていくと、上段岩壁部分も樹林歩きで終わって、山頂直下の天狗山ダイレクトの終了点付近に飛び出します。
今回の足跡を描きいれてみました。

瑞牆山・カンマンボロン中央洞穴ルート

このルートを登るのは赤沼にとって3回目。
2013年の7月に登ったのが最初で、当ブログにも記録をだしていますが、あっさりしたものです。
2016年に何人か(たしか6名?)でぞろぞろ登った際は、宴会前にフリーで登れるお気楽ルートとか言って連れて行き、あとからメンバーに「これのどこがお気楽じゃ!いらないとか言ってたあぶみいるし!」と怒られた記憶が。アッコちゃん頭から湯気でてたなぁ。

さて今回。

パートナーは山巡唯一の若手女子、ワイドクラック大好きな斉藤真帆ちゃん。
平日3日間のお休みをとって、前穂高岳でルート開拓の予定でしたが、日本列島は暑すぎて雷雨が怖い、奥又白で熊3頭の目撃情報もでたばかり(親子だよね~)、体調もなんだかな~ということで二人にとってのベース、山梨県北杜市を中心に天気のよさそうなところを登り歩く作戦に切り替え。

初日は唯一晴れマークのついている軽井沢近くの恩賀高岩を目指しましたが、想定通り(?)のヒルにおびえて敗退。

登山口付近で立ち話した地元のお二人が「大丈夫かな~」とか仰ってて、「ヒルですよね。ヒル除けのパウダー持ってきてますんで!」とか言いつつ入山して、ものの10分ほど?で帰ってきてしまった。帰りがけも地元の方は作業中で、若干気まずげに「ヒルすごかったです~」とか叫ぶ真帆ちゃん。

さて2日目。瑞牆方面が天気よさそう。
真帆ちゃんにルート選択をまかせるとワイドクラックでいじめられそうなので、「真帆ちゃんにはものたりないかもしれないけど・・・」と、以前登ったこのルートの写真などを見せると「ここいいですね!行きましょう!」となった。しめしめ。

植樹祭広場の手前から踏み跡を30分程度で取付き。
顕著なオーバーハングを目指します。
ルートはオーバーハングの右の切れ目。ここが洞穴状になっていて内面登攀でハング上に抜けられるので「中央洞穴ルート」となっています。

見た目怖いですよね~
「あれ?こんなやばそうな壁だったっけか?」と内心びびる赤沼。

なぜかハング上から固定ロープがぶらさがってます。

右側の草付きルンゼが正解なのはわかっているのですが、「真帆ちゃんには物足りないだろう」と、あえて左の岩場部分を登ってみます。
岩に穿たれたような穴を使った独特なクライミングでスタート。

あとで聞いた話ではこの紋様が梵字に見えるということで、カンマンボロン見学ハイカーの観光対象になっているとか。

かなり難しくて、あとちょっとでルンゼに合流するかというあたりでギア切れ。ピッチを切って、垂直部のどまんなかで真帆ちゃんを迎えます。

岩にあいた穴をくぐって出てくる真帆ちゃん。

ビレイしながらルートの様子を眺めていてひとつの疑念が。
これ中央洞穴ルートじゃないんじゃない?
以前に登った印象からするとやばすぎるのですよ。どう見ても。

「これルート違いだね!降りよう!」と赤沼。
「いや!見せてもらった写真の通りです!」と真帆ちゃん。

まあ何はともあれ懸垂で草付きルンゼに戻ろう。
少し先に懸垂支点になりそうなボルトがあるので、そのまま真帆ちゃんに行ってもらいます。

ここがだいぶ難しいあぶみトラバースとなり、しかも想定していたボルトは「古すぎて怖い」ということで、さらにルンゼ中央に見えている支点までトラバース。その支点を仲介してルンゼ内のテラスまで真帆ちゃんをロープダウン。

その後、赤沼が支点までトラバースしてから、真帆ちゃんにロープダウンしてもらうという凝ったロープワークでルンゼ内のテラスに無事降り立ちました。
(写真はロープダウンされてる赤沼)

ルンゼの底から上を見上げて「あ、やっぱこれが中央洞穴ルートだな~。それにしてもこんなに難しそうだったかな。」と赤沼。

真帆ちゃん怒ってるよ。
またまたパートナーを怒らす赤沼。
じいじは記憶がやばいし、トポ見ないし、適当なやつだって言ってたぢゃん!

