アルパインクライミング・沢登り・フリークライミング・地域研究などジャンルを問わず活動する山岳会

カテゴリー: 山行報告 Page 1 of 5

2022年新年じじい会

昨12月、二階さんから「忘年山行やろうぜ!」という声があったのだが、赤沼がちと忙しかったものでお流れ。
その責任をとって新年、山巡じじい会を企画した。

行先は北杜市須玉町の城址。今は廃道となった、自衛隊の切り開いた林道を行く。

メンバーは後期高齢者に突入した最長老そーのすけさん。なんと下又白谷の全貌をはじめて世に明かした記念すべき山行であった「下又白谷山巡稜」初登攀メンバーのひとり。
パン屋のわたべさん。下又白谷研究の第二世代の代表ですな。赤沼とともに下又白谷本谷の遡行や、菱型スラブの初登攀もやってます。今は温暖な小田原でのんびり暮らしてます。
で、二階さん。山巡としては快挙だった、カラコルム山群の未踏の7000m峰、トリグラフの初登頂時のサミッター。
それに還暦にして最年少、赤沼の4名。
オールドクライマー集合の図です。

いつもは山に登って山頂あたりで宴会ってのが毎度のパターンですが、時期的にとても寒いし、「高度500メートル以上、1時間以上の歩きはだめ」とか言い出す人もいるし。
諸々配慮して、先日歩いた源太ヶ城址を散策して、近くの赤沼別宅で宴会という企画をたてました。

大門ダムの擁壁上にでると八ヶ岳がきれいに見える。

昨年11月に初めて登った際は、自衛隊の切り開いた林道の末端が擁壁になっていて、大門ダムにまっすぐおりることはしなかった。
今回は大門ダムに車を停めて、擁壁のはしのほうから林道にあがることにした。

擁壁のはしのほうにはしごがあって急坂からダム上に出られる。


そーのすけさん。うん十年前から変わらぬ登山ウェアに注目!

わたべさんは昔から伊達でしたね~
源太ヶ城本丸址?山頂で記念撮影。
宴会は下山後って言ってるのに、どこからともなくビールが出てくるし。

そして赤沼宅で宴会はつづきます。

西上州・九十九谷ゴリラルート

群馬県南牧村の九十九谷は、特異な岩峰を連ねる西上州にあっても特に異様な雰囲気を醸し出す谷だ。
上底瀬村の黒滝山登山口を起点とすると、九十九谷を経て稜線まで約600m。右岸尾根と左岸尾根の間も600mほど。その小さなエリアのなかに、特徴的なスラブを有するリッジが何本も並んでいる。

九十九谷左岸の岩壁

この中間をまっすぐ主稜線につきあげている中間尾根を登るルートがゴリラルートらしい。

ちょっと八ヶ岳の家に行く用があって、ついでにこの谷を偵察がてら周辺をハイキングをしようと計画した。
ひとり宴会も寂しいので、暇そうなニコちゃん大魔王、野口さんを誘うと二つ返事でつきあってくれることになった。いちおうガチャ(クライミング道具)も持って行って、遊べそうなところがあったら遊ぶかとなった・・・・と、まあこの時点で登る気まんまんですな。ニコちゃんは肩やら腰やらを壊しているので、くれぐれも無理させないように奥様から釘を刺されていたのだがあっというまに寝返る私。

沢沿いの登山道を進むと、すぐに沢は伏流となり水がなくなる。
おっと水くむの忘れてきた。いったん登山口まで戻る。ついでにロープも忘れてきた。まあいいか。ニコちゃんのロープ一本でやっちまえ・・・って、今回はなんか適当だな~
登山道が沢を離れるところからは沢をまっすぐ。数分歩くと二股となり、この二股の間がどうやらゴリラルートのある中間尾根らしい。

二股の上に岩場が見える。
左股を少し登ったところからアプローチ(一応ロープを出したので、これが1P目)

2P目。このスラブを右上するらしい。

初登者はこのスラブを30mのランナウトで登ったとか。
今は少し行ったところにリングボルトが一本あり、登ってみるとその手前にもう一本変わり型ハーケンが一本。
おそるおそる登ってみるが、リングボルトの上はたしかに支点がなさそうだ。
しかも傾斜が増してきている。
フリクションは良いものの、立ちこむべき岩の結晶がいつ崩れてもおかしくないこの西上州で、ここに突っ込むのはリスクが高いと判断。
少し右のルンゼ状を登ってみることとした。
1段傾斜の強いフェースを越えさえすればあとは灌木を支点に行けそうだ。
フェース部分にRCCボルトを打ちこんで、微妙なバランスでここを越える。案の定そのあとは問題なくスラブ途中のテラスに到着。

右のルンゼ状からテラスに到着。

3P目。テラスから左上するフェースがいけそうだが、ここも支点に乏しい。
右のカンテをまわりこむと、草付き露岩が岩塔の上に伸びている。ここから岩塔上に。カンテをまわりこむところがいやらしい。

4P目。

傾斜のゆるい岩のリッジ上を登る。

5P目は樹林の岩稜をコンテで。

6P目。右上するクラックからリッジ上へ。
カムで支点をとりながらの快適なクライミング。

6P目をフォローするニコちゃん。

7P目。

このあたりがゴリラルートの一番楽しいあたり。
少し傾斜の増したリッジ上をあがる。難しくはないが支点もないので慎重に。

8P目。樹林の歩きで最後の岩壁まで。

9P目。

フェースを超えるとあとは山頂まで樹林と露岩の歩き。

山頂からは九十九谷の周回コースから下山。
周回コースははしごあり、ナイフリッジありでスリル満点のハイキング。
ルートを登っている間ここを歩いている女性が二人いたようで、終始嬌声が聞こえておりました。

海谷・海老嵓西壁第二フェース心岳会ルート

先月ふとんびしを一緒に登った長友さん、野島さんと、今度は海谷の岩場を登ってきた。

海谷といえば、角礫凝灰岩の悪相をもって知られる岩壁群のせいか、陰惨なイメージしかなかったが、いまや海谷の入口、山境峠にはきれいな駐車場やキャンプ場ができあがり、三峡パークと名を変えており、あの千丈岳南西壁ですら観光の対象となったらしい。

三峡パーク周辺から望む千丈岳南西壁。600mを超える悪相の大岩壁で、クライマーは畏れをもってこれを見るが、登らない人には観光対象らしい。

海谷渓谷は最近では「越後の上高地」などとも呼ばれるようになり、実のところその渓谷美は凄絶を極める。渓谷の奥座をしめる海老嵓の岩壁へは、この海谷渓谷(海川)を渡渉を繰り返しながらつめていく。今回は11月の冷たい川を膝上まで浸かって歩くので、3人とも沢用の装備で完全武装。

