山巡若手女子の斉藤真帆ちゃんと前穂高岳でルート開拓の予定が、北杜市ベースでその辺登り歩きとなった3日間。その最終日です。
2日目は瑞牆山でワイルド系クライミングをやって、結構疲れてもいたので、軽いクライミングをしようということに。
ところで今まで、天狗山南面岩壁群にいくつかのラインを引いてきたわけですが、残された課題が、下部フェースから中段岩壁を登って上部岩壁をかすめて山頂に至る一本のラインでした。昨年これを一気に登ろうと、北杜市在住クライマーの今井エリサさんと出かけました。
2023年10月。エリサさんと下部フェースにトライ。
傾斜の強い逆相のフェースに2ピッチ分ロープを伸ばし、下部フェース最終ピッチと思われる3ピッチ目の途中、赤沼が記憶を飛ばすという事態がおきました。自分がどこにいて、何やっているかわからなくなってしまったのですよ。実は前日まで妻とテント泊で仙丈ヶ岳に登って帰って来たばかり。少々のつまみで酒を飲んで寝てしまい、早朝からパンを一つ食べただけでエリサさんと飲み食いを忘れて登っていたのです。
当日の様子は当ブログには書いていませんが、Facebookの山巡ページに投稿をしていたので以下に引用しておきます。
1P目は比較的登りやすいフェース。
2P目、傾斜が強くなってくる。浮石を落としたり、ボルトを打ってから脆い垂直壁に突っ込んだりと悪戦苦闘するもなんとかテラスへ。このピッチ中、なんと残置ハーケンを発見。しっかり効いているので喜んで使わせてもらった。
誰かが登っていたという事実に少しばかり嬉しくなる。(別に初登攀が狙いなわけじゃないので・・・)
3P目、さらに傾斜が増してきたが、弱点をついてなんとかロープを伸ばす。下部フェース終了点となるテラスにあとすぐというあたりで、突然頭のなかが真っ白に。
私「エリサさ~ん!どうも精神崩壊したらしい。今なんでクライミングやってるんだろ・・・・」
エリサ「え!え!とりあえず足元は?安定してます?」
私「大丈夫。安定してる。クライミングのやり方はわかる」
エリサ「とりあえず支点!支点しっかりとって、下りてきて!」
私「ちょっといろいろ思い出せなくて気持ち悪いぞ! あなたはエリサさん。それはわかる。え~と妻とこっち来てたはずだけど妻はどこで待ってる?」
エリサ「朝、家で送り出してくれたでしょ。家で待ってるんだからちゃんと下りてきて!」
私「今何ピッチ目だっけ。どうやってここまで来たんだっけ・・・」
エリサ「いいから下りてくる!赤沼さんになんかあったら私では対処できません!」
クライミングのやり方は忘れてないようで、ハーケン2枚がっちり根本まで叩き込み、捨て縄をつけてロワーダウン。
テラスについてしつこくも、
私「あのハーケンがっちり効いてるし、あと少しだからちょっと休んで記憶が戻ったら登れるね」
エリサ「下ります!」
さらに懸垂下降で下山。
エリサさんの運転で我が家。
そのころにはエリサさんと会話しながら、記憶もキャッチアップ。
エリサさんと妻にその足で病院に連れていかれそうな勢いだったのを逃げまわり・・・
ところでこの直後から猛烈な空腹との闘いが待っていた。
普段あまり得意でない肉が食べたくてしょうがないところから始まって、この日は深夜に鰻丼まで平らげ、2~3日は食欲のおさまることがなかった。
もしかしてあれは・・・・シャリバテ?
まあそんなわけで、下部フェースから上部につなげるラインが残された課題となっていたのですが。
でもここを登りなおすのはさすがに「軽いクライミング」とはならないので、下部フェースはいったん置いておいて、中段以降を登ってみようということになりました。
馬越峠から天狗山山頂を越え、男山方面に少しあるいたところから樹林を下りて中段岩壁に向かう。
中段岩壁は傾斜強めのフェースなので、その左スカイラインあたりが軽めの楽しいクライミングになるのではないかという目論見です。
樹林をおりていくとリッジの末端に出たので、これが中段岩壁左稜だと思い取付きました。(実は間違ってた)
岩稜末端に出たのでここから取付く。
お!いいぞ!思い描いていたようなやさしく楽しいクライミング!と思いつつ登っていくと、岩稜は1ピッチだけで樹林の尾根になってしまいました。
ふと右を見るともう一本の岩稜があります。
あれ?そういえば中段岩壁の左稜だったら右側がフェースになっていて樹林のわけないよな~。
しょうがないので、右の樹林をクライムダウンして正しい中段岩壁左稜の取付きへ。
中段岩壁の左稜取付き。
下部フェースによく似た、天狗山特有の傾斜が強い逆相岩壁です。
左稜そのものは樹林がかぶさっていて歩けてしまいそうなので、あえてこの逆相フェースに取付いてみます。
カムを効かせられるような節理が乏しいので、ハーケンを打ちながらの厳し目フリークライミングです。
結構厳しいクライミングとなり、壁の半ばでギアが切れてしまいました。(なんか最近このパターン多いな~。クライミングをなめすぎて装備が足りなくなるのは老化現象でしょうか。)
壁内でトラバースをしてしまったので、若干怖いんですが、最後のハーケンに捨て縄をかけてクライムダウンで取付き付近まで戻ります。
途中で打ったハーケンも回収。
左の樹林には突っ込まないが、難しすぎないという微妙なラインを登りなおして1ピッチ終了。こちらもこれで樹林の尾根になります。
あとは樹林を歩いて行けそうなんですが、さっき登ろうとしていたフェースで楽しいフリークライミングができそうということで、真帆ちゃんはここからロープダウンしてトップロープで登ってみることになりました。
ついでに先ほどのハーケンと捨て縄も回収してもらいます。
最後はかぶってきて、5.10bくらいかな?とか言いながら登ってくる真帆ちゃん。ハンガーボルトでも打てば楽しいフリールートになりそうだそうで。