正規ルート?に戻ったものの、この先のフェースも立ってるな~。
ここは真帆ちゃんに行ってもらおう。そうしよう。

このピッチは急なフェースを直上してからいよいよ洞穴内に突入していきます。

洞窟内に突入。
燕がやたらと飛び交う洞穴内。
やばいフェースの後は泥だか燕の糞だかのラッセルどろどろピッチ。
ラッセル汚いし、じいじはいい加減だし・・と心折れかけてる真帆ちゃん。ルートは写真左手のどろクラック?を直上。

泥壁はどうせ赤沼の出番。

泥臭いけどそれほどボロクもなく、ガバホールドも多いので見た目ほど難しくはないのですよ。

チョックストーンを廻り込んでいくといよいよハング直下のテラス。

振り返ってビレイ中の真帆ちゃん
チョックストーンを廻り込んで上のテラスから

見上げるといよいよ大ハング。
このフェースを右上トラバースしながら、小さくあいた穴に向かっていきます。

薄被りのハングを越えたり、ハング下をすこし下りながらトラバースしたりとルートファインディングがものを言います。
高度感たっぷりで楽しいピッチです。

じわりじわりと穴に向かう。

このへんのルートファインディングが難しい。

トラバース中、ビレイヤーを振り返る。

最後は足を突っ張って行くか、左のフェースを行くか。

最後のチムニー部分。真帆ちゃんはフェースを登って来た。

チムニーを抜けたあとワイドクラック少々登るとまたハングにあたる。

ハング左側のフェースを、連打されたボルトを使って人工登攀。

ハング上に出るとフリーになって、ワイドクラックのランアウトピッチ。
これでルートは終了。
カンマンボロンのピークにあがると、大面岩方面にフィックスロープがあって、大面岩とのコルに。
さらにコルから2ピッチの懸垂下降で樹林帯に戻れます。

さて。
今回もお気楽ルートだよといいながら来たわけですが、なんかやたらと難しく感じましたね~。
最初に登ったときの写真を見ると、核心部でも2~3本しかランナーとってないようだし。
今回は同じピッチで、すべての残置支点にランナーかけて、しかもテンションありあり。
ついに11年前の自分にだまされる始末となりました。

じいじはじいじを知る機会とはなりましたがね~

ところで翌日、天狗山に行った帰りにナナーズ川上村店の敷地内にあるクライミング用品の店「ルーフロック」に寄って瑞牆山の岩場のガイドブックを確認すると・・・・このルート出てないぢゃん!今回はじめて登った隣のルートの名前なんかもないかと期待していったのですが、このエリア全体が白紙となっておりました~。
瑞牆の忘れられた白紙地帯なのか?はたまた梵字のある聖地で登ってはいけなかったのか?

アルプス越えの鎌倉街道

まだ踏破してないんですが・・・・祠峠、檜峠の散策に続いて、今回池尻砦を訪ねて来たところで、中間報告がてらの長文となります。

鎌倉古道として紹介されているルートを、資料の記述に基づいて大雑把に書き入れてみたもの。

自分にとっては一連の山遊びのネタ本となる、服部祐雄(はっとり ゆうお)氏の著書「アルプス越えの鎌倉街道」に出会ったきっかけは「その辺の崖遊び」だった。(かなり飛躍はあるんですが・・・・)


地図を眺めて岩場記号を探す。
ハイカーのブログ等で写真を眺めて岩場を探す。
ドライブ中も常に山肌に視線を送り続ける。
メジャーな登山道のない地域、そして近くに岩質のよい岩場のあるあたりが狙い目だ。

これはと思う岩場があったら行って登ってみる。
そんな「その辺の崖」クライミングも、山遊びのひとつとして楽しんできた。

穂高や霞沢岳などの素敵な岩峰近くに狙いを定めて地図を眺めていて、梓湖(奈川ダム)周辺に「祠峠」という地名を見出した。なんか気になる。

岩場はないけど、マイナーエリアの山歩きも楽しいかとネットリサーチすると、そこが鎌倉街道の一部であり、かつては人家のあった廃村であるという記述があった。俄然興味が湧いてくる。
実際に歩いてみると、そこには鎌倉街道との案内板もある。崩れかけた祠もたしかにあった。

