アルパインクライミング・沢登り・フリークライミング・地域研究などジャンルを問わず活動する山岳会

月: 2021年5月

佐久・マキヨセP2ルート開拓

五郎山から見るマキヨセP2
この下に垂直の下部岩壁が続く。

2020年11月に佐久・川上村の五郎山の岩壁にルート(五郎山ダイレクト)を拓いた際、顕著に見えていた岩峰、マキヨセのP2(もっとも五郎山寄りの目立つ岩峰)を登ってきた。岩峰は上部の尖った岩壁、中央のフェースと傾斜の強い下部壁からなっている。この写真では上部と中央フェースのみが見えている。

パートナーは五郎山ダイレクトの開拓をご一緒した長友さん。40台前半の脂の乗り切ったクライマーであるのはもとより、美意識、信条のはっきりとした聡明な人柄で、クライミング行を楽しくさせてくれる人。

今回はメパンナことS川さん、ニコちゃんことN口さんも同行して開拓の応援と写真撮影をしてくれた。
メパンナはアイゼンとアックスを使ったスポートクライミング、ドライツーリング(略してドラツー)の日本でも有数のプレイヤーで、今や世界を転戦中らしい。一緒に歩きながらもドラツー向きの岩壁がないかとエロい視線をそこここの岩壁にそそいでいた。股関節故障中で、開拓は参加せず。
ニコちゃんは長年アルパインをやってきた頼もしいクライマー仲間だが、やはり肩の故障でクライミングはできず。今回は仲間内で名シェフとして名高い料理の腕前をふるってもらいいい宴会ができた。

二人とも4回目の五郎山。マキヨセP2基部でロープを結ぶ。

このラインは五郎山ダイレクトを登ったあと、長友さんが偵察に来て、トップロープで一部試登をしている。写真にも写っている上部岩壁と中央フェースは登れそうだが、下部岩壁が傾斜が強く、岩も脆そうで恐ろしいとのこと。
歩いて取付きに行くと、たしかに中央フェース真下の岩壁は一部ハングしており、登るのは苦労しそうだ。
岩壁左端の張り出しを巻いて数メートル左に移動すると、軽い凹角状のフェースとなっており、傾斜も若干緩いし、小さなクラックがいくつか走っているので、カムは使えなくても最悪ハーケンを打てばなんとかいけそうだ。垂壁の直上に未練がありそうな長友さんに「弱点ついていこうよ!」と、ここを登ることとする。「逃げの山巡」の伝統は守らねば。

1P目は長友さんのリードで離陸。

メパンナ撮影、動画その1「離陸シーン」

メパンナ撮影動画2「支点なしで離陸」


メパンナ撮影動画3 「命を守るハーケンを打つ!」

こんな感じでスタート!
数メートル、支点がとれないままに登っていき、少し不安になりはじめたあたりで長友さん、ハーケンの設置を決断。ハーケンをあまりにも叩き込みすぎて、結局回収不可能に。(もちろんこれで正解)
ちなみにこれ以降はすべてナチュラルプロテクションで登り、残置物はこれだけとなった。

1P目終了点から。赤沼フォロー中。

1Pを終了したところで中央フェース下のバンドに出た。
この上はまた傾斜が強そうなので、長友さんの想定していたフェース下までバンドをトラバース。

バンドをトラバース中。

このバンドは岩峰横の樹林帯から歩いてくることもできるため、ここまでニコちゃんが来て待っていた。
五郎山側からは顕著に広がる中央フェースは赤沼のリード。フェースいっぱいに岩茸が広がっていて滑るが、傾斜も緩めで節理もほどほどにあって快適に登れる。

2P目。中央フェース。黒いのはすべて岩茸。
2P目、中央フェース登攀中の赤沼。上にいるのがメパンナ。長友さんは下でビレー中。

中央フェースは五郎山側、登山道から張り出した岩壁の上からよく見えるため、ニコちゃんがそこから撮影してくれた。3人写っているのがわかりますかね?上にメパンナが写ってるが、やはり草付きのバンドを歩いて来ていたため。各ピッチごとに仲間が来ていて「まるで山登っていって山頂ついたら駐車場があったみたいな状態だね~」と笑いあいながらの登攀。

2P目、中央フェース登攀中。上の写真とほぼ同じ時刻に下から撮影。
2P目終了。メパンナ撮影。
2P目終了シーンを撮影するメパンナを、五郎山側からニコちゃん撮影。
2P目を長友さんも登ってくる。
長友さん到着。メパンナ撮影。
3P目。簡単な岩稜を上部ピークの基部まで。