さて今回登ったのはこれ。鉢山の支峰、海老嵓西壁第二フェース、心岳会ルート。
海老嵓西壁第二フェースの基部
1P目。逆相の草付き壁を左上しリッジを目指す。草付き得意な野島さんが先陣を切る。

2P目。ここからルートは垂直の側壁からカンテにあがるようだ。ここは少しばかり難しいクライミングとなりそうだ。
こういう場面では赤沼が「リードしたい人~」と聞くと、長友さんが「はいっ!はいっ!」と手をあげるのが今までの例だが、今回の長友さんは体調がよくないらしく、「全フォローで・・・」などと言い出す。そういうわけでここは赤沼リード。

垂直の側壁からカンテに這い上がり、そこから左上。

残置ハーケンに導かれてここに取付くが、最初10メートルくらいはテクニカルなクライミングとなる。

カンテをフォローする長友さん。海川はもうはるか下。
カンテをフォローする野島さん

3P目。美しいカンテは岩壁に吸い込まれ、上部は大きくひらけたスラブ帯となる。次はこの岩壁をまわりこんでスラブ帯に出るピッチ。
2P目で元気の出てきた長友さんがリードを申し出る。

露出感のある楽しいピッチ。
スラブに入ったところで短くピッチを切る。
ここからスラブ帯にはいる。

4P目。大きなスラブ帯。岩は比較的堅く順層だが傾斜は案外と強い。途中にハーケン、ボルトなどの支点がほとんどないので、体調に不安の残る長友さんから、赤沼が強引にリードを奪う。
案の定のランナウト。ごくわずかな節理にハーケンを打ってみたが、あまり効いてないっぽい。

スラブ帯をフォローする長友さん。

5P目。引き続きスラブ帯を赤沼リード。

ここからは緩いスラブとなり草付き帯に突入するので、このピッチで終了として登ってきたルートを懸垂下降することとする。

懸垂下降用にボルト打ち。

このルートは抜けても山頂まではかなりあり、抜ける価値なしと判断。
というか早く降りて宴会しようよう~という声がどこからともなく聞こえてきて、同ルートをおりることにした。
本番のクライミング中にボルト打ちをしたことがないという長友さんが、ボルト打ち実習。

懸垂下降中

海川に戻り、来たルートを戻るわけなんだが・・・・

こんなものがところどころにあるので、菌活師匠野島さんのご指導よろしく下山はあっちうろうろ、こっちうろうろ。河原歩きに登りの倍の時間がかかるわけ。

楽しい菌活の成果を持って、八ヶ岳の赤沼別宅に移動。
そしていつものように宴会の時間に突入してまいります。はい。
それにしても今回も歩きながら、登りながら、車でもそして宴会でもよくしゃべったな~。

雨飾山・ふとんびし右岩峰中央稜

生意気盛りの19歳の時登ったフトンビシを、41年ぶりに再登してしまった。
「こんなルートを二度登るような変人はほかには絶対いませんっ!」と、言い切るのは、長友さん。
たしかにここは、岩の脆さで有名なルートだ。
不本意ながら人からは脆岩愛好家扱いされている私にとっても、このルートは間違いなく「今まで登った脆い岩トップ3」に入る。
それでも登るのは、登攀ラインが圧倒的に美しいから。

ふとんびし核心部を終わって草付き岩稜となるピッチ。

雪崩に磨かれた急峻なスラブと、鋭利に突き上げる細いリッジから構成されるふとんびしの岩峰群。そのなかでも際立って美しく、ピークに向かって一直線にのびているのがふとんびし右岩峰中央稜だ。
長友さんも、ぶなの会の野島さんも、長年このルートへの憧れを抱き続けていたらしい。
3人で穂高の下又白谷にクライミングに行くはずだったのだが、頻発する地震に恐れをなして中止。
「それならふとんびしやっちゃおうか?」となった。

ふとんびし岩峰群、圏谷の底から雨飾山を仰ぎ見る。

さて登攀予定日だった土曜は雨飾山周辺は雨の予報。
天気の回復しそうな日曜にふとんびしを登攀することにして、土曜は得意の五郎山で先日開拓したばかりの「どまんなかルート」へ。肩の故障でクライミングを中断していたニコちゃん大魔王こと野口さんも参加して、めでたくクライミングに復帰。私はなんとクライミングシューズを持ち忘れ、運動靴でのフォロークライミング。

そして日曜の雨飾山は見事な快晴。

荒菅沢のゴルジュを過ぎるとすぐ、ふとんびしの岩峰群に囲まれる。

100名山のひとつだけあって、よく整備された登山道を1時間弱で荒菅沢との合流点。ここから登山道をはずれ沢を登る。まだ本調子ではない野口さんはここから登山道を雨飾山往復。
長友さんが以前進路を阻まれたという雪渓も今はなく、小さなゴルジュ状を抜けるとすぐに大きなスラブの末端に出た。

スラブを左上。見た目よりも悪い。

眼前に広がるスラブの上のほうに草付帯があり、そこからふとんびしの細いリッジが伸びている。右の本流から巻き込んであがるか、左のスラブを登るか。長友さんは本流を行きたそうにしていたが、赤沼が目先の簡単さにつられてスラブ左端を登りだしてしまう。
草付帯まではかるぅ~くロープなしで行くつもりだったのだが、すぐに案外と難しいことに気が付いた。雪崩に磨かれたスラブはホールドに乏しく、しかも泥っぽくてはがれやすい部分が多い。
尻ぬぐいは長友さん。
行き詰って動けずにいる赤沼の横を、ロープをつけてすたこら登っていく。
2ピッチで草付帯に突入。

草付きのリッジにはいあがると展望がひらけるがどうも様子が変だ。
ふとんびしのリッジが横に見えてるんだよね。
あれ?ルート間違えた?
やっぱ右の本流行くべきだった?