鎌倉街道って「いざ鎌倉!」のあれだよね?
鎌倉からこんなに離れた山奥に鎌倉街道?
なんでこんなところに?
なんのために?
いくつもの問いが湧きがってくる。

祠峠を訪ねた際の投稿にも書いたが、そんな問いに答えるべく調べて行くうちに服部祐雄氏の「アルプス越えの鎌倉街道」に出会い、運よく本書を入手することができた。

アルプス越えの鎌倉街道についての概要は祠峠に行った際の投稿からコピーしておく。

  • 「アルプス越えの鎌倉街道」は飛騨側の高山から平湯温泉に至り、安房峠のあたりを越えて信州側の梓川に抜けるものだった。
  • もとは生活道路だった古道を、鎌倉街道として整備したらしい。
  • いわゆる平安や奈良時代の古道のような人馬が走り抜ける広く大きな直線道とは違い、山中の踏み跡などを歩きやすくした「切通または薬研堀」という程度の整備だった。
  • 鎌倉時代には蒙古や南朝勢力も含めた日本海側に対する政治的、軍事的境界線としての意味もあったり、宗教的な境界線にもあたる警備上の重要拠点だった。また武田家も木曽攻めの際、この道を利用したとの記述がある。
  • 一方、生活道であった(らしい)この道は、急峻でしかも楽しくない谷間の地形を避け、焼岳や乗鞍岳、あるいは穂高などの展望のよい、比較的なだらかな場所を選んでいるように見える。「道中を楽しむ」という文化に支えられた道であったように思えてならない。合理主義とは違う、道の意味合いに気が付いてから、この道を辿ってみることに俄然興味が湧いてきた。

ところでこの、「アルプス越えの鎌倉街道」という本について少し書いておこう。

筆者は昭和4年、安曇村大野川に生を受けた。
つまり生家の前が祠峠や檜峠への登山口で、家の前を鎌倉街道が通っていた。
長野師範学校卒業後は、小学校教員から校長、そして安曇村教育委員長になるまで教員人生を過ごし、その傍らで長野県史や安曇村誌の編纂なども行いつつ、30年の月日を使って鎌倉街道の研究を行ってきた。とくに引退後の60歳の半ばからは「アルプス越えの鎌倉街道」というテーマに集中して道のない山中に現地踏査を重ね、同書をまとめたとある。

まさに筆者のライフワークともいえるものであるらしい。

長年にわたるライフワークの集大成であるだけに、内容は非常に濃い。
本書一章ではまず鎌倉から始まる「鎌倉街道」について論じ、関東を中心に広がる主要部分について詳述している。そしてこの踏査記は松本を越えて梓川に至る、筆者の関心エリアへと収斂していく。全編を通して本書は、ただの踏査記ではなく、歴史的考察や史実、エピソードを交えた膨大な記録集となっている。
そういうわけで、私のような「実は鎌倉街道や古道というロマンをスパイスとして、人気のない山道を歩いてみたいだけ」という穿った人間のガイドブックとしては、やや重すぎる、そして読みにくいテキストとなってはいるのだが・・

さて第二章から「鎌倉街道」は山道にわけいっていく。
その信州側の出入り口にあたるのが松本の波田町だ。

「波田町誌歴史現代編」を参照しながら、この場所の重要性について述べているくだりで、安房峠付近を越えて行くこの古道の重要性が少しずつわかってくる。
いわく、「縄文時代から梓川谷は飛騨、越中などの他国に使われた渓谷で・・・」、「鎌倉時代には街道が作られ」、「蒙古来襲のこともあったか、日本海沿岸、特に北陸地方の警備、交易を重視しているように思える」、「また宗教面では、山岳信仰はもちろんのこと、天台宗、真言宗、浄土真宗など・・・・裏日本との関係が濃厚であった」等々。
そして膨大なエピソードに彩られた踏査記を読み進むにつれ、この古道が自然災害の起こりそうなところをうまく避け、傾斜が比較的緩く、歩きやすい、しかも合理的なラインで最短距離につけられている様子が見えてくる。

旧安房峠の道筋を探索すべくこの地に何度も通った筆者が、ついに古道らしい痕跡を発見し、峠に至ったときの記録に、この古道の雰囲気、魅力がよくわかる一文があるので引用したい。

「昔の人はどうしてこんな良い場所ばかり選んで道をつけたのかな。危険な場所は完全にさけ、風をさけ、日当たりだけを選んで道をつけてある。それができない場所は上高地一円とアルプス連峰が手にとるように見える場所を選んである。全く古代人の心の豊かさを思わざるを得ない。」

いやあ!この道をトレースしてみたい!