ここから3P目はロープもいらない程度の岩稜を最終ピッチとなる上部岩壁の基部に移動。上の写真にも3人写っている。上がリードしている長友さん、下がビレーする赤沼。真ん中は遊び・・・もとい応援!に来ているメパンナ。

3P目終了点で撮影。フォロー中の赤沼。
4P目、上部岩壁。

最終ピッチは最後のとんがりを登りつめる嬉しいピッチ。長友さんのリードで。

最終ピッチをフォローする赤沼。
終了点で自撮り。本当のピークは真後ろの岩の上だが、怖いのでここで撮影。

マキヨセP2ルート、クライミング概要:
1P目
下部岩壁。左寄りのルンゼを直上(5級)25m
2P目
バンドを右にトラバースして中央フェースを直上(4級)25m
3P目
優しい岩稜を上部岩壁基部まで(2級)15m
4P目
上部岩壁(岩峰)を直上(4級)20m
登攀開始5月23日9時30分~終了11時30分)

使用ギアはハーケン1(残置)小~中サイズのカム約2セット
グレードはムーブだけを考えれば甘目かもしれない。
スポートルートではないので、危険度などの主観部分も加味。

比志津金山塊・笠無

笠無(1,476m)は比志津金山塊の最高峰。なぜか笠無山ではなく、笠無と呼び捨ての山で、一般的な地形図には登山道も山名も記載されていない。
実のところ、比志津金山塊自体がほとんど知られていない山脈であり、ここで山名が記載されているのは先日たまたま登ってみた斑山くらいのものらしい。
それにも関わらずネットで検索をすると結構な数の登山者が訪れて(といっても篤志家には違いないが)いるようで、地図に記載のない山名がわかるわけだ。
八ヶ岳、南アルプスをはじめ屈指の山岳展望が得られることに加え、縄文時代の遺跡が多くでてきたり、「甲斐国誌」に記載のある棒道や穂坂路にはさまれた文化的、歴史的にも重要な土地であり又、きのこや山菜、美しい広葉樹や松林などにも恵まれた自然の豊かな地域であることもたしかだ。

今回の目的は比志津金山塊の最高峰「笠無」に登ること。
確たる登山道こそないが、この山に至る踏みあとは縦横無尽にありそうだ。登山者の記録によく名前の出る「比志の塒」、「摩利支天」、それに笠無に近い重要な文化財でもある海岸寺の裏山「海岸寺山」もはずせないということで、これらを横断するルートを想定してみた。

今回は岩登りの仲間4名。とは言ってもクライミングだけでなく、山登り全体の好きな大人の集まり(?)で、里山ハイキング案にもすぐに同意してわいわいと行くこととなった。
車が2台あるのを幸い、一台を下山予定の海岸寺近くにデポする作戦で行く。海岸寺からは林道、比志海岸寺線を塩川ダム方向に向かい大尾根峠(地図に名前はない)から尾根を北上することにした。

大尾根峠に車を置いて登山開始。伐採後に残る踏みあとを辿る。

稜線に出たら、笠無と逆方向に向かい「比志の塒」を往復。
比志の塒には山名の書かれた板があったようだが、腐りかけていて判読不能。
摩利支天ってどんなところ?と思っていたが、岩の上に摩利支天と書かれた石碑があった。
ここはなかなかの展望ポイントでもある。
笠無山頂

笠無までは比較的はっきりとした踏みあとがあり、あっさり山頂に至る。
ここから先は尾根筋のはっきりしないところも増えてくる。南に下る尾根には踏みあとがいくつかあり、迷い込みやすい。文明の利器GPSを駆使して方角を定めて行く。
それにしても気持ちのよい山だ。新緑の広葉樹にほぼ覆われており、ところどころが松林となっている。きのこ類も多く途中できくらげを収穫。
多少道をはずしても藪はそれほど深くないので、自由自在に歩ける。
山容も変化に富んでおり、歩いていても飽きがこない。

本当にいい山だ。

道中珍しい道標。だがこの先踏みあとははっきりせず、結局地図とGPS頼りになる。
樹林のなかを自由に歩き回る。いつの間にか笑っている人、歌を歌いだす人。多幸感に包まれる人。
海岸寺山まで約4時間の道のり。海岸寺はもうすぐだ。

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