ぐだぐだと言う赤沼に構わず、長友さんはさらにロープを伸ばす。
「ルート大丈夫です!ふとんびしのリッジに合流してます!」
とコール。

左稜3ピッチ目。これで右稜と合流してふとんびし核心部へ。

つまり登っていたのはふとんびしの左稜だったというわけ。3ピッチ目で右稜と合流し、あの有名な核心部。ぎざぎざの折れそうな細いリッジのすぐ手前についた。

ふとんびしの核心部を見上げる。
4ピッチ目は核心部のリッジに向かってルンゼ状を直上。
5ピッチ目。ここから核心のリッジ。
5ピッチ目ビレイ中。

リッジにまたがってずり上がる。

6ピッチ目。

さて問題のピッチだ。

41年前の記憶では10センチほどの薄いリッジにまたがってずりあがったような。しかも脆いので、リッジ自体が手で折れそうだ。
「こんなに風化したリッジはもう残ってないと思っていたけれど、40年たってもまだあるってことは折れるほどではないんじゃないの?」

無責任なことを言い散らす赤沼を尻目に、長友さんスタート。
15メートルほど登ったところで、薄いリッジを前に右往左往しはじめた。
ここで慎重派の長友さん、
「5手先までは読めるけど、その先がどうしても読めないのであきらめます。」という囲碁名人のようなご発言。

細くて危険なリッジは回避。

リッジ左に広がるスラブ帯までいったん懸垂下降。
支点がまったくないのでアングルハーケンを一本根本まで叩き込んで、ここからスラブをあがることにする。

登らなかったリッジを敬遠してスラブに下降。

ここまでだいぶ奮闘してくれた長友さんに代わって、7ピッチ目は赤沼がリード。

左のスラブからリッジを巻いていく。

左スラブは先人が何度か登っているはずだが、雪崩に磨かれてしまったか支点はまったくない。
ハーケンと小型カムで支点をとりつつ、核心リッジ上部に至るルンゼは傾斜が強くなるので、手前でボルトを一本根本まで打ち込んでいく。

急なルンゼを越えると細いリッジの上部に復帰。
越えてきたフェースを見下ろす。

このあたりから泥壁度が増してくる。

ところで脆岩(泥壁)=危険という構図が一般的な理解と思いますが・・・・
もちろん脆岩を普通の堅い岩の感覚でがしがし登れば即落ちます。


でも脆岩トップクラスに属するふとんびしあたりでも、岩の芯みたいなものはあって、要は堅い部分を選び、最悪でも掘り出して登る体力と精神力があれば危険とは限らないということが言いたいのですよ。
能書きついでに言うなら、ボルトの固め打ちでもなんでもして、こまめに支点をとるのは脆岩登りの基本と考えています。

でもさすがに還暦過ぎて、精神力と体力まかせみたいな岩登りをするつもりもなかったんだけど、今回は藪こぎ上等、草付き上等、泥壁上等を地で行くタフな沢屋系クライマーお二人と一緒だから、おつきあいさせてもらったわけ。

赤沼は1ピッチ、リードで奮闘したので体力おしまい。

巻いてきた細いリッジを見下ろす。

リッジに復帰したあとは草付きリッジとなるが、終盤に向けて脆さが増してきた。満を持して野島さんの出番。

8P目は脆い草付きリッジ。
8P目ビレイ中の野島さん。

見た目は難しそうに見えないが、岩の硬い部分を掘り出しほりだし、草や灌木をうまく処理しながらのタフなピッチ。
「いや~よく登ったね~!」と驚嘆しつつビレイ点につくと、
「やっと草付き泥壁になって癒される~♪」とのたまう野島さん。
みな得意分野が違うわけですな。さすがさすが。

9P目。まもなく終了点。

まだまだ続くいやらしい岩稜をこなすと、ふとんびしのピークへと続く笹の尾根に出る。全9Pのクライミングだった。

41年前の記録メモには「脆い部分があるが快適な登攀。5時間かかった」とある。だいぶ感触が違うな~。

今回は右往左往したものの、3人で7時間半の登攀。まあまあですな。でも体力落ち目の還暦になってまだこんな登攀ができたのが嬉しい。長友さん、野島さんに大感謝のハグ!


疲れ果てたので雨飾山山頂は行かず、即下山。
雨飾山往復だけして登山口に下りたニコちゃん野口さんは、前夜の宴会の残骸をすべて片付け、テントを干して待っていてくれた。

甲斐駒ヶ岳・摩利支天東壁

獅子吼城からの甲斐駒

八ヶ岳の南山麓から見た甲斐駒ヶ岳の姿が好きだ。
左側のスカイラインが艶めかしい。
ここを登ってやろうと調べると、どうやら摩利支天峰の南西稜もしくは南山稜あたりらしい。
ワイルド系の岩登りになりそうだ(ジャルパインクライミングというらしい)。

資料はあまりない。
アプローチが複雑だったり、原始的でわかりにくかったりするせいか、訪れるクライマーは少ないようだ。

まずは得意の「行ってから考える」方式でやってみることとした。


メンバーは3名。
野島梨恵(ぶなの会)
家口寛(ヤングクライマーズクラブ)
赤沼正史(山岳巡礼倶楽部)

野島さんは休日のほとんどを山で過ごすばりばりの沢屋。
本人は「そうかね?」とか言うが、思い切り沢屋ファッションであらわれた。だって手ぬぐいみたいのかぶって、首にも手ぬぐい巻いて、ズボンの裾を靴下に突っ込んで、使い込んだザックにミゾーバイルつけてりゃ、そりゃーね~(笑)

家口さんは世代的には近い(失礼!少しは私より若い)オールドファッションクライマー。優しくて力持ちなダンディー。私の妻はすっかり彼のファン。エベレストにまで行ってる強者。歩くの速っ!

さて朝イチのバスで北沢峠。登山道を仙水峠までたどり、ここから道をはずれて水晶沢におりる。人の記録を見ると、水晶沢を横切って摩利支天南西稜方向に向かうことが多いようだが、踏み跡らしきものはまったくない。
仙水峠あたりから摩利支天がよく見えるから、どこを登るかはそこで決めようという話になっていたのだが、山頂部はすべてガスに覆われていてほとんどなにも見えない。

ガス(霧)の合間に摩利支天の岩壁が少しだけ顔を見せる。

摩利支天峰は大きく急峻な岩峰だが、その組成は複雑で、南西稜、南山稜、東山稜などのリッジの間に、中央壁、サデの大岩、東壁などの岩壁が層をなし入り組んで配置されている。
全体像が見えなければルートの特定は難しい。

(図は東京新聞出版局「チャレンジ!アルパインクライミング」より勝手に拝借m(__)m)


まずは水晶沢の左岸(上に向かって右側)の南西稜にあがることとする。南西稜側はどこも急峻な、草に覆われた岩壁となっている。水晶沢を少し遡り、滝の手前の弱点をついて登ると樹林帯となる。

樹林帯を登っていくと大きな岩壁にあたる。中央壁か。

この基部を右にたどっていけば南山稜になるはず。
南山稜は記録を見るとそれほど難しくはなさそうだ。
われわれもそのつもりで3人でロープ1本、カム数個にハーケン、ボルト少々という軽装だ。
しかし上部が見通せずルートの特定ができないまま、トラバースしていくと、かなり急峻で威圧感のある大きな谷にはばまれる。
谷を渡った先には顕著なリッジがあり、それが南山稜だろうとあたりをつけ、ロープをつなぎ、急峻で恐ろし気な谷の上部を横切っていく。