ネットで調べていると登山ガイドの次田氏が、本書をもとに再探索したルート案内があり、同氏がガイドツアーなんかも行っているらしい。
ただ、当然のことながら本書も次田氏の案内も、それを見ればこの道が歩けるというほどのものではない。
私がここを歩く際にはGPSアプリを持ち歩いて、ルートのすべてをトラックレコード化してみたいな・・・という気持ちが湧いてきた。
GPSアプリでマイナーエリアの登山は根本的に変わりつつある。
これを嫌がる風潮も理解はできるが、そういう時代なんだからもっと気軽に歴史ロマンの山旅ができてもいいんじゃないかな~と思ったわけだ。


野次馬ロマンを道連れに、祠峠、檜峠というふたつの峠道を散策した。
どちらもそこを歩くだけで気持ちの良い道だった。

「正式に道を探索するのは無理だろうけど、とりあえず藪をこいででも旧安房峠のあたりを越えてしまおう。」ということで2日の日程をとった。
だが梅雨時とあって天候が悪くて、強行軍は無理。
この古道のだいたいの想定ルートを地図アプリに落としてよく見ると、いくつかの林道(半分以上は通行止めだったり廃道になったりはしているが)と交錯したり、並行したりして伸びている。
だったら雨でも車で四方からアプローチして、古道と交錯した部分だけでも確認することはできるのではないか?

檜峠を一緒に歩いてから古道に俄然興味の出てしまった真帆ちゃんのナビで、鎌倉街道を諸方面からアプローチしてみる。理系出身の彼女、地図アプリなんかの扱いにも詳しく頼もしいのだ。

白骨温泉からのアプローチはしばらく走ったところで通行止め。
いったん梓川まで戻り、今度は現在の安房峠に行く乗鞍スカイラインの旧道側からアプローチ。安房平あたりで古道らしき踏み跡を見つけたりとそれなりの成果。
なにより山の雰囲気がわかった。
思ったよりも山深いようだ。やぶも案外と深いぞ。
当然、熊もいるよな。

一日かけてできる限りのドライブ探索は終わり。
翌日は晴れ間が出るとの予報だったので、現地に一泊して翌日は歩いてみようとなった。

が、日が明けてみるとまたまた雨。

「もう雨具着て、傘さして歩いちゃおう!」
となって、信州側の祠峠~檜峠からの次の順路、沢渡から池尻砦への道を辿ってみることにした。

池尻は沢渡から梓川右岸の山間に入ってすぐ、池尻湿地と言われる湧出水のたまった池を中心とした小盆地。
このまわりを尾根が取り囲んでおり、信玄の時代にここに砦が築かれたらしい。ウエストンもここを通ったとの記述がある。
池尻砦については、それがどこだったのかを特定するのが困難などとも言われ、とある史家が特定したとかしてないとかの話もあって、やぶの中を歩いて近くに行ければ・・・なんて思っていたのだが、沢渡から林道に入るとすぐに立派な駐車場があり、池尻湿地~池尻砦との立派な案内版があった。

どうやらその場所はすっかり特定されて、観光開発をしようという意図もあったらしい。

駐車場から池尻湿地への案内板に従って整備された道を歩き出す。

相棒の真帆ちゃんは先日熊と遭遇。威嚇してきたところ開いた傘を向けたら逃げて行ったとか。この日も熊よけを兼ねた傘装備。

雨は降っているものの、森がしっとりとしていて新緑が鮮やか。
少し草木に覆われてはいるもののよく整備された道を歩く。

時節がら熊には最大限の警戒。熊鈴のほか「クマヲボル」という匂い袋を持参。匂い袋は濡らしたくないので、真帆ちゃんが傘の下にぶらさげたが、だいぶ匂いが強かったらしい。

鎌倉街道についての案内板。そして熊ベルがかなりの頻度で設置されている。

よく整備された道で、東屋なんかもある。

もうすっかり観光地として整備されているらしい。

池尻湿原。

池尻砦跡地に到着。祠があった。

ちゃんと案内板が設置されている。

熊対策グッズ「クマスプレー」。

帰りは池尻湿地の向こう側を歩く。

雨の中しっとり気持ちのよい道。

とにかく新緑が美しくてシャッターを押しまくり。

木道は苔で若干すべるのだ。

動画1
動画2
動画3
動画4
池尻砦のトラックレコード

佐久・赤顔山南壁

その辺の崖シリーズ。
赤顔山の第二弾です。
先月、情報のないこの壁にとりあえず触ってみようと出かけて左稜を登って来た
ただの崖と思っていた南壁だけど、案外迫力があって、規模は小さいけどちゃんとした壁っぽいよね~という感想。
今回は基部を歩き回って、登れそうなラインがあるかどうかの偵察に行ってきた。