岩場基部の狭いバンドは足を置けば表面がざらざらと崩れるような風化花崗岩に弱弱しい灌木が張り付いているような状態で悪い。
めぼしを付けた凹角に入るが入口は軽くかぶっており、草の根本をつかんでエイヤ!とはいずり上がる。草付きグレード5.10NP(笑)。
この時はここさえ越えればあとは楽になるはずと信じていた。希望的に。

すぐ上はオーバーハングしている。

2P目はこのハングを越えないといけない。
ハング左端にクラックが走っているが、なかに泥つまってて支点とれそうもない。ハング下にそって真横にきれいなクラックが入っていて、右のリッジに抜けられそうだ。そしてなんとそのクラックにはカムが残置されている。
先人がいるようだが、これを使ってハングを越えたのか、あるいはこのカムの地点で行き詰って捨て下降ポイントとしたか。

いずれにしてもここまでの支点の貧弱さとアプローチの急峻さを考えると、敗退はしたくないな~というところで意見は一致。
なんとしてもここを越えるぞ!
越えれば楽になるはず!

クラックまではそこそこ厳しいフリークライミング。
残置ハーケンもあるな。
残置カムを利用してフリー突破を試みるが、スメアリングを決めたい足元はすべて風化花崗岩でまったくフリクションなし。
即、エイドクライミングに切り替えカム3つでなんとか突破したが、なんせ軽装であぶみも持ってきていないので、沢用の丸スリングに足突っ込んでの、かなり強引な登りとなった。5級A2ってな感じかな。あぶみあればそこまででもないか。

リッジに回り込んだ先は、南山稜にイメージしていたような岩と灌木のミックス壁。思わず「もらった~!」と叫んでしまったのだが・・・・

ミックス壁をはいずりあがるとそこは・・・・まわりじゅうすべて垂直の岩壁に囲まれちゃったよ???
このへんからなんだか様子が変だと気が付く。

しかし下降したくないし、「とにかく抜ければこっちの勝ち」とばかり、ラインを探る。

まわりは全部垂直壁

え~と~
これのどこを登れというのか。
楽しいやぶリッジ登攀のはずだったのでは。
自問しつつもラインを探すと、なんと残置ハーケン発見。
あの残置カムは捨てではなかったのか~
気を強くして残置ハーケンのある左にわずかにクラックラインのあるフェースに取付くが、出だしがかぶっていて一歩がでない。
はい。ついに出ました絵に描いたようなショルダークライミング。
つまり優しくて力持ち、家口さんの両肩に泥だらけの汚いシューズを乗せて、ホールドを探る。
これでなんとかフェースに乗り、クラックにはえた灌木で支点をとりつつじわじわと高度を稼ぐ。

ちなみにこのテラスで先人の落としたらしいテルモスを発見。
テルモス?冬に使うものだよね?
このあたりで、登攀クラブ蒼氷の戸田、原ペアが冬期に開拓したというあの伝説のルートを登っているのではないかという疑惑が頭をかすめる・・・

じわじわ高みを目指すが、なんかその上にも垂直壁が見えてるんだよね。いや無視無視。

このピッチは要所に残置ハーケンがあり、ビレイ点にはリングボルトもあるぞ。ここ3P目も5級A1かな。あぶみあればね。

テラスの上はさらに壁

ああ、もういいです。
もうどんな壁が出てきたって乗り越えてやるもんね~
目の前のフェース、ルートを探ると、自分なら左のクラックがいくつか入ったほうをフリーでがんばるんだが・・・・というところ、右のフェースどまんなかにハーケンが何枚か目視できる。
これは人工登攀で登ってますな~
数個しかないカムを頼りに左フェースにフリーで突っ込むか、あぶみなしで人工ルートに突っ込むか。
究極の選択のすえ、全員のスリングを徴収して右の人工ルートを採用。

そうはいっても、明らかに装備不足なので、支点は控えめに間引きながらの設定。
スリングもできるだけ使いたくないので、可能な限りフリーで、だめなところはハーケンつかむ、ハーケンの上に立つ・・・・

そしてようやく傾斜が落ち、大きなテラスに出た。
4p目はA1(ただしあぶみ使えばの話)
それにしても先人、ただものではない。
ハーケンの使い方、効かせかたが絶妙。
おかげで案外と安心して登ることができた。

大きなテラスに抜けた。


ここから上は傾斜の落ちた岩稜なのでアプローチシューズに履き替え、摩利支天山頂を目指す。
最後はばてばてになりながら激しいやぶを泳いで山頂に到達。

摩利支天の山頂はガスの中。

クライミングに4時間程度かかり、北沢峠最終バスには間に合わず。
仙水峠にデポしておいたテントを樹林に張っての祝杯。
行動食のチーズと3分マカロニのわかめご飯の素和え、それにフリーズドライチキンライスが、このうえなく上等な肴に感じられた夕べであった。

さてどこを登ったのか?

南西稜から壁の基部をトラバースした距離を考え、横切った大きな谷が摩利支天前沢だったとすれば、前出の蒼氷、戸田、原ペアの登ったラインにかなり近いと思われる。

戸田、原ペアが冬期開拓したルートを記入したもの。原氏からもらった。

蒼氷のルートかどうかは不明だが、東壁を登ったことはどうやら間違いなさそうだ。

そして私にとってなにより大事なのは、八ヶ岳方面から甲斐駒をのぞんだ際の、あの美しいスカイライン近くを登ったかどうか・・だが。
これはもうほぼ完ぺきに目的達成と言ってよさそうだ。
地形図で確認すると登るべきだったのは、摩利支天の南南西あたり。
東壁であればまさにその方角なのだ。

樹林帯での楽しい宴会の翌朝は、「装備足りなかったけどいい登攀したね~。今度は視界のあるとき南山稜登りなおそうね~」と語りながら朝イチのバスに向かった。

佐久・五郎山南壁「どまんなかルート」開拓

当時中学生だった石鍋礼くんと知り合ったのは30年以上も前の話。
私はほとんど忘れてしまっているが、礼くんの鮮明な記憶では、その中学生を越沢バットレスだの松木沢のアイスクライミングだの、やばいところばかり連れまわしていたらしい。覚えているのは礼くんの実家の天ぷら屋さんで「息子が世話になってます。」とご馳走になったおいしい天ぷらのことだけ・・・できた親ですな。
礼くんはその後フリークライミング修業をして、海外で高難度フリールートを落とすまでになったが、仕事やら家庭やらでしばらくのブランク。そして3年ほどまえに一念発起?して1年間のオフ(キャリアブレイクというらしい)をとってクライミングしまくり、ついにはヨセミテの大岩壁El Capitanまで登ってきてしまったんだと。やるね。

さて私にとって残された課題の一つ、上高地帝国ホテルの裏手に見えている霞沢岳八右衛門沢上流の岩壁群を登ろうというお誘いに、礼くんは二つ返事でつきあってくれることとなった。礼くんはついこの間、穂高の滝谷でクライミングをしてきたばかりで、気持ちが穂高モードになっていたらしい。

準備万端、天気も比較的安定していることを見極めて出発。ところがバスに乗って上高地帝国ホテル前停留所をおりてすぐに、まさかの雨が降り出した。
携帯のレーダーアプリで確認するとどうやらピンポイントでここだけが雨の様子。
「降り出すならバス乗るまえにしてくれよ~」とか「なんでここだけ」とか、ぶつくさ言いながらも、スポット的に天気の悪いエリアに長居は無用と転進を決定。
山でのクライミング用の細いロープ(ダブルロープという)しか持っていないので、小川山などでのフリークライミングはしたくない。
そこで私にとっては7回目となる五郎山に新ルートを付け加えに行くこととなった。どれだけ五郎山好きなの?って声がどこからか聞こえてきそうなんだけど無視無視。

閑話休題。

朝9時台にはいつもの林道終点に駐車。
歩きなれた急登のアプローチを行き、11時には五郎山南壁の取付きへ。

五郎山南壁。左のスカイラインあたりが初登攀ルートの「五郎山ダイレクト」。赤線が今回登った「どまんなかルート」

マキヨセ岩峰と五郎山の鞍部(以下、五郎山コル)から五郎山にむかって左におりて行くと、この壁にあっては長めのラインがとれる五郎山ダイレクトの取付き。五郎山コルからそこまでは下部がオーバーハングしたフェースとなっている。
五郎山コルの稜線と五郎山南壁が接するあたりが、五郎山南壁のほぼ中央部分となる。
つまり南壁の中央部分から左のスカイラインの間は、登れば傾斜の強いフェースから始まる難しいルートとなる。
より美しいラインで、適度に易しく登りたい私としては、南壁の左フェースは当面対象外。
五郎山コルと南壁の接点から右にあたる右フェースはスケールは小さめ。しかしどこもそれほど傾斜がきつくはなく、楽しく登れそうなラインがいくつかある。

どまんなかルートの取付き

マキヨセ、五郎山のコルと南壁の接点を2~3メートル右に行ったあたりの緩めのフェースを取付きとする。ホールド多めで快適なフェース。最低限の支点だけとりながら快適にロープを伸ばすと、上部をハングにふさがれたテラス。ここでピッチを切る。1ピッチで抜けられそうな壁だが、60メートルのダブルロープ1本を半分にして30メートルダブル状態にして登っているので、早めにピッチを切った。ここで約20メートル。

頭上のハング下テラスまでが第一ピッチ(20m)
2ピッチ目を登りだす礼くん

2ピッチ目はハング右側のラインを登る。薄被りながらホールドは比較的豊富。小ハングのちょっとした切れ目をついてここを越える。
そのままフェース直上で五郎山ダイレクトの終了点にもなった山頂左下(西)に広がる大きなテラスの右端に出た。

小ハングを越えていく。
3ピッチ目の登りだし。

このテラスからは樹林を山頂まで行けることはわかっているのだが、すぐ横のフェースが岩茸に覆われてはいるものの登れそう。
少しでも長いルートにするか、とここを登ると、山頂に向かって岩のリッジが伸びているので、そのままリッジ上を登る。
若干ブッシュがあったりして鬱陶しいものの、きれいなリッジで気持ちよく高度をあげると山頂の一角にいきなり飛び出した。

3ピッチ目のフェース上から山頂に向かうリッジに移る。
3ピッチ目はじめのフェースをフォローする礼くん。
山頂に伸びるリッジ。
うしろに見えているのがマキヨセP2ルート上部。


さて山頂到着が12時20分くらい。易しいルートとはいえ1時間半弱で終わってしまった。
踏みあとを五郎山コルまで戻ったがまだ時間もあるので、マキヨセピークへの急峻な踏みあとを歩くくらいなら、マキヨセP2ルートの最終ピッチでも登って眺めのよいマキヨセ岩稜(踏みあとは北側斜面にある)を辿って帰ろうということになった。
このマキヨセP2最終ピッチの取付きまでは五郎山コルから樹林を通って歩いて行かれるのだ。
初登ルートを登るつもりだったが、その左にもう少し長いラインのとれそうなフェースがあり、そちらにルート変更。

マキヨセP2最終ピッチの左ルート。

初登ルートに比べて少し傾斜の強めのフェースを直上するルートを礼くんが選択。

空に向かってぐいぐい登ると尖ったピークに至る気持ちのよいピッチ。
これでこの日のクライミングはおしまい。
何度来ても気持ちのよいピーク。

さて帰りの車中で、ルートに一応名前つけておかないとと二人で検討。
位置的には五郎山南壁中央フェースとでもなるんだが、面白みもないね。
初登ルートの五郎山ダイレクトより、さらに山頂にまっすぐ抜けるルートだから「五郎山もっとダイレクトルート」とか。
いろいろ話し合った結果、あまり悪ふざけもしすぎず、中央ルートとかいうかわりに「南壁どまんなかルート」で行きましょうとなったわけ。

まああの南壁の正面フェースにルートが一本はあっていいし、これで易しめルートの開拓もほぼ一段落かな~という次第。

登ったのは2021年9月11日


五郎山南壁どまんなかルート
1P目 五郎山コルと南壁接点あたりのフェースをハング手前の顕著なテラスまで20m 4級
2P目 ハング右のフェースを直上。山頂直下の大きなテラスの右端まで。20m 4級
3P目 テラス右端のさらに右の岩茸で真っ黒なフェースを登って、山頂に至るスカイラインリッジを山頂まで。3級(一部4級)
登攀時間1時間半程度

マキヨセP2ルート最終ピッチの左ルート
マキヨセP2の顕著な岩峰の先端のみを登る。
初登ルートはハング状の壁の右に切れる凹角だが、今回はハング左のフェースを直上。20m 4級

奥秩父・鶏冠尾根~木賊山

山の楽しみ方のひとつに、「美しいライン」を想定し、実行するというものがあると思っている。
何をもって美しいとするのかは人それぞれだろうが、私の場合ラインの必然性と探検的かどうかが重要と考えている。