こんな感じで歩き回った。

ところで今回は一人。
大声でしゃべりまくって熊を寄せ付けない相棒がいないので、できる限りの熊対策をしてきた。

熊鈴に笛、それに青森の農家が熊を寄せ付けないために使っているという匂い袋「クマヲボル」。そして今回から熊スプレーも追加。さらに最新の軽いストックでなく、重くて太いストック2本持ち。最後はこれで戦うのだ!
先週妻と雨飾山に行った際、どうも熊と思われる動物に接近遭遇。やや過剰でも登山道のないところばかり行くにあたってこれくらいはしておきたいよね。

左稜に向かってトラバースしていき、途中から歩きよさげなところを壁に向かって直上。

スラブ状のフェースが立ちはだかる。フリクションはよく効くし、硬そうに見える。
出だしは小川山のガマスラブのような感じで、すたすた登れそうだが、上に行くほど傾斜が強くなり、最後はいくらかかぶった感じ。
2本ばかり登れそうかな?というラインを見出し、GPSアプリに取付きポイントを追加。登ってもいないのにルート名を付ける。左上バンドルートと左壁スラブ。どちらもトラバースを繰り返しながら弱点を追うルートになるだろう。(登れればね)

最後のかぶった部分を左へ逃げられるかな?

登ってもいないのに名前をつけた左上バンドルートのあたり。やはり最後のハングをどう処理するかがポイントかも。バンドも全部つながっているか見切れない。

小川山のガマスラブのような出だし。最後がハング。

この辺は素敵なフェースだけど、ちょっと取付く気がしないな~。

左のスカイラインあたりがこの間登った左稜。

左壁の右寄りは傾斜が強くなってくる。登るならいずれにせよハングの切れ目に向かうことになりそう。

右に目を転じるとどこも傾斜が強く、圧迫感がある。

基部を右方向にトラバースすると上部のハングが大きくなってくる。手前の傾斜も強まる。このあたりが岩壁中央部左よりってなところ。壁は見た目ほど脆くなさそうだが、登るにはかなり手を焼きそう。

右へ行くほど上部はかぶってきて、しかも手前の壁もイワタケに覆われてくる。この辺は登る気しない。

ところどころハチの巣もあるので要注意。

こんなんもあったよ。

壁の真ん中あたりに滝がある。
この辺が壁の高差としては最長かも。それでもまあ2ピッチというところかな。
バンドをうまく拾っていけばフリーでいけるかもしれないが、簡単なクライミングにはならないでしょう。
さらに右へ行くがもうすべてがハングになってきて、じいじクライマーの対象外。

基部をより岩場に近く左に戻っていくと、左壁あたりに切れ込みがある。これを登ってみると、左壁をましたに見下ろして高度感いっぱいながらも木登りと歩きで岩場の上に出てしまった。

終了点。
なんか見覚えある場所だと思ったら、この間登った左稜の途中でした。

終了点に鹿の角。北杜市の家にでも飾るかとザックの中に。

赤顔山の偵察が終わったら、赤顔山から天狗山の稜線に抜けて、以前に登った南稜でもおりてみようかと思っていたけど、梅雨の晴れ間は蒸し暑くて・・・・やる気なくして右稜を下降。ほんの2時間半ほどの偵察行でした。
ところで一応これって南壁登ったことになるの?
ていうか。
終了点手前のバンドにある木の枝がはらってあったよ。
山仕事の人の道だったんかな?

トラックレコード

【メモ】

南壁はおおむね3つのフェースから構成される。
左壁は岩質のよいスラブ状フェース。傾斜は上にいくほど強くなるが、ところどころ灌木があり、少ないながら節理もある。最初にクライミングをするならこの辺かと思う。規模は1ピッチ程度。
中央壁は滝のあるフェースの左右に広がる急峻なフェース。高差はこの辺が一番ある。フリーで登れる?としたら滝の周辺かも。それ以外は上部がハングとなっている。
右のほうは全体的にかぶり気味で赤茶けた岩がどのくらい硬いのかは疑問。一見脆そうに見えるが。難しそうだが規模はさほど大きくない。ハチの巣も多い。

赤顔山偵察のトラックレコード(gpx)をダウンロード (Dropboxリンクです。)

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