さて五郎山での2本のルート開拓をご一緒した長友さんと1日だけ山に行けることとなった。どこへ行くか?
五郎山から甲武信岳に至る登山道記載のない「天竺平尾根」を辿って周遊するプランを長友さんが提案。
私の提案は西沢渓谷から甲武信岳を経て、天竺平尾根から五郎山に縦走するというもの。
かなりかぶっている。
長友さんがそのラインをきれいなラインだと言ってくれたが、彼は車の回収という頭があったので天竺平尾根の周遊プランだったわけ。

五郎山から下山したあと妻の車でのお迎えが期待できることから、私の提案が採用となった。
木賊山から天竺平尾根の間で少しの間の登山道をのぞいて、整備された道はない。

早朝、長友さんの車で出発。西沢渓谷の駐車場から西沢渓谷道を歩き始める。
西沢渓谷界隈はどうやら長友さんのホームらしく、ルートはすべておまかせで後ろをついて歩く。こういうのも楽しいね。

西沢渓谷は昨日の雨で水量多めらしい。
鶏冠山が見えてきた。
鶏冠尾根に取付くにはここを渡渉しないといけない。いや、水多いじゃん!
渡渉地点を求めて右往左往するもなかなか決断つかず・・・・悩んでいるうちに沢の得意な長友さんはじゃぶじゃぶと渡ってしまったよ。
しょうがないのでパンツ一丁になって追従。
鶏冠尾根には正式な登山道はないが、道標はかなり完備していて踏みあともついている。露岩が濡れていて急坂はすべりやすかったが、とくに迷うこともない。
木の根と露岩の急登が終わると、鶏冠尾根のハイライトの岩稜が見える。
3か所ほど岩登りとなる。核心部は3~4級程度のクライミング。技術的には易しいが、組成の弱そうな岩場なので慎重に登る。
第三岩稜の頭から鶏冠山の山頂までは木の根がよくすべる樹林帯。
しゃくなげが鬱蒼としていて歩きにくい。
鶏冠山から木賊山も同じく樹林帯の踏みあとを辿る。

標識とピンクテープを頼りに進むが、ここはルートファインディングが必要なところ。われわれも一回踏みあとをはずし、GPS頼りで修正した。

約6時間でしっかりした登山道に出た。すぐに木賊山山頂。

このあたりで予報どおり軽い雨が降り出した。五郎山への縦走はまた登山道をはずれ、道なき道を今までより少し長く歩く計算。五郎山から下山するのは下手すると夜遅くなりそうだ。
協議のすえ、今日はここで打ち切り。西沢渓谷におりることとした。

最短は戸渡尾根の登山道だが、ここをホームとする長友さんの判断で、破風山方面に少し縦走して、これまた登山道のない尾根を下山することとした。笹の急斜面の下山だけれど、静かで気持ちのよい尾根を下った。
長友さんはこの光景を見せるためにこの道を選んでくれたらしい。
こんな斜面を適当に降りていく。

約9時間半で全工程終了。

実際に歩いた行程。

佐久・マキヨセP2ルート開拓

五郎山から見るマキヨセP2
この下に垂直の下部岩壁が続く。

2020年11月に佐久・川上村の五郎山の岩壁にルート(五郎山ダイレクト)を拓いた際、顕著に見えていた岩峰、マキヨセのP2(もっとも五郎山寄りの目立つ岩峰)を登ってきた。岩峰は上部の尖った岩壁、中央のフェースと傾斜の強い下部壁からなっている。この写真では上部と中央フェースのみが見えている。

パートナーは五郎山ダイレクトの開拓をご一緒した長友さん。40台前半の脂の乗り切ったクライマーであるのはもとより、美意識、信条のはっきりとした聡明な人柄で、クライミング行を楽しくさせてくれる人。

今回はメパンナことS川さん、ニコちゃんことN口さんも同行して開拓の応援と写真撮影をしてくれた。
メパンナはアイゼンとアックスを使ったスポートクライミング、ドライツーリング(略してドラツー)の日本でも有数のプレイヤーで、今や世界を転戦中らしい。一緒に歩きながらもドラツー向きの岩壁がないかとエロい視線をそこここの岩壁にそそいでいた。股関節故障中で、開拓は参加せず。
ニコちゃんは長年アルパインをやってきた頼もしいクライマー仲間だが、やはり肩の故障でクライミングはできず。今回は仲間内で名シェフとして名高い料理の腕前をふるってもらいいい宴会ができた。

二人とも4回目の五郎山。マキヨセP2基部でロープを結ぶ。

このラインは五郎山ダイレクトを登ったあと、長友さんが偵察に来て、トップロープで一部試登をしている。写真にも写っている上部岩壁と中央フェースは登れそうだが、下部岩壁が傾斜が強く、岩も脆そうで恐ろしいとのこと。
歩いて取付きに行くと、たしかに中央フェース真下の岩壁は一部ハングしており、登るのは苦労しそうだ。
岩壁左端の張り出しを巻いて数メートル左に移動すると、軽い凹角状のフェースとなっており、傾斜も若干緩いし、小さなクラックがいくつか走っているので、カムは使えなくても最悪ハーケンを打てばなんとかいけそうだ。垂壁の直上に未練がありそうな長友さんに「弱点ついていこうよ!」と、ここを登ることとする。「逃げの山巡」の伝統は守らねば。

1P目は長友さんのリードで離陸。

メパンナ撮影、動画その1「離陸シーン」

メパンナ撮影動画2「支点なしで離陸」


メパンナ撮影動画3 「命を守るハーケンを打つ!」

こんな感じでスタート!
数メートル、支点がとれないままに登っていき、少し不安になりはじめたあたりで長友さん、ハーケンの設置を決断。ハーケンをあまりにも叩き込みすぎて、結局回収不可能に。(もちろんこれで正解)
ちなみにこれ以降はすべてナチュラルプロテクションで登り、残置物はこれだけとなった。

1P目終了点から。赤沼フォロー中。

1Pを終了したところで中央フェース下のバンドに出た。
この上はまた傾斜が強そうなので、長友さんの想定していたフェース下までバンドをトラバース。

バンドをトラバース中。

このバンドは岩峰横の樹林帯から歩いてくることもできるため、ここまでニコちゃんが来て待っていた。
五郎山側からは顕著に広がる中央フェースは赤沼のリード。フェースいっぱいに岩茸が広がっていて滑るが、傾斜も緩めで節理もほどほどにあって快適に登れる。

2P目。中央フェース。黒いのはすべて岩茸。
2P目、中央フェース登攀中の赤沼。上にいるのがメパンナ。長友さんは下でビレー中。

中央フェースは五郎山側、登山道から張り出した岩壁の上からよく見えるため、ニコちゃんがそこから撮影してくれた。3人写っているのがわかりますかね?上にメパンナが写ってるが、やはり草付きのバンドを歩いて来ていたため。各ピッチごとに仲間が来ていて「まるで山登っていって山頂ついたら駐車場があったみたいな状態だね~」と笑いあいながらの登攀。

2P目、中央フェース登攀中。上の写真とほぼ同じ時刻に下から撮影。
2P目終了。メパンナ撮影。
2P目終了シーンを撮影するメパンナを、五郎山側からニコちゃん撮影。
2P目を長友さんも登ってくる。
長友さん到着。メパンナ撮影。
3P目。簡単な岩稜を上部ピークの基部まで。

ここから3P目はロープもいらない程度の岩稜を最終ピッチとなる上部岩壁の基部に移動。上の写真にも3人写っている。上がリードしている長友さん、下がビレーする赤沼。真ん中は遊び・・・もとい応援!に来ているメパンナ。

3P目終了点で撮影。フォロー中の赤沼。
4P目、上部岩壁。

最終ピッチは最後のとんがりを登りつめる嬉しいピッチ。長友さんのリードで。

最終ピッチをフォローする赤沼。
終了点で自撮り。本当のピークは真後ろの岩の上だが、怖いのでここで撮影。

マキヨセP2ルート、クライミング概要:
1P目
下部岩壁。左寄りのルンゼを直上(5級)25m
2P目
バンドを右にトラバースして中央フェースを直上(4級)25m
3P目
優しい岩稜を上部岩壁基部まで(2級)15m
4P目
上部岩壁(岩峰)を直上(4級)20m
登攀開始5月23日9時30分~終了11時30分)

使用ギアはハーケン1(残置)小~中サイズのカム約2セット
グレードはムーブだけを考えれば甘目かもしれない。
スポートルートではないので、危険度などの主観部分も加味。

比志津金山塊・笠無

笠無(1,476m)は比志津金山塊の最高峰。なぜか笠無山ではなく、笠無と呼び捨ての山で、一般的な地形図には登山道も山名も記載されていない。
実のところ、比志津金山塊自体がほとんど知られていない山脈であり、ここで山名が記載されているのは先日たまたま登ってみた斑山くらいのものらしい。
それにも関わらずネットで検索をすると結構な数の登山者が訪れて(といっても篤志家には違いないが)いるようで、地図に記載のない山名がわかるわけだ。
八ヶ岳、南アルプスをはじめ屈指の山岳展望が得られることに加え、縄文時代の遺跡が多くでてきたり、「甲斐国誌」に記載のある棒道や穂坂路にはさまれた文化的、歴史的にも重要な土地であり又、きのこや山菜、美しい広葉樹や松林などにも恵まれた自然の豊かな地域であることもたしかだ。

今回の目的は比志津金山塊の最高峰「笠無」に登ること。
確たる登山道こそないが、この山に至る踏みあとは縦横無尽にありそうだ。登山者の記録によく名前の出る「比志の塒」、「摩利支天」、それに笠無に近い重要な文化財でもある海岸寺の裏山「海岸寺山」もはずせないということで、これらを横断するルートを想定してみた。

今回は岩登りの仲間4名。とは言ってもクライミングだけでなく、山登り全体の好きな大人の集まり(?)で、里山ハイキング案にもすぐに同意してわいわいと行くこととなった。
車が2台あるのを幸い、一台を下山予定の海岸寺近くにデポする作戦で行く。海岸寺からは林道、比志海岸寺線を塩川ダム方向に向かい大尾根峠(地図に名前はない)から尾根を北上することにした。

大尾根峠に車を置いて登山開始。伐採後に残る踏みあとを辿る。

稜線に出たら、笠無と逆方向に向かい「比志の塒」を往復。
比志の塒には山名の書かれた板があったようだが、腐りかけていて判読不能。
摩利支天ってどんなところ?と思っていたが、岩の上に摩利支天と書かれた石碑があった。
ここはなかなかの展望ポイントでもある。
笠無山頂

笠無までは比較的はっきりとした踏みあとがあり、あっさり山頂に至る。
ここから先は尾根筋のはっきりしないところも増えてくる。南に下る尾根には踏みあとがいくつかあり、迷い込みやすい。文明の利器GPSを駆使して方角を定めて行く。
それにしても気持ちのよい山だ。新緑の広葉樹にほぼ覆われており、ところどころが松林となっている。きのこ類も多く途中できくらげを収穫。
多少道をはずしても藪はそれほど深くないので、自由自在に歩ける。
山容も変化に富んでおり、歩いていても飽きがこない。

本当にいい山だ。

道中珍しい道標。だがこの先踏みあとははっきりせず、結局地図とGPS頼りになる。
樹林のなかを自由に歩き回る。いつの間にか笑っている人、歌を歌いだす人。多幸感に包まれる人。
海岸寺山まで約4時間の道のり。海岸寺はもうすぐだ。

佐久、川上村・「五郎山ダイレクト」開拓

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: InkedIMG_2093_LI-768x1024.jpg
赤線は登路・・・このあたりだったと思う。

長野県佐久市川上村の奥にひっそりと佇む独立峰「五郎山」。標高2,132メートルの中級山岳だ。
川上村から目立って見える岩峰、男山や天狗山と違い、その姿は目立たない。マニアックなハイカーが時折訪れるだけの奥山とも言える。
しかしハイカーの記録にあった写真には素晴らしい岩壁が写っていた。これはクライミングの対象になるのではないか?
インターネットで調べた限りではクライミングの対象として書かれた記事はない。つまり「やばい壁があったら登ってやろう」というクライマーのエロい視線をまだ浴びたことのない処女壁である可能性が高いということ。
まずはクライマーの凌辱に耐えるレベルの岩壁か、偵察に行ってみることとした。

11月13日 偵察行(赤沼単独)

通い慣れた小川山廻り目平への岐路を通り過ぎ、梓山から梓川沿いの道にはいる。途中から林道地蔵沢線のダート道を進むと五郎山登山口に至るが、林道は崩壊が進んでおり途中で車を乗り捨てての歩きとなる。20-30分の歩きで登山口に着く。ここからは延々とカラマツや白樺の開けた樹間の急登を行くと30分ほどで最初の岩場の基部。


画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: gainen-1024x681.jpg
(注:
ここでマキヨセの頭としたのは間違いらしい。

実際はこの岩峰群全体がマキヨセであり、頭としたのはP2らしいと判明。)

登山道は岩場にあたったところから、マキヨセの頭と呼ばれる顕著な岩峰を含む、概ね3つほどの岩のピークからなる岩壁群(仮にマキヨセ岩壁群とする)の上を縦走していく。マキヨセの頭の裏側からもう一つの大きな岩峰である五郎山山頂岩壁との鞍部に降りたつ。登山道はここから山頂岩壁の基部をトラバースして、右から回り込むようにして山頂に至っている。(下はマキヨセ岩壁群の基部をトラバース、偵察して撮影した画像)

マキヨセ岩稜左端
マキヨセの下部岩峰

3つほどの岩峰を有するこの岩壁群はクライミングの対象として考えるとスケールがやや小さいかなという印象。ルートを拓く余地はかなりあるが、1ピッチからせいぜい2ピッチ程度に見える。マキヨセの頭の真下にある岩峰が大きめで、これを登ってマキヨセの頭となっている岩峰そのものにつなげればそれなりに充実するだろうし、そこからさらに五郎山南面の岩場に継続すれば楽しいかも。

五郎山方面から望むマキヨセの下部岩峰と、マキヨセの頭。

岩は比較的堅そうに見えるし、この界隈ではもっともすっきりした長めのライン。
ただこのあたり一帯の岩場はどこも岩茸と苔に覆われていて滑るので、掃除しながらのクライミングとなるんだろうな~

マキヨセの頭と五郎山の鞍部から、五郎山山頂への登山道の途上、トラバース部分から見下ろしたスラブ壁。支点がとれなさそうに見える。でもここから五郎山南面の岩壁につなげるのも面白そう。
それにしてもこの岩壁の真上をトラバースする狭い道が山頂に至る登山道とは!結構おそろしい。

そしてやはり最初に登るならこれ。五郎山南面の岩壁です。

岩壁左部分
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 9-1024x684.jpg

五郎山南面岩壁、左のスカイラインは鞍部からさらに川上村側に切れ落ちており、この岩壁では最長のルートがとれそうに見える。ただ陽があたらないのでこの時期は寒いかも。



11月14日 登攀当日

メンバーは宮田さん、長友さんと私の3名。

実はこの日集まったのは、赤沼がかつてクライミングジャーナル誌上で紹介した、下又白谷上部「ウエストンリッジ」を長友さんが登ったのが縁で、まだ会ったことのないその二人を、共通の友人宮田さんが引き合わせようという趣旨でして。
小川山東股沢の「野猿返し」という軽めのルートをわいわい登ってから、八ヶ岳の赤沼別宅にて宴会をするのが当初の目的でした。
ところが前日の偵察行の話をすると全員が「登ってしまおう!」と乗り気になり、急遽ルート開拓決行となった次第。

昨日たどった道を今度は3人で。
急登なだけにガチャ入りのザックの重さがつらい。

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マキヨセ岩壁群の上を縦走する正規登山道からアプローチ。
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完全無風だった昨日の偵察行に比べて、冷たい風が吹いてはいるが、今日は完璧な展望のパノラマが広がる。近くには秩父連峰、八ヶ岳、その手前に男山、天狗山の岩峰、西上州の山々、そして遠くに南アルプス、北アルプスの白い山々。この日は槍ヶ岳や穂高岳をずっと背後に背負ってのクライミングとなった。

マキヨセと五郎山の鞍部で登攀装備をつける。
ここは五郎山南壁の基部でもある。左稜線(南西リッジ)とも言える左側スカイラインは、ここから川上村側に切れ落ちていて、もっとも長いルートがとれそうなので、基部に沿って左方向に降りていく。

樹間を基部に沿って下降。五郎山南壁のこの部分はかなり傾斜が強い。

左稜線末端近く、傾斜が落ちてきたあたりを取付きとする。少し上がったあたりに倒木があり、これも支点として使いながら1ピッチ目とする。
ほんの10メートルほどで苔と泥の多い部分は終わり、白い岩肌が出る・・・・が、その岩肌はびっしりと岩茸や苔に覆われている。

岩肌が出てから一段あがった松の枝のうえを1ピッチ目終了点とする。小型のカム二つを支点。
ここから本格的なクライミングとなる。
リッジというよりはスカイライン少し右手のフェース状部分をさほど多くはない節理を追っての登攀となりそう。節理部分には木の枝などもあり鬱陶しいが、支点にもなってくれるのでありがたい。

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2ピッチ目の登りだしは見た目より悪いフェース

2ピッチ目から最若手の長友さんにバトンタッチ。いえ・・・・決して赤沼がびびったからではなく、若手に育っていただくためですからねっ!
小さなピナクルに蝶々結び・・・じゃなくて、タイオフしたスリングを支点にしてこのフェースをクリアすると、トップの姿は見えなくなる。
このあとはフェースをほぼ直上。細いクラックで支点をとった外傾テラスで迎えてもらう。支点は小さめのカム3つ。

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2ピッチ目終了点。

この時点ですでに全身岩茸だらけ。

さて次が最終ピッチ(3ピッチ目)となりそうだが、傾斜はますます強くなってくる。
真上のクラックは傾斜は強いものの節理があって、木も生えているので支点は取れそう。左のリッジ向こうに巻き込んでいけば傾斜が緩くなっている予感も。
しかし長友さんは美しいフィナーレを求めて右上のきれいなフェースを直上していった。強気の攻めの姿勢に一同感動の場面。

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太陽に向かって強気に攻める長友さん。向こうに見えるのはマキヨセの頭。
直上のクラック(ここは行かなかった)
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終了点(ここから山頂へは岩稜をほんの少しで到着。
左手の樹間から5分もかからない。
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空が真っ青です。

ルートについて

命名は近くの男山ダイレクト、天狗山ダイレクトにリスペクトを込めて、勝手ながら「五郎山ダイレクト」とした。
1P目(赤沼):3級25m 倒木を越えて藪中のクライミング
2P目(長友):5級25m ハング気味のフェースを右側フェースから巻き込んであがり、さらに節理を追ってフェースを直上
3P目(長友):5級30m 傾斜の強くなるフェースを少し右に巻き込みながらあがる。やはり節理を追って直上し終了点
岩茸に覆われて滑りやすいスタンスなどもあり、グレードは実際のムーブグレードよりも高めに感じているかもしれない。

ギアは3人でダブルロープ2本。カムは小さめ中心に2セット程度。ボルトキット、ハーケン類も持参したが使用しなかった。

登攀日:2020年11月14日
林道地蔵沢線の崩壊地点手前:10時
岩場取付き:11時30分
終了点14時
山頂14時30分
林道地蔵沢線:16時帰着

後日談:
この時のメンバー長友さんは、その翌週再度、五郎山に出かけ、五郎山南面岩壁の下部スラブを初登してきたとのこと。その際、マキヨセ岩壁群も含め偵察を行い、それぞれの情報をまとめてくれました。
下記リンクもご参照ください。
五郎山ダイレクトの記録
五郎山下部スラブの記録
五郎山の概念

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